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7,エピローグ

初めに伝えておきます。まだ次話があります。



真エピローグで終わりにします。

 彼女と話す最後の日、彼女の願いを叶えられなかったあの日のページ……




 そこには僕の考えてもいなかった彼女の秘めた思いが綴られていた。





『今日は君に私の大切な本を探してもらうことにしたよ。静かな図書室で君はその本を探そうと躍起になってくれたんだ。なんか悪いことしちゃったなぁ……だって私が欲しい本なんてそもそも無かったんだもの。それなのに君は他の事なんかどうでもいいような表情で探しつづけてくれるんだから。』






 僕はその思いにやっとのことでたどり着いた気がした。それはいつしか胸のどこか奥につっかえていたもののようで……






『そんなとこが魅力的』



「そんなの欺瞞に決まってるだろ」



 奥底にあった僕の気持ちはせきをきったように流れた。それを留めるように僕も反論する。






『昔から任された仕事をきちんと守るとか、何事にも一生懸命に取り組んでるとか、私にはそんな表面上なことしか言えないけど、君がもってるものは私には持ち合わせてないもの。』





「そんなことない。君の方こそクラスの雰囲気ばかり気にしていたじゃないか」




『私はただ見ていただけ、傍観していただけ。クラスを引っ張るなんて見え透いたことは出来なかった。でも君は違った。私が困っていたらすぐに相談を引き受けてくれた。わざわざ放課後まで』




 違うそんなことはないと思っていたのは遅く、




『だって君は学校の外でも優しかったもの。私にじゃなくて他の人にも。まだ覚えてるよ、図書館に行った帰りのこと。君は道路で転んでいたちっちゃな子を見たら一目散に走っていったよね。あの時は驚いたなぁ、まだこんな寛容な中学生がいたんだな~って』




「覚えていたんだ……」




 わざわざ思い出すまでも無い出来事を彼女が引き金となって思い出す。それだけで僕の、僕という人柄が浮き彫りになって行く気がした。





『私はただ何もせずにぼーとしていただけ、あとで何も出来なくてごめんねって君に言ったら君はこういったんだよ。「大丈夫。なんでもないことをしただけ」ってさ』




 自分が自然と口にしていた言葉を鮮明に彼女の言葉で思い出す。





『そのころからかなぁ、君がもっとそばにいてくれたらなぁって思ったのは。なんでだろうね、今までおんなじ好きなものを話して、笑いあったりするだけで特段変わったことは無かったのに』




 いつしか何月何日という日付もなくなり、まるで自分宛てのメッセージのように移り変わっていた。




『いまさらだけど私のお気に入りの本を見つけてなんか嘘ついてごめんね。一度でもいいから君と図書室に行きたかったんだ。ただそれだけ』



 

 彼女の明るい言葉とともに内なる思いが打ち明けられていく、それを具現化していったように僕はページをめくりつづける。




『このごろ、私の子供のころの病気が再発しちゃってあんまり動けないからこうやって日記を書いてるけど日記にするのはやめようと思う。そうそう、君に私の思いを書こうかな』




 突然彼女の現実を突きつけられて呆然とする。だが前回のものとははっきりと異なっていた。




『私って昔から持病のせいで学校に行けなくなったりしてて、友達はあんまり出来なかったんだ。だからかな、自然といつも放課後に一人でいたんだ。けど君はそんな私を一人の友人として見てくれた。しかも同じ好きなものを持っていて嬉しかったよ。やっとなんでも話せる子が出来たんだって』




 僕は彼女の深い、思いにこらえられなくなったのか知らず知らずに声を漏らす。




「そんなことないっ……僕はただ……」




『そうそう、話してるときの君の表情はカラフルだったな。ある時は他人のことなのに自分に起こったように顔を煌めかせながら話していたり、ある時は悲しんだり。見ているこっちが面白かったよ。』



 僕は沈黙を続けた。



『いつも同じ知ってる話題で盛り上がったなぁ。君が些細なことでも本当に大きなことかのように話すのが印象的だったなぁ。君の何でもない優しさが私には本当に嬉しかったなぁ……まだ一緒に話したかったな……』



 最後のその一言に僕は涙を堪えられなかった。




『君と話すこと自体が私の学校に行く目的だったんだ。だから一週間に一回しか話せなかったのは少し寂しかったな……』




 積み重なっていたものが崩れて行くような気がした。



『それでも、少ししか会えなくても、私は君にかけがえのないものをもらった…… だからそんな君に放課後最後の、そして私の最期の言葉を贈ります。』




 手書きで小さく触れたら壊れてしまいそうな文字でこう書かれていた。







『ありがとう。』




 今までの意味とは違うその言葉で


一瞬にして彼女の姿が僕の頭の中に描写された。


 彼女の話している姿、読書している姿、一緒に並んで歩いた姿、待ってくれた姿、時折見せてくれる少し触れたら崩れてしまいそうな微笑んだ彼女の姿が……




「僕は君に言えなかった。彼女が言ってくれた言葉を」




 小さく囁いた僕は本の最後の行にこう添えた。











『ありがとう』










 彼女に対する返事とともに……







次が本当のエピローグですね。ここまで読んでくださった方々本当にありがとうございます。

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