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on the stage  作者: すごろくひろ
2年生

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裏方のはじまり

「へえ、意外だなあ。岡山くんが反対派だなんて」

「ね、ドライかと思ってたけど意外だよね」

 ある日の昼休み、和信と亮平、陽大の三人は学食に集まり、それぞれ昼食を喰らっていた。

「それにしても、中央落ちで来たとは思わんけどな」

 亮平はそう言いながらも、涼しい顔をして口にカレーを運ぶ。その反面、和信は少し表情を暗くしていた。

「菜心も、この統廃合の話を聞いて、志望校を変えるか悩んでいるみたい」

「ひーやん、シスコンはあかんで」

 その言葉に和信は思わず咳きこんでしまう。陽大が急いで取りに行ってくれた水を飲んで何とか事なきを得た。

「土呂ちゃん!」

「すまんな」

 そんな二人の様子に、陽大は笑いを堪える。

 ふと二階の席から、歓声が大きく聞こえてきた。和信たち三人を含めた一階にいた生徒たちは、その発生源を一斉に見つめた。そこには、見覚えのあるシルエットがあった。

「恒章はまたカードバトルか……」

 和信はその場で雪崩れ込むかのように、顔を赤くしながら手で覆い、座り込んでしまった。陽大は目を細めながら恒章の姿を認めた途端、あることに気づいた。

「恒くんの相手……、元くんじゃない?」

 亮平もその様子を見上げていた。なぜかアニメのごとく、カッコつけつつ大声で騒ぎながら、モンスターカードを召喚している恒章と元の二人。そんな彼らを笑う者もいれば、訝し気な顔をする者もいた。

「なんかイキイキとしてるね。さすが舞台創造部」

「亀田くん、それは誉め言葉じゃないよ」

 そして、恒章たちの様子をおもしろがってか、だんだん彼らの周りにギャラリーが集まり出す。

「あっ、あいつら怒られてやんの」

 通りすがりの奥田先生に騒がしいと怒られる恒章と元の姿が見えた。その様子に周りの生徒からはクスクスと笑いが洩れてしまった。亮平も大笑いし、陽大もなんとか笑いを堪えているようだった。一方で和信は拳を強く握りしめながら、彼らの姿を険しく見つめていた。


 *


「今年の文化祭ですが……、舞台創造部は不参加ということになりました」

 和信の発言にどよめき不安そうな顔をする部員たちがそこにはいた。

「ひーやん、何でや」

「ちょっと勝手すぎるよ、東山くん」

 亮平は机を両手で叩きながら声を荒らげ、美空も納得のいかない様子で和信に抗議していた。そんな彼らをよそに和信は話を続ける。

「今日の昼休みに、どっかのバカが全校生徒に迷惑をかけたからです。そいつらを恨んでください」

 部員たちはすぐさま、ある二人に対して冷たい視線を向けていた。

「おっ、俺のせいだっていうのかよ」

「そうっすよ! 俺たちは何も迷惑なことは――」

「東山たちがくだらないことで騒ぐから怒られたんじゃん!」

 七菜香はそう言いながら、反論した恒章と元に詰め寄った。恒章は負けじと七菜香と押し問答になり、元も彼に加勢する形になる。

「そんな……」

 そんな中、衣絵はその場でうなだれてしまう。美空と花奈は彼女のもとに駆け寄った。彼女の頬には一筋の涙が伝っていたのが見えていた。美空は慌てて助けを求めた。

「ななちゃん! かなみちゃん!」

 七菜香は恒章を押し退けて、美空と奏美とともに一年生たちのもとへ向かう。

「大丈夫、私たちの冗談が過ぎただけですわ。落ち着いて」

「……じょうだん? よかったです……」

 奏美の一言によって、衣絵は力なくも少し安堵しながら椅子に座り込んだ。

「本当、後輩たちにドッキリを仕掛けるのはよくないですわよ」

「ドッキリなら撮っておけばよかったしー!」

 少しご立腹の愛紗に対して、和信は平謝りした。陽大も彼女にまあまあと言いながら、落ち着かせていた。

「とりあえず和くんの話を聞いてほしいかな。とりあえず今年は違う関わり方をするってことなんだよね?」

「うん。今回はステージ発表団体が多くなっちゃったから、舞台創造部が裏方を仕切るように頼まれたんだ」

「裏方……!」

 和信のその言葉に最も目を輝かせて反応したのは翔也であった。彼から思わず笑みがこぼれていた。

「裏方の仕事ができるんですね、とうとう!」

「それにしても、何ででしょう? わざわざ私たちが指名されるなんて」

「いや、どうせあいつの安請け合いだから。深い意味なんてないさ」

 恒章の答えに暖乃はますます首を傾げた。一年生たちの不安な様子を見た和信は、部員たちに問いかけた。

「そう言えば、なんでこの部活が舞台創造部ってなったかって覚えてる?」

「演劇や合唱、漫才やコンサートとか……、とにかく舞台を使って発表する部活が乱立しすぎて、部員数も一人二人しかいなかったから、一つの部活に集約して活動したのが始まりなんだっけ?」

 美空の言葉に、和信は頷いた。

「そして舞台関連なら何でもやってみる部活になったんだ。最近は全員演者になることが多かったし、裏方も全力でやらなきゃいかない時期なのかなって思った」

 彼の言葉に、部員たちは納得していたようだった。

「せやな。やれることは多い方がいいしな」

「和くんの考えに賛成だよ。……恒くんは納得してないみたいだね」

 陽大からの思わぬパスに、恒章は豆鉄砲を喰らった鳩のような顔をした。そして観念したのか、恒章は和信に問う。

「……本当の理由は何だ。それ以外にもあるんだろ、和信」

 和信は弟の予想外の質問に少しうろたえるも、うまくとりなして答えた。

「……みんなそれぞれがやりたいことが違っている中でも、今まではなんとか組み合わせてこれた。この機会に自分がやりたいことを突き詰める時期にしてもいいかなって思ったんだ」

 和信の話にみんなは聞き入っていた。そんな中、育はふと隣に少し不機嫌そうに手を挙げる。

「それって学校に利用されてないですか。お披露目の機会を潰してまでやる意味が見出せないっていうか」

「その代わりオープニングムービーとか、YouTubeに上げるCMとか出演させてもらえるようにしたから。完全に僕たちの発表の機会がなくなるわけじゃないよ」

 和信のフォローがあっても、依然、育の表情は晴れないままであった。

「それでも実際にお客さんが直接僕たちを見てくれる機会はないじゃないですか」

「……今年の港高祭のテーマソング、育くんのミュージックビデオを特別に作ってくれるら――」

「喜んで協力させていただきます!」

 育は目に輝きを取り戻しながらも、食い気味に寝返る。そんな彼の切り返しに思わず全員がずっこける。ただ一名を除いて。

「岡山……、どうしたの?」

 輝が小さくため息を吐きながら黙り込んでいる様子を見て、花奈は横から話しかける。その言葉にハッとした輝は、さしあたりこう答えた。

「……なんでもない。大丈夫」

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