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傍観者  作者: 美也
6/10

デートへGO

「うまれもった体格いかしてそのままいわれた料金で入場しちゃえばよかったのにー」


「全くです。折角の節約の武器を使わないなんて、本当に勿体無い」


「あ、にらんできた」


「お~い。前見ないと転ぶぞ……って遅かったか」






本日は青空晴れやかな日曜日。お休みですから学校じゃありません。そこそこ大きくそこそこ栄えたとあるテーマパークに来ています。

週末取り付けられた約束にパニクる幼馴染みを引き摺って合流し、電車を乗り継ぎテクテク歩いて辿り着いたのは遊園地。男4人で遊園地。小さな子連れやラブラブカップルが行き交う中に男4人で遊園地。……むっさいわぁ。



デート行こうぜ!という程のテンションでは言えなかったようだが、総長さんに幼馴染を誘わせたのは俺と副総長さんの作戦だ。行った先で遊んで仲良くなれば良いじゃない、と。かなりアバウトな助言に飛び付いた総長さんを生温い目で見送って、それなりに格好良くお誘いさせた。までは良かった。

デートなんだから勿論二人っきりで後はノータッチのつもりだったのにそれは無理!と幼馴染に泣き付かれ何故か俺まで行く事になってしまった。うぜぇ。と思ったがなんと総長さんも副総長さんに付いてくるよう言ったらしい。アンタがそれでどうすんだ!……そんな訳で強制同行と相成りました。


遊園地と聞いた下っ端さん達も来たがったのだが、不良がゾロゾロ行ったら確実に子供が泣く。いや寧ろ大人(従業員)が泣く。という事でどうにか説得して諦めてもらった。こっそり付いて来たりしていないか副総長さんに探ってもらったが大丈夫のようで一先ず安心。……いや、だから何で俺がんな事してんだ。




折角の休日に何しているんだろうとやさぐれそうだが兎に角やって来ました遊園地。初っぱなから幼馴染が不機嫌です。

入場チケットを買う際、受付のお姉さんが、大人3枚小人1枚ですね。とにこやかに言ってくれたのだ。小人扱いが誰なのかは言わずもがな。その後幼馴染は、幼馴染の分も出そうとする総長を押しのけ、最早意地な様子で大人料金分を支払っていた。んで、冒頭の台詞となる訳です。



「あぁ、でも考えてみればそれで正解だったかもしれませんね」


「なんで?」


「不良×2、普通高校生1、子供1って、なんの集団だって感じでしょ」


「あ~、ヘタすりゃこわ~い顔した補導のおじさんに声かけられるね」


「ねぇ」



クスクスと笑っていれば、また馬鹿にされたと思ったのか幼馴染と総長さんが睨んできた。もうその話はしてないっての。

入口でグチグチ言っている幼馴染と不器用ながら宥めようとする総長さんを急き立ててパンフレット片手に遊具を回り始める。そうすればあっという間に機嫌を直すのだから単純だ。

数々のアトラクションを目にしては興奮する幼馴染みと、それを優しい目で見る総長さん。その後ろを少し離れてただ歩く俺と副総長さん。……やっぱり変じゃねこのグループ。

突っ込みたくなるのをぐっと堪えて奥の方へ進んで行く二人に付いて行った。







「総長さん、ジェットコースター苦手なんですね」


「そうなんだよねぇ」


「あ、知ってたんですか」


「どうやって回避しようかそーだんされたからねー」


「なのにアイツに誘われて断れなかった、と」


「あはははは~」



グッタリする総長さんとそれに掛かり切りな幼馴染みには聞こえないだろうと好き勝手話す。聞こえていようが話すけど。


身長ギリギリのくせに絶叫系が大好きな幼馴染がノリノリで列に並ぶ後に付いて行った総長さんは、元々少ない口数が全く無くなっていた。特に俺等は気にしていなかったが精神的にギリギリだったらしい。全然気付かなかった。しかしそこは幼馴染み。顔が真っ青に引き攣っている、と異変に気付いて総長さんの手を引っ張り列から離れた。今はお昼時のフードコートで一休みをしている。

