〜Bloody Rose〜
塔の中は陽射しのように明るく、硝子の床の下には黒と白の薔薇が敷き詰められており、内壁に添うように二重螺旋を描いた黒と白の階段が上へと延びていた。
「道は二つ、どっちにいげばいいの?」
「どっちも上に繋がってるさ」
ノワールは近くにあった白の階段に歩みを進め、ノワールは階段の一段目に足を踏み込むと階段は黒へと変わり、それと連動するようにもう一方の黒の階段の一段目は白へと変わり、二段目以降へ流れるように色が変わっていく。
「これは…」
ノワールは変わり行く様を見上げていると突然、硝子の床に大きな亀裂が入った。
「早く上に急ぐんさ」
「貴女はどうするのよ」
「うちのことなら心配ないんさ、それより今、急がないと上れなくなるんさ」
フォンがそう言うとノワールが乗る階段の一段目が下からゆっくりと崩れ始め、同様にもう一つの階段が崩れ始めた。
ノワールは二段目に移動すると硝子の床の亀裂が更に広がった。
「早く行くんさ」
「…分かったわ」
ノワールは階段を駆け上がり始めた。
「おでましさ」
フォンはブラスタルから矢を取り出すと床の亀裂は砕け、フォンは壁際に飛び退いた。
塔の中に黒と白の薔薇の花弁が舞い、砕けた硝子の下から大きな赤い薔薇の蕾が現れた。
フォンは矢を弓に掛け、薔薇の蕾に矢を放った。だが、矢は蕾に当たると光の粒に散った。
「硬いさ」
大きな赤い薔薇の蕾は砕けた硝子の間からその身体を引き上げると蕾の根元から外で見たものより太く棘が鱗のように並んだ蔦が姿を見せた。
そして、引き上げた蕾を傾け、蕾の先をフォンの方へと向けると蕾が花開かせ、中から黒く尖った嘴が現れ、耳を劈くような咆哮した。
「なんて声さ…」
フォンは咄嗟に耳を塞いだ。
大きな赤い薔薇は咆哮を終えると重なる棘の下から蔦を一本出した。
それを見たフォンは弓を構えようとしたが弓を床に落とした。
「全身が痺れて上手く力が入らないさ…」
蔦はフォンを目掛けて伸び、フォンの足首に巻き付くと引き摺り上げて逆さ吊りにした。
フォンは引き摺り上げられた際、頭を床に打ち付け、頭から血が床に落ちた。
「ちょっとやばいさ…」
そして、フォンは意識が朦朧としていると赤いドレスを着た何者かが目の前で何かを言ったがフォンは聞き取れず、そのまま気を失った。