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on the stage  作者: すごろくひろ
2年生

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妹、帰国します

 夏休みも明けて、港山高校は二学期を迎える。楽しかった夏休みの後、生徒たちが怯えるもの。それは確認テストと課題提出である。恒章は疲労困憊の中、教室へとやってくる。

「恒くん? なんかすごく顔色悪いけど、どうしたの?」

亀田が心配そうな顔をして恒章に声をかけるも、恒章はなんとか息を整えようとしていた。

「恒章、ゲームやりすぎて宿題終わらなかったんだよ」

後から和信がやってきてそう言った。亀田は納得した様子で笑う。

「なんだ。心配して損したよ」

「いつも通りやな」

そして土呂がやってくる。


「みんなおはよう」

「おっすー」

雑談していると、美空と七菜香が彼らの元へやってきた。彼女たちの手にはなぜかノートが数冊あるのが見えた。

「さあ、提出の時間だよ?」

首を傾げる男子四人。恒章は嫌な予感がして女子二人に恐る恐る尋ねた。

「授業までだよね? ……じゃないと俺は……」

「宿題、朝のうちに学級委員が集めて提出するって言ってたじゃない」

和信は思わず、あっ……と間抜けな声を出してしまう。それ以上に、恒章が落胆して机に顔を伏せてしまった。そんなアンバランスな状況に、土呂と亀田は笑いそうになってしまう。

「ごめん忘れてたわ」

「しっかりして、学級委員!」

七菜香は持っていたノートたちを和信に手渡した。和信は美空と一緒にクラスメイトたちから宿題を集めて回る。土呂も亀田も清々しい顔をしながら、その場で和信にノートを提出する。しかし恒章は半泣きで和信にしがみつく。

「和信、いや和信さま。どうかご慈悲を……」

「残念だけど、もう時間だから……」

首を横に振られた恒章は、抜け殻のように轟沈していた。兄はそんな弟を横目に、しれっとノートを取り上げた。



そして放課後、和信は舞台創造部の部室に顔を出す。

「和信先輩、おはようございます」

育が和信に気づいて挨拶する。和信も返したところに気づいた他の一年生とも次々に挨拶を交わした。そして土呂の姿を見つける。

「ごめん、土呂ちゃん。今日、僕と恒章は部活休むね」

「珍しいな。やっぱ今日は体調悪いん? それとも弟のストレスでやられたか?」

「今日、妹が帰ってくるんだ」

 東山兄弟の会話に耳を疑った部員たちは、思わず互いに顔を見合わせる。

「ひーやんって、二人兄弟じゃないん?」

「うん、三人きょうだい。イギリスに留学中してた妹が帰ってくるんだ」

「……え〜‼︎」


「写真ないの?!」

和信はスマホを取り出すと、妹の写真を部員に見せる。

「かわいいー‼︎」

「痩せてるなあ……」


「でも、どっかで見たことあるような……」

「ごめん、そろそろ行かなきゃだから!」

 和信はそう言って舞台創造部の部室を出ていった。念のために隣のボードゲーム部に寄ると、恒章が元とカードゲームで対決していた。

「ぐぬぬ……、恒章先輩のくせに……」

「ダメだぞゲンゾー。先輩を甘くみては……」

和信は近くにいた部員に頼んで恒章を呼んできてもらう。しかし恒章はいいところだからと言って離れようとしなかった。和信は痺れを切らしてついに乗り込んでいく。

「めんどくせえよ。お前だけ行って来いよ」

「だーめ! 家族揃って行くって決めたでしょ!」

 和信は恒章をドアの近くまで引っ張るも、近くの柱にしがみついて一向に離れようとしなかった。他の部員が妹の写真を見たいと言ってきたので、和信はスマホの画面に表示させて彼らに見せる。

「お前、可愛い妹がいるなんて聞いてないぞ!」

「何ちゃっかりラノベの主人公みたいな状況なんだよ!」

「約束が違うじゃねえか! 東山を許すな!」

 ボドゲ部の部員たちが、恒章に冷たい視線を向けながらジリジリと迫ってくる。恒章は焦りながらも和信を盾にしてこう言った。

「おい。血祭りに上げるならこっちにしろ! 俺よりも優等生をボコした方が優越感がたまんないぞ!」

 そう言って恒章は元いた場所に和信を座らせると、ボードゲーム部の部室から走り去っていく。和信は呆然と座らされてしまう。ボドゲ部の連中は恒章だろうが和信だろうがもはやどうでもよく、可愛い妹が視線が恐ろしく迫ってきた。

「いや、血祭りに上げるなら恒章にしてください! 罰するべきはまずは裏切者だと!」

 和信も弟の後を追うように、ボドゲ部から逃走した。

「待て! この裏切者が!」

「近寄るな、この没落貴族め!」

 二人は追いかけっこをするが如く、部室棟を駆け回った。途中で先生に注意されるも、急いでるのでごめんなさいと謝りながら、校門へと向かった。その道中で二人は奏美とすれ違う。

