〜Variation〜
一室の白き扉が開け放たれ、アルヌとエリス、そして、ヴィオレットが足を踏み入れた。
「どうやらルブランを制したようね」
ブランは座っていた椅子から立ち上がる。
「大人しく僕達にブラスタルを」
「渡してよね」
「もう勝ったつもり?」
白い剣を取り出し、空を斬ると辺りを白い霧が覆った。
「こんな目晦まし」
「私達の力で」
アルヌとエリスは手を繋ぐとその手とは反対の手を前に翳した。
すると風が巻き起こり、霧が渦巻いて中央に集まり、霧の柱を作った。
「ウサギを手に入れただけあって前よりは力が増しているようだけど……」
ブランは再び空を斬ると風の柱を切り裂いた。
「まだ足りないわ」
ブランは白い剣とは逆の手の平を見せた。
そこにはヴィオレットが持っていたアンファクトのベルトがあった。
「どうして?」
ヴィオレットはアンファクトを握っていた手を開く、そこには空の手があった。
「この中には私と同工異曲のウサギがいる、容易いことよ」
ブランはアンファクトを宙に放った。
「アフラスィオン」
ベルトが弧を描くように次々と膨張しながら広がる。そして、ベルトが一重なりになり、輪を作ると中心から白い霧が現れてルブランの姿を成した。
「申し訳ありませんでした」
ルブランは現れるなり、跪いて謝った。
「別にいいわ、道具は単体では無力だもの」
ブランは輪に剣を振り下ろした。
「そんなものでアンファクトを壊せない」
ヴィオレットの言葉の通り、白い剣の方が砕けて、剣は全て霧散霧消した。
「やはり駄目ね」
「再びアンファクトの中に戻るといいよ」
「今度は二人揃ってね」
アルヌとエリスはブラン達に向かって言うとヴィオレットは拘束の言葉を言う。
「カーシェ」
輪の状態のベルトは広がり、ブランとルブランを囲む。
「剣と成せ、ルブラン・ド・エール」
ブランはルブランの胸に片手を突き付けて引き抜きながら言うとルブランの胸から剣の柄が現れ、ルブランの身体は霧となって薄らいでいく。
そして、ブランは現れた剣の柄を握るとルブランの姿は消え、翼を模した薄い刃が現れた。
「アルムスィオン、やっぱり刑約済か」
ヴィオレットは呟いた。
武器化したルブランを持つブランを囲んでいたアンファクトのベルトが絞るように輪が縮む、だが、ベルトは何かに阻まれるように途中で反発して行きつ戻りつを繰り返す。
「これで終わらせてあげる」
ブランはそう言うとアンファクトのベルトが衝撃を伴い微塵に散った。
アルヌとエリスは舞う塵埃の中、身構えると背後からヴィオレットに身体を抱えられ、宙に舞った。するとすぐに二人の足の下を突風が舞う塵埃と共に吹き抜けた。
そして、アルヌとエリスを両手に抱えるヴィオレットの背後にブランが現れた。
「躱したのはいいけど、二人抱えたまま次はどう躱すつもり?」
「まったく僕等のことを」
「忘れてるようね」
アルヌとエリスは外衣を擦り抜けてブランを同時に壁へと蹴り飛ばし、ヴィオレットは氷を核とした炎を放つとブランの近くで猛火がブランを包み込んで猛火は凍り付いた。
地面に着地した二人の姿は紫色のお河童頭で袖裾の丈が長い服に身を包んでいた。
「これで終わりなんて呆気ないね」
「早速、ブラスタルを取り出そう」
アルヌとエリスをヴィオレットに凍り付いたブランからブラスタルを取り出すように指示した。
ヴィオレットは凍り付いたブランに近付き、手を伸ばすと氷を透過するように入り、そのままブランの胸へと差し込んだ。
そして、何かをつかみ取ると引き抜いた。ヴィオレットの手には白い薔薇が握られていた。
「これでこの空虚な眼の借りは返させてもらうわ、ルブラン」
突如、ヴィオレットの中で鼓動が響く。
「何?」
ヴィオレットはブラスタルを持つ手で胸に手を当てた。するとブラスタルはヴィオレットの中へと溶け込むように入っていった。
ヴィオレットは何が起きたのか感じるまでもなく気を失って地に落ちた。
数分の後、目を覚ましたヴィオレットは白一色で整った部屋とは似使わない赤い液体と荒れた部屋にいた。
そして、一つの人影が近付いてきて、ヴィオレットに手を差し延べた。
ヴィオレットはその手を払いのけて自分の力で立ち上がった。
人影は本を取り出し、指をなぞり何かを書き付けると何処からともなく鎖が現れ、ヴィオレットの身体を拘束し更に背後から蓋の開いた棺桶が現れてヴィオレットを取り込んだ。
「イレギュリエ、コレクスィオン」
棺桶の蓋が閉じると共に本を閉じた。




