4,図書館
今日はもっと発展させていきました。
4.5話もあるのでそちらもよろしくお願いします。
それからは夕焼け沈む情景の中で語り合うのが毎週の日課となった。
この日も彼女の雰囲気はいつもと同じく、違うのは季節が春から初夏になっただけだった。だから僕は今まで通り彼女と会話し、そうなのかとかああなどと阿吽の呼吸のようになるだろうと考えていた。
「今日も本を読んでるのか」
「そう」
「君はいつ読んでいるの……」
僕は読書が趣味とは伝え本の内容を語る一方、実生活の話は挙げなかった。僕と彼女とのボーダーラインは趣味仲間だと規定していたからだ。彼女からのその言葉は今までのそんな関係性を打ち砕くようなもので耳を疑ったが、僕は平然と装い返答した。
「夜中とかが中心かな、君はいつも放課後で読書をしているよね」
「私は時間があまりないから学校で読んでる……」
彼女はそう答えるだろうと聞いてしまった僕は質問した後にどうすればいいか路頭に迷っていた僕に関わらず、彼女はそのまま告げた。
「時間がもしあったらでいいけど……、図書館に行かない?」
そのまま僕は彼女と下校途中に最寄りの図書館に寄り本を読んで帰った。僕は何も借りなかったが、彼女は一冊借りていた。
しかし、図書館から彼女と共通の帰路まで歩いている最中の出来事だった。
「今日はわざわざ一緒に来させてもらってごめんね……」
彼女は僕が何も借りなかったことで時間を無駄にさせてしまった僕に対する罪悪感を覚えたらしかった。
「いやいや、こちらこそ、君は良い本が見つかって何よりだよ」
彼女は視線を斜め下に落としていたので顔が見えなかった。
「君は本を借りないの?」
自然と吐かれた言葉に改めて僕の心の内を探っているようだと感じた。
「んー、なんで借りないかって言われると難しいな。ただ簡単に率直に言うと本が好きだからかな」
乱雑な錯綜した理由ではない、あまりにも単純な答えに彼女は閉口していた。
「本が好きだから、その本を大切に何回も読んでるといつの日か本を返すのが辛くなっちゃって……だから借りずに自分の手元にずっと置こうってしてるのかな」
付け足した言葉が彼女にようやく意味を分からせたようだった。素直な彼女の表情ですぐに読み取れた。
「一度読んで、本棚の見えるとこに置いておく。そしたらある時、置いてあることに気づいてもう一度思い返す。ああー、これは前読んだ本だなって」
「借りちゃうとそれが出来なくなる。思い返すタイミングを見逃しちゃうからね」
いつしか僕は自分のセオリーを語ることに夢中だった。だが、彼女の僕の言葉への同意は明らかに否定したものではなかった。
「私もそう思う……一度読んで終わるそれだけじゃ、悲しいもの……」
だが、次の言葉で僕は耳を疑った。
「だけど、永遠に置かれた本のことを考えるともっと悲しいと思う……」
なぜ?とか理由を聞きたかったのだが、それは突然の出来事に遮られてしまった。
『あぶない!』
どこからか大人の声が聞こえた。
声の在処は今渡ろうとしている向かい側の交差点からだった。
歩行者の信号は赤だったが、交差点の中央に小さな男の子がいたのだ。
僕は体がコントロールをする以前に反射的に飛び出し、少年を抱えて走ったことで間一髪で自動車との衝突を避けた。
「大丈夫か?怪我はないか?」
さっきまで一緒に下校していた彼女の姿を忘れ、助けた少年のことに必死だった。
助けられた当の本人は一瞬の出来事に呆然としていた。
「……あっ、平気です。助けてくれてありがとうございました……」
そのまま、何も無かったことを確認し少年は帰っていった。
「危なかったね。君が助けなきゃあの子は今頃どうなってたか……」
その場を見ていた彼女に改めて現実味をもたせる。
「そうだね。助かって良かったよ。無事怪我もなかったし」
「やっぱり、君はすごいね……」
小さく囁いた言葉の裏の意味を理解できなかった。
「ん?まぁ、自分が出来ると思ったことをしただけだよ。」
「そうだね……」
そのあとの下校途中も会話をし、これといった特別なことはなくただクラスの雰囲気がこうだとか世間体のことしか話さなかった。
家に帰りただ一つ思い返したことは下校途中の会話やあの出来事、図書館に行こうと誘われたことでもなく、本を探す彼女の姿だった。
翌週もクラスがどうなっているだとか、授業が追い付かないだとかととりとめもないことを話し合った。そして夏休みを迎い、秋までも終焉の佳境に入ったが案の定、彼女とは学校外の関係は持たなかった。
では引き続きよろしくお願いします。




