天使との面談へ
畜生道へ進み、天使との面談する場へとやってきた。
もろもろの手続きをこの場で行うのだけれど……書類とにらめっこした天使が一人しかいない。
「あの……畜生として生を受けたいのだけど……」
ボクが不安ながらに天使に言葉をかけると、書類をぶちまけながら
「え!?あ!(バサバサー!)ご、ごめんなさい!えーっと、畜生へ生まれ変わるのですね?」
「はい。手続きをお願いしたくて。」
お互いに書類を集めながら会話をする。
書類には、訪れる魂のすべてが書いてある。
前世が何であったか。どれくらい転生しているのか。生前は何をしていたのか。などなど。
そんな大事な書類をボクは集めて、天使に渡しているわけだけれど、まったく字が読めない。
これは死後の世界共通の言語らしく、魂には読むことも書くこともできない。
―天道に行くと習うのかな―
などと思いながら、最後の書類の束を天使に預けた。
「すみません……私おっちょこちょいで……天使になる前も、すごくおっちょこちょいだったんです。」
と照れながら天使さんが教えてくれた。そこで疑問に思う。
「天使になる前の記憶って覚えているものなの?」
天使は書類を所定の位置に戻し終え、椅子に座りながら答えてくれた。
「はい。私たち天使や天使以上の方々は、それ以前の記憶や、経験のほとんどを覚えたままでいることができます。」
「全部じゃないの?」
「残念ながら、全部ではないんです。もし、全部覚えてしまっていると、自分の子どもや友人、育てていた生き物などをヒイキしてしまう可能性が出てきてしまうので。あ。でも、私に子どもがいたことも、友達がいたことも、育てていた生き物がいたことは覚えています。」
「ん?あれ……なんかごちゃごちゃしてきた……」
天使さんの説明は、いまいちボクには難しい。
「えーとですね……」
そのあと、大分長い時間、図や表を使って天使さんは説明してくれた。要約すると、こういうことらしい。
子どもで例えるなら。
子どもを育てた経験や記憶は覚えているが、子どもの名前や通わせた学校、結婚相手などの名前は覚えていない。
ということらしい。
「へぇーそうなんだ。魂だった頃のことは覚えているの?」
「もちろんです。魂だった時の経験も、私たちにとっては重要です。だってそうでしょう?私たちは、魂を相手しているんですもの。」
―なるほど。もっともな理由だ。―
「えーっと。それでは、転生の手続きを行います。これから質問をしますので、お答え出来るもの、お答えしたいものにお答えください。お答えできないもの、したくないもにはお答えしなくて大丈夫です。」
言葉は堅いが、天使さんの表情は穏やかで、人懐っこい顔で言ってくれた。
「はい。大丈夫です。質問をお願いします。」
「それでは、一つ目の質問。生前のお記憶はありますか?」
「いいえ」
「二つ目の質問。畜生道の他に進まれたご経験はありますか?」
「いいえ」
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いくつかの質問に答え、最後の質問になった。すると、天使さんは今までの表情とは変わって、真面目で真剣な顔つきになってボクに問った。
「長かったですがこれで最後の質問です。あなたはどうして生まれ変わろうと思ったのですか?
生まれ変わらないという選択もあります。生まれ変わらない場合、その魂の一切を消し去ることができます。聞こえは怖いかもしれませんが、ある種の不老不死を手に入れることができます。それでも、あなたは生まれ変わりますか?その理由もお聞かせください。」
天使さんは真面目な顔で、ボクを見る。
「ボクは……ボクは、生まれ変わる!生前の記憶は無いっていたけど、うっすらと覚えてる。でも、全部覚えてるわけじゃないから、覚えてないって言った。そのうっすら覚えてる記憶は、人間がボクを見て笑ってくれた。それがとても嬉しかった。生きててよかったと思えた!また、人間の笑顔を見たい!人間を笑顔にしたい!」
「あなたの選択と理由についてはわかりました。」
ボクはホッとした。ボクの希望は通ったと思ったからだ。しかし、天使は続けた。
「これから話すことは人間が為したことのすべてです。」




