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死んだらやってみたい10のコト

死んだらやってみたい10のコト ①女風呂を覗く

作者: 黒やま

ここはどこだ。

真っ暗な闇の中自分の姿さえも確認できないまま俺はただじっとしていた。

立っているのか座っているのかはたまた目を閉じているのか開いてるかさえ分からなかった。

頭がはてなマークでいっぱいで溢れ出すかと思われたころどこからともなく一筋の光が差し出でた。

すると周りの景色が浮かんできてここがどこから認識できてきた。

どうやら一つの部屋であるらしくひどく殺風景な真ん中にひとつ寝台が置いてあるだけの部屋だった。

寝台には誰か寝ているらしいが顔に白い布で覆ってあるのでおそらく亡くなってしまったのだろう。

見ず知らずの人であろうがご冥福を祈る。

すると寝台の周りに人が集まってきていた。

顔ぶれを見るとどうやら俺の会社の上司やら同僚やらだった。

なんでこんなとこにいるのだろう、そう思って声をかけようとした時だった。

「ったく丸山のやつ、いいやつすぎるんだ。そんなんだからいつまでたっても彼女が出来なかったんだ。」

俺の名前を言いながら同僚が遺体にかぶせてあった布を取る、そこには安らかな表情をした俺がいた。

「俺ーーー!!どうしてそこに俺!?」

事態が全く呑み込めない俺は近くで見ようと人の輪を押しのけようと腕に力を入れたが

あっけなく腕は人を通り抜けその余力で勢いよく寝台の前に飛び出た。

「嘘だろ・・・俺死んだのか・・・」

自分の腕と目の前の顔を交互に見比べ現状理解に苦しんでいたので

俺に声が掛けられたのはすぐには分からなかった。

丸山(まるやま)圭佑(けいすけ)さんですね。お迎えにあがりました。」

みると俺の・・・以前の体の上に一人の少女がちょこんと座っていた。

青い瞳は真っ直ぐ俺をとらえていた。

「あんた誰だ?」

俺は率直な質問をした。

少女はにっこりとほほ笑み大真面目に答えた。

「天使ちゃんです。」

「・・・ワンモアプリーズ。」

「天使ちゃんです。」

「・・・ワンモ・・」

「ですから天使ちゃんです。」

「・・・・・えっと、もう一回・・・・・」

「だから天使ちゃんだって言ってるでしょうーがっ!!」

仏の顔も三度まで、いや天使の顔も三度まで。

微笑をたたえてわずかに口角が上がっていたのが吊り上り歯をのぞかせた。

「すっすいません。」

思わず謝った俺はおそるおそる少女を観察する。

腰まである金髪はゆるやかに流れ碧眼はサファイアのように輝き白いロングワンピースを着ている。

そして最大の特徴は背中に生えている大きな白い翼であった。

「まじ天使なんだ。」

「おいコラ、私のことは天使ちゃんって言いなさい。ちゃん付けよ。」

「あっはい。けど本当に天使ってそんな姿してるんだな。」

「あぁ、これはね偽りの姿よ。本当の天使っていうのは羽も生えてないし金髪碧眼でもないの。

 それに古臭いワンピースを着ない、今の服は制服。こういう容貌をしていたほうが天国へ連れて行く

 貴方みたいな人が安心してついて来てくれるのよ。」

「俺みたいな?」

「あなたみたいな死んだ魂。」

そう言われた途端自身の現状を改めて思い知らされることとなった。

「俺やっぱり死んだの?」

「死んでるわよ、ちゃんと。その証拠に他の人には視えないし触れないってことが

 さっき確認できたでしょ。」

「・・・・・」

「現にこうやって話していたって誰一人こちらに気付いてはいないでしょ。」

「・・・・・」

「認めたくないのは分かるけど、死んだ人がこのままこの世に留まっていたら

 現世にいろいろ悪影響が出てくるの。」

「悪影響?」

「そう、今は死んだばかりで何の問題もないのだけれどあんたたちが

 現世に数か月いると負の霊気が放出され始めて周りの人間の精神が犯されていくのよ。

 そうして犯罪が増えていく。」

「そんなことが・・・」

天使は淡々と説明していく、仕事上いつもこんなことを言っているのか

