終わりの始まり
″ギィェェェェェェェェ″
その時、教室だけの時が止まったかのようにそこにいる全員の動きが止まった。
…
とっくに死んだと思っていた鷹は、そのかすれた鳴き声を出した後、まるでその為だけに起き上がったようにすぐに首が横になった。
「お…おい!死んでなかったのかよ…」
「わからない…。けど、断末魔…ってやつかな…?」
動揺する佐々木に三谷は冷静に答える。
「仲間を…呼んだんじゃないかな?」
大原のいかにも真実に近そうな答えに俺はあることを悟った。
゛バサバサ(羽根)゛
″ギィェェェェェ″
やはり、大原の行ったことは正しかった。
窓から10羽ほどの鷹が勢いよく入ってきて、教室を掻き回すように飛び回った。
「うぅ…やめっ…やめろぉ!」
窓近くにいた佐々木が3羽の鷹に襲われもがく。
それだけではなかった。担任の松田も集中攻撃を受けている。
「い゛ゃあ゛ぁぁぁぁぁぁぁ」
もはや悪夢だ。とにかく自分の事しか考えられなかった俺は、教室から出ようとした。目の前に、血が飛び散る。誰の血だろう…。そんなことも考えられないほどに必死だった。逃げよう。逃げよう。教室から出た俺は出口まで10mほどの廊下を走り、中庭まで避難した。
つもりだった…。辺りを見回すと絶望しかなかった。逃げ場のない絶望。皆がもがいて苦しんでいる。コンクリートには血や髪の毛が落ちていた。闘うという概念が存在することに気付いた俺は、剣道部の部室に木刀を取りに行くことにし、また走った。助けを求める声や悲鳴も聞こえるなか、俺は無視するように部室の前まで走り、開きっぱなしの部室の扉を開けた。
「最低だ…。最低だぁ…。」
自身の崩壊した精神が勝手にそう呟く。部室に入り、自分の木刀と籠手を手に取った俺は、急いで学校から出ることにした。