近親相姦托卵兄妹
ある兄妹がいた。
ある時から妹が兄の婚約者との逢瀬についてくる様になった。
その結果がこうなった。
書きたいところだけをピックアップしました。
ある日突然、父に妹と一緒に執務室に呼ばれた。
特に呼ばれる事案に思いつかないが妹と2人、後ろには専属の侍従と侍女を従えて父の執務室へと入った。
「お前たちが周りからどう言われているか知っているか?」
「自分達がですか…?」
「そうだ。」
部屋に入ってそうそうに投げかけられた言葉に思い当たる節はない。
「近親相姦が当たり前の托卵兄妹だと」
言われて一瞬言葉が出ないくらいに衝撃を受けた。
隣にいる妹も目を見開いている。
しかも年頃の娘にいう言葉ではないのに父は平然と言ってのけた。
その衝撃は計り知れない。
「そんな!」
「酷い!私達はそんなんじゃ!」
もちろん否定する。
他国でも大概そうだが、この国でも親・兄弟姉妹などの近親婚は禁忌とされている。
従兄妹同士でも血が近いとあまり推奨されていない。
それは常識であるし、何故そんな風に噂されているのかわからない。
「どれだけ違うと言ってもこれが浸透してしまっている。もう手遅れだ」
「そんな…まさか…何故…?」
「何故だと?」
私の言葉に冷静であった父が豹変した。
「お前たちが招いた結果だ。自業自得だ!」
怒りのまま近くのテーブルを叩きつける父に恐怖を覚える。
「違います、お父様!私達は!」
「そうです!父上!」
すくみ上がったままだが私も妹も抗議する。
そんな我々を氷の様な目で見てくる父。
「ロベリア、お前は何度言っても兄と婚約者の交流に無理矢理着いて行っていたな?」
「…はい」
「そしてコラン、お前はそれを容認し、あまつさえ妹と恋人の様なやり取りを婚約者の彼女に見せつけていたな?」
「それは…その…」
「言い訳は良い。第三者からの目撃証言もあるからな、無駄だ」
「…はい」
婚約者とのやり取りを見られていたのか。
確かにカフェに行ったこともあったから、そこで見られていたのかもしれないという事実を突きつけられて今更ながらに羞恥を覚える。
その時は自分と妹と婚約者だけの世界だと思っていたからだ。
「コラン、お前の婚約者であるリリー嬢は男爵令嬢だが母親である夫人は伯爵家の出身だ。しかも高位貴族とのツテもある顔の広い方だ」
「え?」
「そしてロベリア、お前の婚約者のスターチス氏は子爵家だが若くして本人が準男爵を持つくらいに優秀だ。その子爵家も国内有数の商会を持つくらいの家だ」
「…!」
「そんな家を敵に回したのだ。しかも公共の場でな!お前たちの行動が家の中だけであったならまだこんな風に広まることもなかっただろうに…本当に愚かな」
「…申し訳…」
「この場での謝罪は無意味だ、そして向こうの家は両方とももうお前たちに二度と関わりたくないそうだ」
「私は!婚約者をお慕いして!」
「私も彼女を愛して!」
「その結果があの気持ちの悪い茶番なのか?」
父の言葉に血の気が引く。
「まさか…」
「お前たちの行動を見せられた親である私は本当に恥ずかしかった、膝から崩れ落ちそうになった」
「お父様…」
「父上…」
顔を覆って項垂れる父の言葉に言葉が出てこない。
「その上に『兄妹ですでに既成事実が出来ている』」
「「え…?」」
今なんと…?
「その他にも『妹の方は結婚しても托卵の心配がある、むしろ既に妊娠してるのではないか?』、『兄の方は妹との子を育てさせるために逆らえない相手を婚約者に据えた』などと噂が浸透していると聞かされて…」
まさか…そんなことが…
「…酷い」
「酷いのはどちらだ!お前たちの浅はかな言動がこの様な事態を作っておるのだ!」
「…!」
妹がポツリと零した言葉に父が激昂した。
妹はその迫力に涙を浮かべている。
「…お前たちの母である妻は此度のことで倒れたわ」
「母上が!」
「そんな…お母様が…」
この場に母がいないのはそう言った事情があったからか…
「妻は『私はこんな化け物や畜生を産んだ覚えはありません!』と泣いて叫んで意識を失ったわ、あの穏やかな彼女がな…」
「おかあ…さま…」
「ははうえ…」
とんでもない事をしでかしてしまったことにようやく理解が追いついてきた。
「とてもではないがコラン、お前にこの家は継がせられない」
父の言葉が一瞬理解できなかった。
「…そんな!私は嫡男として!」
「誰もお前に嫁ぎたいと思う者がおらん」
冷静に返される鋭い言葉が恐ろしい。
だが言われるがままでは…
「私には婚約者が!」
「前々から向こうの家からは抗議されておった。主にお前の行動で」
「は?」
彼女の家から抗議が…?
