カズミをバラバラにするの?
数日後、望月からカズミの像が完成したとの連絡があった。件の工房に行くとそこには粘土でできた像が横たわっていた。望月はそれを使い雌型を製作したので、そっちの粘土でできたカズミは持って行ってよいとの事だった。材料費として五万円を支払ったが、これには材料費以上のものが込められているような気がしたが、はやく粘土のカズミを望月の元から運びたかったので、それ以上文句は言わなかった。
一緒に来た高橋先輩の乗用車に乗り立体エンジニア研究会の部室に粘土のカズミを連れて行った。そこで立体エンジニア研究会の代表の新宅がいた。「よく出来た粘土像だね。これって早川、お前に不釣合いのカワイイ妹だろ?これを基にしてこちらで製品を作ってもいいかい?カワイイ女の子のフィギュアを丁度作りたかったところなんだ。売れたらお前にも使用料を支払うからさ」と誘ってきた。
新宅の「使用料」の言葉に心が揺れたが「いいや、俺の妹は俺が守らないといけないんだ。折角の話だけどそれは勘弁してくれ」といった。妹を望月以外の男にこれ以上弄られるのも嫌だが、勝手に承知をして後でカズミに攻められるのも嫌だということもあった。
立体エンジニア研究会もあまり大きくはないが立体スキャナーを持っていた。しかし、せいぜい30センチの幅のものをスキャナーするのがやっとの大きさだった。それで新宅ら立体エンジニア研究会のメンバーはカズミの粘土像をバラバラにし始めた。
新宅らは「こんなにカワイイ女の子の像をバラバラにするのは嫌だ。終わったら俺らにもらえないか?」と言っていたが、高橋先輩が「まだまだ、こちらで使うからやらんぞ。そのかわり手間賃は弾むから」といった。どうも粘土像を何かに使うつもりらしい。
バラバラにしたカズミの粘土像を次々とスキャンしていたが、いくら作り物とはいえカズミがバラバラになったようで嫌な光景だった。データを取った後、俺は高橋先輩と一緒にカズミの粘土像を乗用車に入れたが、このようなことをしていて本当はいいのだろうかと思った。