顔には憐みの表情がなかった。

「だから行くわよ。」

「え?」

理解していない俺に天使は呆れ顔であった。

「聞いてなかった?あんたが死んで浮遊霊やってたら今生きてる人間に迷惑なの。」

「はい。」

「だから天国へ今から行くわよ。」

そういうと俺の腕を掴み天使は羽を広げて空中へ飛び立とうと地を蹴った。

それと同時に俺の体も浮きみるみる建物の壁を抜けて外に出た。

「ちょっちょっと待ってよ!!」

「何よ。」

「俺、まだやりたかったこといっぱいあったんだ。これからっていうときに死んじゃって・・・」

「そういう人だって少なくないわ。」

「けど・・・これじゃ死んでも死にきれない!!」

今までの俺の人生ははっきりいっていいものではなかった。

人には言えないようなこともしてきたし、下手したら警察沙汰みたいなこともやってきた。

そんな俺が新しい道をやっと歩み始めたころに死ぬなんて。

こんなところで死ぬんだったらやっておくんだったことが走馬灯のように流れる。

普通は死にそうなときにみえるもんだよな、はは何言ってるんだか今はどうでもいいことだな。

「・・・じゃあ、やりたかったことやる?」

「え?」

「そのままの気持ちで天国へ行ってもこっちが困るし、

 死んだままでも願いを叶えてあげることは可能よ。」

「本当か!?」

「天使ちゃんは嘘をつきません。」

「ありがとう!!天使ちゃん。」

「ただし!願いは10コまで、10コやりたいことが終わったら

 大人しく天国に行って成仏しなさい。」

「何でも叶えてくれるのか?」

「一応は。まぁ叶えるって言っても叶える手伝いをするって感じね。」

「そうか、10コ。じゃあまず一つ目は・・・」

「待ちなさい、早すぎない?よく考えたの?」

「せっかくなんだ、ずっと昔からやりたかったことがあるんだ。」

「そうなの、じゃあいいか。で、何?」

「ズバリ女風呂をのぞく!!」

「・・・・・・・」

「男のロマン!!一度はやってみたいことだろう。」

「もういっぺん死んでみる?」

「いやいや待てよ、なんでもって言ったじゃないか。天使は嘘をつかないんだろ。」

「うっ、言質を取りやがって・・・。分かった。」

「うぉっしゃーーー!」

「少しだけだからねっ!」

もう俺は嬉しすぎて死んでしまいそうだった、いや死んでるんだっけ。

「じゃあ早速銭湯に行こう!」

「さっきまでのシリアスな場面はどこにいったのか・・・」

ということで俺と天使は一番近くにあった銭湯の女風呂の裏に降り立った。

「しっかし、最近は銭湯も少なくなったよな。もっと増やすべきだ。」

「真面目な風に言ってるけどふしだらなことしか考えてないくせに。」

「ふしだらではない、神聖なことだ!」

「どこが神聖なんだか。もうさっさと済ませてきてよ。」

「え?手伝ってくれるんだろう。」

「のぞくだけだったらそのまま通り抜けて入ってくればいいじゃない。」

「あ、そっか。俺幽霊だった。」

壁に触れるとさっきと同じように手が吸いこまれていった。

そのままずんずん進んでいき目の前に湯気が現れた。

「ここか、楽園(パラダイス)は。」

胸を高鳴らせ――心臓は止まってるが――湯気が晴れるのを待った。

そして徐々に浴場の形状が見えてきて人の姿もちらほら確認できるようになり、

ついに禁断のヴェールが・・・・・・

「あら、早かったじゃない。堪能できたの。」

「・・・・・さん」

「え?なんだって?」

「婆さんばっかりだった。」

「あっそう。じゃあこれでとりあえず一個目終了ね。」

「ちょい待ち!これはカウントされないだろ!」

「だって女風呂は覗けたわけでしょ。」

「それはそうだが。」

「願い事は若い女の裸が見たいではなかったし。」

「そうは言わなかったけど、普通分かるだろ!察せよ!」

「天使ちゃんに向かって口答えしない。」

「なんでだよ~。」

そんなこんなで俺が無事成仏するまで残り9コ。

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