そういえばこのところ誘っても3回に2回は断られていたが…もしかして…
「ほぼ決まっていた婚約を無理矢理潰して婚約者に据えたにも関わらず、このところ毎回妹との茶番を見せられてたら…なぁ?」
「…」
「え?あの人にお兄様以外の?」
「あぁそうだ。」
「そんなこと知ら…」
「私は言ったはずだ、彼女には内々に婚約を結ぶ相手がいると。それでも押し通したのはお前だ、コラン!」
「…!」
父の言葉に今更ながらに思い出す。
彼女には私との婚約する前に別の婚約者候補がいたことに。
彼女と自分の婚約が決まって浮かれていたせいか頭から抜けてしまっていた。
そうか彼女は乗り気でなかったのか…だから妹とのことも嫉妬なんてしてくれなかったのか。
「政略結婚としての旨みもあったからこちらが頭を下げてまで申し込んだにも関わらずこの体たらく。本当に無駄なことをしたと後悔しかないわ」
父がため息をついた。
あぁ…自分はなんて愚かな…。
「そしてロベリア!お前の行動も婚約者であったスターチス氏になんて言われたと思う?」
「えっ…?」
「彼は冷笑を浮かべてこう言ったよ。
『外であれだけのことをしているなら、家の中はさぞかし近親相姦の温床になっていらっしゃるのでしょう?
保護者である貴方達も使用人もよくそんなことを許されていますね。それとも代々の伝統ですか?』
…こんな屈辱を面と向かって言われる日が来ようとはな。」
「あっ…あぁ…」
なんてことだ…我が家はそこまで思われてしまっているのか。
だが私達の行動がそうさせているのだと今ならわかる。
「私はそんな穢らわしい娘と息子を持ったつもりはなかったんだかな。
お前たちの外での様子から家の中はもっと酷いと思われておるのだよ!」
「そんなつもりでは…!」
「うぅ…」
思わず反論したが二の句が継げない。
妹はショックで泣き始めた。
スターチス氏が言う様に人の目のある外で堂々と恋人の様な様子で過ごしている人間なのだから、邪魔されない家の中ならもっと爛れていると思われても仕方がないのだろう。
「そんなお前たちに嫁ぎたい、娶りたいと思う者がどこにおる?
おるとしたら2人ともを愛人として飼っておく様な酔狂な者や金など金銭的な問題を抱えている者だろう」
「まさか…」
「あぁお前たちの評判を聞いて申し込みがあったわ。趣味趣向は人それぞれだからな」
「いやぁぁ!」
妹が絶望しながら叫ぶのを見て恐怖がより這い上がってくる。
自分達の様な変態には変態がお似合いだと言わんばかりの目を父がしている。
何を言ったところで父からも母からも失われた信用は得られない…そんな気持ちが伝わってくる様だ。
「まさか父上受けたわけじゃ…?」
「はっ!そんなことをすれば噂を肯定している様なものだろうが!」
父はこちらを見ずに鼻で嗤う。
確かに嫁入り先がそんなところしかなくとも伯爵家としてそう簡単に受けれる筈がない。
ならばどうするのか…。
「だから妹は忙しい婚約者に対して寂しい思いをしたために気持ちが暴走して精神を病んだことになった」
「…え?」
「そんな!?」
確かに妹の婚約者は国内外を飛び回る商人でもあるので忙しい。
しかも向こうが7つも年上。
アカデミーで一緒に学ぶなどもできないし、成人前の妹が彼に着いて行くこともできない。
だから寂しがっていたのは事実だし、妹も時間があったから私と婚約者の逢瀬に着いてくることもできたとも言う。
「そして兄であるお前もいつかは…と言った具合だ」
「は?」
父は今なんと言ったのか…
私も先々で病に倒れる予定だと言ったのではないか…?
何故だ、私はこの家の嫡子なのに!
