第2話 始まりの始まり
「なぁ、鼎~、今週の土曜日空いてるだろー?文教女子大の子と4対4の合コンするんだけどさぁ、人数足りないんだよ~、今回は参加してくれよ~暇だろー?」
3限が終わり俺は友人の木村翔也と大学の食堂で5限までの空き時間を潰していた。
翔也は俺にとってはTHE☆大学生って感じだ。同じテニスサークルに所属しており、サークルに入会してすぐの新歓コンパで仲良くなった。こいつは、遊ぶこととお酒と女子が大好きで月に最低3回は他大の女子と合コンをしている。彼女はいないようだが、実際のところは何股しているかは検討もつかない。
大学生になると、なにかとイベントごとにお酒が絡んでくる。よくアルコールを摂取すれば、ほどよく酔って気持ちよくなると言うが、俺の場合飲んだらそのまますぐに睡眠の世界へLet's Go!となるためまったく楽しくないのだ。要するに今のサークルと翔也とはあまり気が合わないということだ。
「断ーる!金もないし、俺酒嫌いだし。」
スマホでSNSを眺めながらテキトーに返事をする。
「鼎―、大学生になってもう2か月だぞ!合コンをまだ一回もしていないなんて考えられない、人生経験として一度は体験するべきだぞ!きっといい人も見つかるって!お前は酒も飲まなくていい!女子を酔わせてあとは各自お持ち帰りっていうのが定石だ!」
必死に俺の対面で力説しているが、言っていることはクズだ。
「翔也もそんだけ合コンしてるなら、そろそろ彼女作って安定しろよなぁ」
あくびをしながら、けだるそうに俺は言う。
「なーに言ってんだよ!大学生は遊んでなんぼだろ!」
これは断っても無駄なようだな。まぁ1度くらい行ってみてもいいか。
「わかったよ、行くよ。その代わり酒は絶対飲まないからな!ちょっと飲み物買ってくるわ。」
しぶしぶそう言い、アルコール拒否を念押しにすると、「さんきゅ!」と翔也は礼を言い、スマホを取り出しなにやら忙しそうに画面上で指を滑らせた。
おそらく今日の相手の女子大の子と連絡を取り合っているのだろう。
ちょうど喉が乾いたためその場を離れ、食堂内にある自販機でジュースを買うことにした。
5限の講義でもし寝てしまい教授に注意されると授業態度からポイントが差し引かれるため、極力睡魔に負けることはできない。
200円を自販機に投入し、なんのためらいもなく120円のコーヒー缶のボタンを押す。
つり銭がちゃんと合ってるか手のひらでいつものように確認した。
が、明らかに一枚日本円ではない硬貨が混じっていた。
それは金色のコインだった。
この時はまだ気づかなかった。
自分の平凡な日常が音をたてて崩れていくことに_________________