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昼休み、朝に購買で買っておいたパンをほおばりながら校庭をながめていると、こちらを見据える女子生徒に気がついた。
真っ直ぐとこちらを見つめていて、こちらの視線に気がつくとペコリと頭を下げ校舎に向かって駆け出した。
ただそれだけだったのならなにも問題はなかったのだが……
教室のドアが勢いよく開かれ、先ほどの女子生徒が現れ叫びだす。
「秦野先輩! 一緒にご飯食べませんか?」
教室の喧騒が一瞬にして静まり返る、しかしすぐさま秦野に対して男子からのやっかみの声が上がる。
「おとなしそうに見えて、結構手が早いよな秦野の奴」
「あいつ、生徒会の『南野涙子』だろ? 2年じゃかなりいい女らしいぜ?」
「くそー、秦野のやつ羨ましいぜ、あんな子と懇ろなのかよ!」
男子連中からの視線が突き刺さるが、そんなものは気にしていられない、そもそもこちらは名前は聞いたことはあるが面識などないのだから。
入口に向かいながらどうしようかと考えていると、南野涙子はいつの間にか教室に入ってきていて、秦野の前に立ちふさがる。
「先輩! 行きましょう、お弁当もありますから、屋上に行きましょうよ、お話したいんです!」
畳み掛けるように涙子は言葉をつないでくる。
「ちょっと待ってくれ、確かに名前は聞いたことがある、でも君とは今日初めて会うんだけども――――」
「私は、ずっと前から先輩のことを知ってました! それだけじゃダメですか?」
「ダメではないけれども、こちらの話も聞いて欲しい」
「だからお話するために屋上に行くんですよ」
そう言って涙子は秦野の手を引き屋上へと向かおうとする、その力はとても女子の力とは思えないほど力強く、逆らうのが不可能と言えるほどだ。
引きづられながら教室から出ていく秦野に、男子からの罵声がやむことはなかった。