死神との出会いへ
「そ、それで……死神さんは、どうしておばあさんを見てたの?ボク達の会話も聞いてたのかな?」
驚くのもそこそこにして、もっともな疑問を死神さんに聞いてみた。
「もっともな疑問だっ いいね。話がズイズイ進むねぇ。いやーそういう話しやすい子はアタシは好きだ。なんだよ、照れるなよーえ?照れてない?早く話をしてほしい?そんな急ぐな、急ぐな。」
―余計なことが多い死神さんだな……―
と半ばあきれていると、
「さて。どうしておばあを見てたか だったね。おばあのこれからがわからないと、担当できないだろ?」
「直接聞けばいいんじゃないの?そっちの方が手っ取り早い。」
うんうん と死神は頷くが、人差し指を口元にあて、少し真面目な口調で、
「ナイショなんだ。どの死神がどの魂の担当かは。だから、遠くで見守るしかないんだよ。いやーもどかしい職だよ。」
そうなのかとボクは納得すると、死神は続ける。
「君の死神もどこからか見守ってくれてるよ。死神が見守っていうのも、どーなのかなーって思うけどね。」
とニヤっと笑った。
「それで?君は畜生道に行くんだったね。んー……君は何になりたいの?」
「ボクはゼンコウが十分じゃないから、選べないよ?」
「希望ってもんを聞いてるだけさ。あるだろう?希望くらい。」
ボクは直感的に
「ボクは、桜の木になりたいな」
死神は一瞬驚いたような反応をしてボクに問う。
「ほほう?どうしてまた、桜の木になんてなりたいのさ。木は不自由だ。自分の意志で動くこともできない。栄養が足りなければ、花も咲かせず、葉も付けずに枯れてしまう。それでも、君は桜の木になりたいのかい?」
―現実的なことを言うあたりは、やはり神の名を持つだけのことはあるな―
と少し感心していると死神は真面目な口調になりながら続けた。
「植物じゃなくてもいいじゃないか、鳥や虫、犬や猫の方が自由じゃない?自由じゃなくていいの?」
だけど、ボクは思ったことをそのまま伝えた。
「ボクは自由というものを手に入れた記憶がないから、よくわからない。きっと大事なもので、素敵なものなんだと思うよ?でも、桜の木だってきっと大事なもので、素敵なものなんだと思ってるよ。桜が開花した時、人間たちはすごく喜ぶ。そうすると、ボクも嬉しい。」
すると死神は大笑いした。周りの魂たちがボクたちを横目で見ながら進んでいく。なんだか恥ずかしい。
「はっはははは……あーおかしかった。いやいや、君の言うことはもっともだ。そのことを忘れないでほしいね。あーふふふ……そうか。そうか。君は、その桜としての大事さや素敵さを手に入れたいのか。自由よりも。そうかそうか。ふふふ……面白い子だな。君は。」
ボクは少しイライラしながら、
「すごくバカにされている気がするけど……?」
と言うと、死神は 違う違う と身振りも併せて言ってきたが、笑いは止まってない。
―まったくこの死神は……なんなんだ……―
とあきれながらも、ボクも笑みが出る。
死神が笑い終え、次の担当を見に行かねばらないと言い残して、飛び去って行った。
そして、ボクは畜生道を進んで行き、魂として出会う最後の天使との面談をしに行った。