一応乗ることは回避できたけれど、お絞り片手に落ち込みっぱなしな総長さん。さっきと逆に、怯えながらも宥めようとする幼馴染み。違うテーブルで昼飯を食べる俺と副総長さん。やはり変な光景だとハンバーガーを飲み込んで息を吐く。



「無理なら無理と最初っから言やいいでしょうに」


「いやぁ、あきれられるのがこわかったんでしょ」


「?呆れるって?」



ストローで氷を掻き混ぜながら尋ねれば、口に入れたポテトを飲み込んだ副総長さんが指で宙をクルリを掻いて答えた。



「付きあってる立場からして、情けないトコはみせたくないし、みたくもなくない?」


「そうですか?付き合ってるからこそ、情けない所も見たいし、受け入れてほしいじゃないですか」


「そう?」


「それが好意を持っている相手なら尚更そう思いますけど」



まあ俺の考えでは、ですけど。

ズズッと殆ど中身の無くなったコップを啜る俺。



「う~ん。価値観は人それぞれだねえ」



キミはそういう考えなんだねえ。

空になった紙袋を適当に畳む副総長さん。



その後は別の話題に移行し、食べ終わってごみを纏めて捨てに行く。戻ってみればいつの間にやら復活した総長さんと幼馴染が次のアトラクションを計画していた。また絶叫系の乗り物を勧める副総長さんに加わり、本物が出ると言う事である意味人気なお化け屋敷をプッシュすれば今度は幼馴染が真っ青になって総長さんに宥められる。

さっきの話は無しにしても、結構距離は近付いたんじゃないかと二人を眺めながら一人ごちた。





そろそろ帰る時間、という事でラストにと二人をカップルに人気という観覧車へ叩き込む。何か抗議していた気がするが顔赤かったし、良いだろう。良い仕事をした。

昇っていくゴンドラを見送って、さてどう暇を潰すかと伸びをしていれば、後ろにいつの間にやらどこかへ消えていた副総長さん。二人を押し付けてどこ行ってやがったと睨み上げようとすれば目の前に何かを差し出された。



「はい。どーぞ」


「はい?」



思わず受け取って確認するといつも屋上に持っていくのと同じメーカーのお茶だった。驚きに目を見張ってそれと副総長さんを交互に見る。



「え?これ……」


「ん?キョロキョロしてたからなんとなくのど渇いたのかなって。ちがった?」


「いえ、まぁそうなんですけど。あ、お金……」


「いーよいーよ。前たまごやきくれたじゃん。おかえしおかえしー」



いつの話だよ。とか、よく覚えてたな。とか、卵焼き一個に対して割に合わなくね。とか。色々突っ込みたかったが、邪気も何も無い普通の笑顔を向けられて、全部引っ込んだ。



「……ありがとうございます」


「……こちらこそ」



突っ込みの代わりに、素直にお礼を言う。妙に照れ臭くて変な顔になった気がするがまぁ、良いか。一瞬何か驚いた顔をされたがそれ以上何も言ってこないし。


並んで近くのベンチに座りお茶を飲む。またぽつりぽつりと今日の二人の状況確認やら作戦の事、取り留めの無いどうでもいい話をしてぼんやりと観覧車を眺める。ゆっくり進むゴンドラはどれが幼馴染達のか分からない。が、たぶん未だ戻りそうにない。男二人、ベンチに座って置いてけぼりを食らった寂しい姿のように見えるかもしれないと思ったけれど、特に気にはならなかった。





その後、帰りにホテルにでも行かせようかなどと言った副総長さんの頭を笑らいながら殴り付け、戻ってきた二人と合流し家路に着く。幼馴染達に付いて行くばかりで特にアトラクションを楽しんだりはしなかったが、思っていたより有意義な一日だったな。と空になったペットボトルをツルリと撫でた。







あ、下っ端さん達へのお土産忘れてた。と思ったのは次の日の3限目終了時。

平謝りする幼馴染と睨む総長さんには何も言えないようで、無言の訴えがこっちに向かってくる。それに微笑みで返すと凄い勢いで逃げられた。原因は隣で笑っている奴という事にしておこう。といつも通りお茶を啜った。






『デートへGO』

『保護者同伴ってどうなのよ』

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