へこんでなんていられない!
いきなり異世界召喚された4人は休息をとるため部屋に案内された。
異世界に召喚された4人は、用意されていた部屋に案内された。
「申し訳ありません!」
メイドらしき人物が十和子の前で頭をさげた。
「予言の書には、召喚される勇者様は3人だと書かれていたものですから、部屋は3人分しか用意できていないのです。」
メイドは申し訳なさそうに十和子を見つめた。
「だったらさ、私の部屋に来ればいいよ!」
心音が明るくこえをかける。
「で、ですが、心音様は勇者様です。万が一何かあったら」
メイドは疑うような目でチラチラと十和子をみている。
(私は勇者とは認められてないんだ、、)
「私と十和子は友達よ!万が一なんてあるわけないでしょ!」
心音は声を荒らげてメイドを責める。
「心音ちゃん、私は大丈夫だよ。客室があるみたいだから、そこに泊まらせてもらうよ。」
怒っている心音をなだめるように十和子が言った。
「では、客室にご案内いたします。」
長い廊下を抜けて、3人の部屋とは大分離れた客室に案内された。
「ここが、客室になります。ごゆっくりお休みください。」
メイドはそういうとそそくさと部屋をあとにした。
(歓迎されてないよね、たぶん、)
勇者と言われ歓迎された3人とは比べ、明らかに冷たい態度をとられている。
「私、これからどうすればいいんだろう。」
見知らぬ土地に飛ばされて、友人たちとも離されてしまい、心細く感じている。
「パチッッ!」 十和子は思い切り自分の頬を叩いた。
「ダメダメ!こんなことでヘコんでちゃ!おじいちゃんに怒られちゃうわ!」
不安な気持ちを家族のことを考えて紛らわそうとする。
十和子の実家は、大正時代から続く老舗旅館を営んでいる。
三代目であり、十和子の祖父である大造は身内にとても厳しく、旅館に疲れを癒しにくるお客様のために従業員の指導に力を入れていた。
孫である十和子や十和子の姉兄にもとても厳しく、幼い頃から手伝いという名の修行をさせられていた。
「こんなことで弱音を吐いてたら堂前家の女として恥ずかしいわ。」
小さい頃からの厳しい修行で十和子の心は強くなっていた。
「強く育ててくれたおじいちゃんに感謝しなくちゃ。」
(明日は王様との謁見もある。しっかり寝て明日に備えましょう。)
「それにしても、埃っぽい部屋ね。掃除が行き届いてないみたい。」
「ここは王宮でしょ?普段使わない部屋だからと言って手を抜くなんて、信じられないわ。」
(ここにおじいちゃんがいたら、ここに務めている人全員をかき集めてしかりつけているわね。)
(勇者にはなれそうにないし、元の世界に戻るまでは清掃員として雇ってもらえないかな~)
十和子はいろいろなことを考えているうちに眠りについてしまった。