「私は跡継ぎとして!」
「だから言っただろう、お前の様な者に嫁ぎたい者などおらんと。
それに親戚からもお前を当主にするのは反対されているし、寄り親の侯爵家の方からも切る様に言われている。
それに私も妻もこの様な事態を作ったお前を認めるわけにはいかん。家が潰れるだけだ」
「そんな…」
誰からも認めてもらえないと言うことなのか…
私はただ彼女に嫉妬して欲しかっただけなのに。
絶対に結ばれる事にない妹相手なら問題ないと、冗談だったと言えると思っていたのに。
それに妹とは仲は良いがあくまでも兄妹としてだ。お互いに婚約者が好きだった。
決して噂される様な事など何もないのに…
「噂が本当であろうと嘘であろうと最早それの事実については意味がない。
そう言った噂が広まってさもそれが事実かの様になっているのが問題だ。
しかもお前たちに火消しは無理な上に責任を取るほどに能力もない。ならば表舞台から退場して生きていく他ない」
「うぅ…」
妹はずっと泣いている。
私はただただ呆然としている。
「スターチス氏は円満に解消するために、慰謝料を払う代わりに近親相姦については否定してもらうことになった。
そして多少の泥を被ってくれることになった。
と言っても“仕事で忙しいために会う機会がなく、贈り物などはしていたが婚約者に寂しい思いをさせてしまった“程度くらいだが」
それでも身近な者であった彼が否定してくれるなら少しずつ噂は減っていくかもしれない。
妹は本当に婚約者であった彼の事を慕っていたのだから、兄である私と関係していると言う噂が流れているこの状況が何よりも傷付くのだ。自業自得であっても。
まぁもう今後は表舞台に出てこれない私達の事などすぐに忘れさられるかもしれないが。
だが家を継ぐ別の者への影響を考えると、否定できることは否定しなければ家の存続に関わるから必要なことなのだろう。
「ロベリア、お前との婚約は向こうにとっては不要なものだったのだろう。
多少の嫌味と共に解消を求められたが、お前に関することは何も聞いてはこなかった。
解消の建前を探していたのかもしれないな」
「そんな…私はお慕いしていたのに…」
妹は更にショックを受けている。
無関心と表立って示されていたわけではないが、妹とは少し距離があったのは見て取れた。
だがそれも今は年齢差もあって仕方ないと思っていたし、今後深めていけばいいと思っていた。
そんな妹が寂しがっていたのもあって、私と婚約者の逢瀬に入りたがるのも仕方ないと思っていたが、その甘さと迂闊さで今回の様なことを起こしてしまったのだ。
そして取り返しがつかないこともじわじわ理解してきた。
私も妹も父と母の子でありこの伯爵家の直系でありながら、もう家を継ぐことはできない。
自分達の愚かな行動でこうなってしまった。
せめて家の中で完結していればここまではなかっただろう。
だが調子に乗って街中のカフェやレストランで同じ行動をとっていたのだ。
そのせいで大事になってしまった。
家の中だけなら婚約解消だけでまだ済んだかもしれないのに。
もちろん婚約解消も辛いことだ。
あんなことをしておきながら私も妹も婚約者を慕っていたのだから。
だがもうどうしようもないところまでいってしまっている。
「リリー嬢は…?」
「彼女は領地で静養している様だ。彼女に問題はないとしても色々と煩わしいだろうからな」
「煩わしい…」
確かに彼女相手に今回のことで根掘り葉掘り聞いてくる輩は多いだろう。
それを避けるために領地で静養するのはまぁ常套手段だとも言える。
「彼女は関わらないなら特に何も言うことはないとのことだ。だから謝罪のためだとかで向こうの領地に行ったり手紙を送ったりも認めないからな」
「手紙ですら…?」
拒否なのだろう…な。
今まで蔑ろにしてきた様なものだったからこれも仕方ないのか…。
婚約は解消になったが、出来れば手紙で謝罪と自分の気持ちを伝えようと思っていたがそれすらできないのか。
「あぁそれと、もうお前達の権限はほぼ剥奪している。使用人達にも通達している。自分本位の自分勝手な行動は慎むのだな」
…確かに自分本位だった。
婚約者であった彼女に対しても他にも。
なのに謝罪の一つも告げられない。
伯爵令息という立場から落ちた私に何が残っているのだろう。
隣の妹はずっと泣き崩れている。
私は自分の未来ある日々から一転先行き不安な日々に移行することに呆然としている。
涙すら出ず身体がぐらつくのを何とか支えているが、気が緩めば妹と同じ様な姿を晒すだろう。
あぁ後悔ばかりが生まれてくる。
ちょこちょこ見かける略奪目論む系義妹ではないですが、兄の婚約者の前で兄にベタベタしてたらシスコン・ブラコン程度で済まない可能性もあるよね?って感じでしょうか。
しかも公共の場でやっちゃったらそれを第三者が見たらどう思うかと思って書きました。
これ、一応兄はきちんと教育受けてます。
妹ももちろん受けてます。
伯爵夫妻の敗因は何しでかすかわからんバカの思考が読めなかったことでしょうか。
(でもこればかりは本人の資質なので仕方ないかと)
兄の方はそこそこ勉強が出来るタイプだったのもあって、こんな事を仕出かすと思ってもみなかったので、噂が回ってからの後手に回ってしまいました。
妹はあまり頭が良くないのはわかってたのでしっかり者を婚約者に据えてたのに、据えてたからこそ切られた感じですかね。




