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第9話 無駄な自己犠牲防衛

わずかな静寂がその場を包んだ。現実の世界ではおそらく今まで人が死ぬ瞬間を見たことがない俺らは次にどう行動すべきなのかの判断が鈍り、さらには、俺以外の人たちは状況整理に思考回路が追いついていなかった。


「お、おぃ、あれ死んだのか・・・・・?」


ホストの涼さんがJKの昏葉に信じられないという風に尋ねる。


「し、知らないわよ・・・・。」


さすがの高飛車JKでさえ動揺を隠しきれない様子だ。こういう時、アニメや漫画ではどうしていただろうか、という疑問を自分に問いかけてみた。すると、答えは簡単だった。

俺は自然と立ち上がり、両手を横に広げ相手をまっすぐ見つめてこう言った。


「お、お願いします。他の人は・・・殺さないでください。」


恐怖からなのか目に涙が浮かび、多少視界が歪む。だが、敵への視線はそらさなかった。

狙いは金のコインを持っている俺だ、俺がみんなの盾になれば相手は攻撃しようにもできない。そう、アニメや漫画でよくみるこの展開。この後のことは、何も考えていなかった。多少のヒーロー気取りもあったかもしれない。

みんなも人生の一度や二度、自分が本当はやりたくなくても周りからよく思われたいがため、称賛されたいがために自分を犠牲にして行動したことがあるのではないだろうか。


「ふむ、なかなかいい度胸だ。だが、無駄なことだ。ジョイソム。」


先ほどから常に涼しげな表情を浮かべている、黒髪肌白の真ん中の男がそう言うと、今度は左に立っていたスキンヘッド男が一歩前に出てきた。

今度はそのスキンヘッド男が右手の手のひらを俺らの方に向けてきた。そして、その手を上に上げていく。

すると、俺の後方で何やらものすごい音と悲鳴が聞こえてきた。恐る恐る振り返ってみると、まるで上空からヘリがワイヤーで車両をつなぎ上げていくように、車両が徐々に上空へと浮かんでいく。

慌てて、宗孝さんや綜摩さんが車両のくりぬかれたドアから抜け出そうとするも車両は既にビル4階分くらいの高さまで浮かんでおり、飛び降りようにも飛び降りることができない状況だった。伊織さんはただただ成弥くんを抱きしめていた。


昏葉ちゃんと涼さんはただただ唖然とした表情で、その車両を見上げることしかできなかった。


俺の自己犠牲防衛はどうやら無駄な意地だったようだ。何も解決策が思いつかない。普通ならここで味方が登場という展開が好ましいが、第一、この世界に自分たちの味方がいるという保証はない。


「待て!ど、どうすれば許してくれる!」


人の命がかかっている。もうよくある漫画の展開なんてどうでもいい。許しを請う以外の選択肢は残されていなかった。


「何を言ってるんだ?許すも何も俺らはただ君以外の奴らを殺すだけだ。君たちが俺らにどんなことをしようとも殺しをやめるつもりはない。」


俺の異世界ツアーはどうやらここで閉幕するらしい。


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