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記憶の過去
その日の夜、俺は親と飯を食べている最中に、例の噂話を持ちかけた。
「何か、最近ここら辺で鷹が群れで飛んでるんだって。それもしょっちゅう。」
「へぇ~。何か気持ちが悪いわね。あんた、触ろうとかしなさんなよ?」
「触んないよ。触ろうとも思わないし…」
俺の鷹への好奇心が、母には少し見透かされていたようだった。親父はというと、相変わらずクチャクチャと音をたてながら夕食の焼き魚を食べている。俺はこの音が大嫌いだ。世界で一番嫌いかもしれない。しかも親父は、俺のイヤミしか言ってこない。その音と思いで、親父への嫌悪感が増してゆく。
そんなこんなで食事を終え、スマホを触りながら自分の部屋へ上がろうとする。すると急に
「おい。食器片付けんか。」
親父の言ってることは正しかったが、言い方に腹が立つ。反抗期はやはり反抗期だった。俺は食器を両手に流し台へと運んだ。母は俺を擁護するように
「そこ置いといていいよ。」
と微笑みながら言った。
食器を置き、俺は自分の部屋へと戻った。