「きゃあ!」

「悪い」

「ごめんね」

 全力で駆け抜けた二人を奏美はよろめきながらも、辛うじて見送る。

「あなたたち……」

 奏美はそう言いながらも、舞台創造部の部室へと向かった。

「おはようございます」

「奏美じゃん、おつー。生徒会はもういいの?」

「今日はもう大丈夫ですのよ」

そう言いながら、奏美は美空や七菜香の近くに座る。

「それにしてもVTuberのスタジオが港山にあるなんてなあ……」

「本当ですか⁈」

愛紗が思わず身を乗り出す。興奮する彼女を奏美は抑えたが、それを上回る勢いで矢継ぎ早に質問していく。

「生徒会で学校のPV作ることになって、ちょっと練習して……」

突如、奏美はハッとした顔をすると、神妙な面持ちで語り始めた。

「それで思い出しましたわ。実は、みなさんにお伝えしなければならないことがありますの」

奏美はそう言って、部員たちにある事実を告げる。聞いた部員たちは、開いた口が塞がらなかった。

「それって噂では聞いてましたけど……、本当なんですか?」

竹園の問いに奏美はゆっくり頷くと、少し俯きながら言葉を続けた。

「ええ。これはこの部活だけじゃない、学校全体にとっても一大事ですのよ……」



「いやあ、いい天気だなあ」

「あの子もどのくらい成長したのかしらね」

両親は意気揚々と高速道路をかっ飛ばす。父の大太は普段の緩やかな雰囲気からは想像できないくらいにファッションを極めており、いつのまにか度付きのサングラスを携えていた。母の希里は、少しキレイめの服でアクセサリーにも気を使っている。

「楽しみか? 二人とも」

「久々に会えるのを楽しみだね。でも……」

和信は自分たちの制服姿と、両親の服装を見比べていた。

「二人が一番張り切ってるじゃない」

「……親バカだ」

「恒章?」

両親は、恒章を横目で見る。

「何でもない」


空港に着くと、到着口へ向かう。そして、両親は二人にうちわを持たせると、娘の帰国に今か今かと待ち構えていた。

「……なんで俺ら、うちわ持ってるの?」

「せっかくだからじゃない?」

兄弟は顔を見合わせながら、気まずい顔をした。和信は恒章のズボンの後ろポッケが妙に膨らんでいることに気づくと、それを引っこ抜いた。

「恒章だって、なんで後ろにペンライト隠してるの?」

恒章は顔を赤くして、和信の手からそれを取り上げる。

「べっ、別にいいだろ……」


「お父さん、お母さん!」

 両親を呼ぶ声とともに、東山一家に向かって大きく手を振ってくる少女が現れた。長いロングヘアに落ち着いた淡いピンクの服。間違いなく、二人の妹の菜心なこであった。菜心は、母を思い切り抱き締める。

「ただいま!」

 そして、父は菜心の身体から荷物を下ろしてやるとそのまま手に持った。そして一家はある場所へ移動していく。

「信ちゃんも変わってないね」

「そう?」

菜心は和信の横に並ぶと、二人はいろいろと話し始めた。恒章はただ後ろから二人の様子を見ていることしかできなかった。しかし菜心が振り向いた途端、彼女は驚いた表情で恒章を見つめていた。

「恒ちゃんが……、外に出てきてる……⁈」

「……久しぶりだな」

「……少し太った?」

「ははは……、そうかい……」

 久々の再会も束の間、一家は予約していた空港内のレストランで昼食をとる。男性陣は大きな身体に相応しいくらいの大盛りのランチを、女性陣はフランス料理を嗜んでいく。たくさんの思い出話をしていく中で、和信は菜心にある質問をした。

「なんか港山を受けるために帰って来たって聞いたけど」

「うん。港山の特別プログラムってのがあって、それのために」

そう言って菜心は、そのパンフレットを見せた。それは海外経験のある優秀な生徒を、より最先端の研究に触れるなどのハイレベルなカリキュラムを行うものらしかった。

「さすが、うちの子だ!」

父は、自慢げに笑った。

「でも港山でいいの?」

「信ちゃんいるし大丈夫かなって」

菜心は笑顔で和信に答えた。和信は少し安堵する。

「そうねえ、でも恒章もいるから大丈夫よ」

「え? 二人とも一緒なの?」

 和信と恒章は、揃って同じタイミングで頷く。

「Oh, my gosh...」

 菜心は思わず落ち込んだ表情で、肩をを落とした。

「失礼なやつだな。一応、一般入試で合格してっから!」

「……まあ、みんな一緒なら怖くはないか」

その後も菜心は、港山での高校生活について二人に尋ねた。和信はいろいろ答えたり、恒章に回答を振ったりするが、恒章は空返事するばかりだった。

「二人とも同じ部活なんだね。なんか意外だなあ」

「やっぱり?」

「やっぱりってどういうことだ、和信」

恒章は和信を睨みつける。

「信ちゃんは子役もやってたからわかるけど……、恒ちゃんはゲームで引きこもってた記憶しかないし」

「いつまでも同じだと思うなよ」

その言葉に菜心は少し表情を暗くする。和信がその理由を尋ねると、彼女から耳を疑う言葉が出てきた。

「でも、港山なくなっちゃうんでしょ?」

「どういうこと?」

 菜心が見せたのは、あるニュース記事だった。父はその記事をスマホで見つけると、それを黙って読んでいた。

「なになに、『少子化に伴う高校再編について』……。港山が隣の中央高校と統合されるってことか⁈」

「えっ?」

「まじで?」

思わず一家の時間が止まった瞬間だった。

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