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進行は遅くなるかもしませんが、大きな心で読んで頂ければ幸いです。
何気のない登校風景、そう、今日も普通に一日が始まるはずだった。
昨日、彼女と別れたT字路交差点に差し掛かると、2人の警察官が通りかかる人を呼び止めては何かを聞いている、事件だろうか? 警察がいるほどの事件というとニュースに出てもおかしくないはずだが、特に今朝のニュースではそのような報道は一切なかったはずだ。
そばを通り過ぎようとすると、やはり通りかかる全ての人に聞き込みをしているのだろう、警察官に呼び止められる。
「すみません、情報を集めているのですが、ご協力いただけないでしょうか?」
そういって警察手帳を提示し問いかけてくる。
「この方を、ご存知ありませんか?」
警察官は僕に名前の書かれた紙を見せ返事を待っている。
その紙には『広田由美』と書いてあり彼の心がざわめく、昨日告白した相手の名前が書かれていたのだから。
「知ってますが、どうかしたんですか?」
彼は動揺を悟られないように、表情を崩さず答えた。
それを聞いた警察官は、驚きを隠さずさらに質問を投げかけてくる。
「お知り合いですか?」
「はい、クラスメイトですけれども……」
「そうですか、若干伺いたいことがありますがいいですね?」
ふと彼は時計を見る、今は7時半過ぎで学校にはあと10分もあれば付く距離だ。
「構わないですけれども、登校途中なので手短にお願いできますか?」
「ありがとうございます、この方を昨日見かけましたか?」
どうするか彼は迷う、全て正直に話せば場合によっては警察まで連れていかれるだろう、だけどやましいことはしていないはずだ、すべてを話すことにする。
「はい、一緒に下校しました」
そう言うと警察官の表情に陰りが見え始める、どうやら疑われ始めたのかもしれない。
「その時のことを、詳しく話して頂けませんか?」
彼はありのままを話した、この交差点で彼女と分かれて先に帰ったこと、分かる範囲のことをすべて。
警察官も僕が関係あるとみたのだろう、捜査に影響のない範囲での説明をしてくれた、今朝この交差点で彼女の衣服が発見されて拾得物として届けられたこと、そして生徒手帳に記載されてある連絡先に確認を取るとそんな人はいないと言われ、ここで目撃者を探していたということらしい。
一通り警察官は話を聞くと、こちらに改めて向き直り敬礼する。
「ご協力感謝します、申し訳ありませんが後日またお話を伺うかもしれませんので、連絡先を教えてもらって宜しいですか?」
「分かりました」
そう言って彼は携帯の番号を、手渡されたメモ用紙に書いて渡す。
「ありがとうございました、では失礼します」
そう言って、警察官は彼の元を離れてほかの通行人に声をかける。
彼は学校に向かう為にその場をあとにした。