怨嗟
空の遥か上の高空、中間圏と熱圏の境目あたりに巨大な船、方舟が飛んでいた。
乗組員はただ1体のゾンビ、腐りかけた身体を動かし積み荷を整頓している。
積み荷は遙か下の地上が放射能で汚染されるまで生きていた全ての生き物たちのDNA。
方舟を造りゾンビを乗せたのは神、否、地上が放射能で汚染されるまで人間たちに神と呼ばれていた存在。
地球は神と呼ばれていた存在が50億年近い年月を掛けて創り上げた、芸術作品だったのだ。
彼がチョット目を離していた間に、彼が目を離したのは一瞬だったが人間の時間では数十年、青く美しい作品が放射能で汚され真っ黒になっていたのだ。
彼は激怒し、そうなった原因を彼らの世界ではタブーとされている時間を遡ってまでして調べた。
結果、彼は見つける、放射能で汚染される世界にした原因を作った男を。
その男が次の選挙の為に浅はかにも始めた戦争が、地球を放射能塗れにした原因。
男が攻撃を仕掛けた相手側が行ったのは、全世界がエネルギーを得ていたルートの遮断。
最初のうち世界の国々はそのルート以外から細々とエネルギーを得ていたが、その量では必要量に届かず奪い合いが始まる。
最初に奪い合いの小競り合いが始まったのは、先進諸国に比べて貧困な国々が集まっている地域。
小競り合いは直ぐに全面的な戦争に拡大した。
浅はかにも始められた戦争が無ければ、戦争を始めた国やその同盟国の国々が外交的圧力を強め止めるのだが、浅はかにも戦争を始めた国は自身の戦争のため身動きが取れず、その同盟国の国々も自分の国のエネルギーを得るためにそれどころでは無く、見て見ぬふり状態。
結果、世界のアチラコチラでエネルギーを求めての戦争が次々と勃発。
中には浅はかにも戦争を始めた国の同盟国同士での戦争も始まる。
外交的圧力も軍事介入も成されないためにアチラコチラで始まった戦争は、バトルロイヤル的な物になって行く。
そして自暴自棄になったある国の独裁者が押したボタンによって、世界は放射能に汚染された世界になったのだった。
神と呼ばれていた存在は、ボタンが押された時には墓の下で永眠していた男を見つけ出し、その腐りかけた身体の男を覚醒させ自分の芸術作品を汚された責任を取らせる事にしたのだ。
腐りかけた身体のままゾンビとして方舟に乗せ、船とDNAの世話をさせている。
解放されるのは地上の放射能が全て無くなり、以前のような青い惑星に戻ってから。
暗く極寒の世界でただ1人、過去の自分の行ないを悔やみながら積み荷から発せられる怨嗟を一身に受け、働き続けなくてはならないのだった。




