~第二の錦織圭たちに贈る言葉(2)~ 『攻撃目標は相手の心・体・技』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(2)〜
『攻撃目標は相手の心・体・技』
1. まえがき
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(1)〜では戦いの本質について述べた。
今回は、テニスの試合において相手を攻める目標について述べる。
2. 贈る言葉(2)
スポーツ試合に於いて、「『心・体・技』の充実なくして勝利はない。」と謂われます。
心と体と技は独立して存在するのではなく、関連があります。
「心は体を支え、体は技を支え、技は心を支える。」のです。
言い換えると、『心→体→技→心の一方通行の循環』があると云うことです。
もう少し説明すると、心が自信に満ちて安定していれば、身体は脳の指示通り動き、身体の動きが順調であれば、鍛錬で身につけた技術を正確に使いこなせます。
相手からの通常の返球に通常の対応が可能ということです。
試合開始の時点では、互いの技術のレベル差はあるものの、『心・体・技』は正常な状態にあります。(変に緊張していない場合。緊張している場合は『心』に異常あり。)
そして、まず技術を駆使して相手の『技』を攻撃します。
例えば、スライスサーブで相手にリターンミスをさせることから始まります。
あるいは、甘いセカンドサーブをストレート(ダウンザライン)に返球してノータッチエースを奪う。
ベースラインでのストロークのラリーから甘い返球を逃さずエースショットでポイントを奪う。
以上の事を繰り返し、多くのポイントを奪った方が『勢いに乗り、試合の場の主導権を握ります。』
即ち『権を制す』る訳です。
『技』によって負けた相手は『心』が不安定になり、『心』の自信が消えた相手は動きが悪くなります。すなわち、『体』が弱くなる訳です。
『体』が弱くなった相手は『技』の冴えがなくなり、甘いショットが増えていき、益々『心』が不安定になって行き、『体』の動きが悪くなります。
相手は、完全に『心→体→技→心』が下降スパイラルに入り、ポイントが取れなくなっていきます。一方、自分は『心→体→技→心』が上昇スパイラルに入り、俗に云うところの『流れが自分に来た』状態になります。
ネットダッシュしてボレーでポイントを取ることは『技』の範疇にはいります。
もし、様々な『技』を使ったにも拘わらず、戦いが一進一退の状況にある場合は、持久戦に耐える必要があります。
『技』では相手を打ち負かせていない状態にあると考え、相手の『心』または『体』を崩す作戦を考えるべきです。
一般的に『体』を直接に崩すにはプレイに時間がかかります。
ストロークで相手を左右に振り回すこと繰り返し、ドロップショットで相手をネットに引き寄せ、ロビングショットで相手をベースラインに引き帰らせることを繰り返すなどの手段を数セットに亘って行わなければなりません。
審判(主審・線審)にクレームをつけたりして戦いの場を乱し、対戦相手の『心』を揺さぶってくる相手も居ますから、自分は考え方を正しくして『心』を乱さないように心掛ける必要があります。
『体力』の疲れが出てきた相手は、『技』が出せず、『心』が不安定になってきます。
先に『心→体→技→心』の下降スパイラルに入ったものが負けです。
相手が下降スパイラルに入ったことを知った自分は『心』に余裕が出てきます。
『心』に余裕が生まれることによって『身体』が元気を取り戻し、『技』が冴えてきます。自分は『心→体→技→心』が上昇スパイラルに入り、プレーに『勢い』出て、その試合の『権を制する』ことができます。
3. あとがき
『心→体→技→心』のスパイラルについて説明をしました。
『五輪書』の空の巻で宮本武蔵は『心は空なり』と述べています。
この意味は、『気』を発することを止めて、こちらの狙いを相手に『アンティシぺーション(予測)』させるな、と云うことです。
そんな事が出来るのでしょうか。
次回、〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(3)〜で
『心は空なり』について考えます。
『諸君の健闘を祈る』
〜目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ(2)~
2016年9月5日
参考文献:
宮本武蔵五輪書 神子侃訳 徳間書店 1963年8月 発行
宮本武蔵五輪書入門 桑田忠親著 日本文芸社 昭和55年4月 発行
孫氏の兵法 安藤亮著 日本文芸社 昭和55年8月 発行
孫氏の兵法入門 高畠穣著 日本文芸社 昭和55年4月 発行