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on the stage  作者: すごろくひろ
2年生

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仮入部期間

「こないだはごめんね、道上さん……」

 ある日の放課後、美空は奏美に深々と謝っていた。しかし奏美はそんな彼女を制止させる。

「新入生がまさか初日から喧嘩だなんて前代未聞でしたけれど、貴女が謝ることではありませんわ。こういうのは荒療治が一番ですので」

 奏美は淡々と話す。しかし、美空は少し複雑そうな表情をしていた。

「でも、ななちゃんが相当怒っちゃって……」

「知らない人間からすれば、私を恨むでしょう」

 そして七菜香が教室に戻ってくる。七菜香は、奏美と目が合うも睨みつけるように見つめていた。奏美はそんな彼女を気にも留めず、席を立った。

「とりあえず生徒会の仕事がありますので、失礼」

 すれ違い様に舌打ちをする七菜香。そんな彼女に奏美は訝しげな視線を送りながら教室から去っていった。

「何あれ? 美空、あんなのに嫌味でも言われたの? 」

「…… 生徒会と学級委員の話だよ」

 美空はそう答えるしかなかった。七菜香は疑いの目を美空に向ける。

「早く部活行こう? 今日、鍵当番だから早く行かないとだし」

「そうだね。今日から仮入部期間だし準備しないと」

 七菜香は美空に宥められながらも荷物をカバンにしまった。教室の後ろでは、数学の課題と格闘する東山兄弟の姿があった。

「東山くん、東山をよろしく」

 そう言って七菜香は、美空と教室を出ていった。

「ふぁあ……」

 恒章はあくびをしながら、机上の課題プリントを解いていく。その目の前には、兄の和信が椅子に寄りかかりながら、その様子を不機嫌そうに眺めていた。

「小テスト寝過ごして0点獲るやつがいるか。僕まで巻き添え喰らっていい迷惑だ」

「内職はよくないぞ」

「してないわい。恒章が『替え玉仕込んでおくんで』とか言うから、僕が見張り番にさせられたんだろ」

「制服取り違えたおバカさんに言われたくないわ」

 恒章は発憤しながらも和信に言い返しつつも火花を散らそうとする。しかし和信は神妙な顔をして、恒章の机上にあるプリントを黙って指で突く。恒章は適当に鉛筆を転がしては、解答欄を埋めていくのを繰り返していったが、和信からデコピンを喰らってしまう。

「ちゃんと解け」

 なんだかんだ恒章が課題プリントを終えるまで一時間かかってしまった。和信が教えながら解いていってなんとか終わらせることができた。二人は急いでプリントを提出して、部室へと急いだ。

 その道中にある科学室の前を通ろうとすると、二人の男子生徒が、廊下に立たされてるのを目撃した。よく見ると、前に見学に来ていた笹床元と笹床育の二人だった。

「東山先輩、お疲れ様です」

「どうもです」

 元は恒章に、育は和信にそれぞれ挨拶する。和信と恒章もそれなりに挨拶を返していた。元は二人を見比べてこう言った。

「東山先輩が分裂してる……⁈ 」

「そんなわけないでしょ」

 育はすぐさま突っ込むとともに、冷ややかな目で元を見つめていた。和信は乾いた笑いをするも、恒章は少し複雑そうな表情をしていた。

「お前は相変わらず元気だな」

「それがとりえなもんで! それと、早く東山先輩から勝ち星貰いたいですし」

「また今度な」

 恒章と元はゲーム談話に入ろうとする。育は何か話したそうにしていたのを察した和信は、恒章の肩を叩いた。

「あの……、こないだはすみませんでした」

 育はそう言いながら、高笑いしていた元の頭を掴みながらも一緒に頭を下げていた。和信は、二人に声をかける。

「これは仕方なかったし、大丈夫だよ。仮入部、早くおいでね」

 育はゆっくりと頷いた。元は大きな声で返事をしたものの、またも育から冷たい視線を浴びていた。

「笹床たち。廊下で喧嘩するなら戻りなさいって」

「やった! 暖乃ののちゃん、マジかい?」

 元と育は暖乃と呼ばれた女子生徒に呼ばれて教室へと戻っていく。暖乃は、教室に戻る前に二人に軽くお辞儀をしていった。

「騒がしくてすみません」


 和信と恒章が部室に入ると、二年生の部員に加えて、女子三人、男子二人の姿があった。部活動の見学期間や仮入部期間が始まっていたからだ。

「おはようございます」

「はよーっす」

 新入生たちは二人を見ると一瞬キョトンとした顔をするも、こんにちはと小さく挨拶して再び見学に戻った。

「じゃあ、私の動きを真似してやってみて」

「はいっ!」

美空と七菜香は女子三人と一緒にアイドルの踊りを簡単に踊り、土呂と亀田は男子二人と一緒に簡単な舞台装置を操作していた。

「このボタンを押すと……、ほら照明の色とかも切り替わるんだよ」

「すげー、これが自作ですか……」

どの新入生も楽しそうな表情をしていたことに、和信は少しホッとした表情を見せる。

「そんな気持ち悪い顔すんなよ」

「うるさい」

「ぐえっ」

悪態をつく恒章の横っ腹を、和信は肘で突く。恒章は苦い顔をして腹をさすった。新入生の見学時間がまもなく終わる頃を迎え、一年生は帰り支度を始めた。

「明日、歓迎講演だから見に来てね」

和信はそう言って、帰っていく一年生にビラを配っていった。

「ありがとうございます! お疲れ様でした!」

「あざっす。楽しみにしとります」

和信は一年生を見送ると、二年生を集めて最終稽古の準備を始めた。道具の準備が済むと、カーテンで着替えスペースを仕切って衣装へ着替える。

「仮入部、ちゃんと見たかったなあ……」

「恒章のせいやな」

「なんでだよ」

土呂のツッコミに恒章は少し膨れてしまう。亀田は二人を宥めていた。

「って、そういえば亀田氏って役あったっけ? 」

「亮くんが脚本少し変えてくれたの。 恒くん怪獣が、通りすがりの僕を誘拐するところから話は始まることになってね」

「ほえ?」

恒章は呆気に取られて、素っ頓狂な声を出してしまう。和信と土呂は、恒章の肩に手をポンと置いて、こう言った。

「亀ちゃんの出演のためだ……」

「よろしゅうな」

部員たちは衣装に着替え終わると、舞台上に立ってスタンバイする。しかし恒章は、なかなか出てこない。

「恒章くん、大丈夫?」

美空が声をかけるも返事はなかった。恒章は、今更ながら変更箇所を台本で確認していた。

「多分大丈夫」

恒章も舞台上へ飛び出していった。



「なんとか全部難なくできたな」

「でも良かったね。今日、新入生が見学来てくれたし、安泰だね」

亀田はニコニコとしながら、道具たちをしまっていった。和信はふと考えごとをしているようだった。

「和くん?」

和信は亀田に呼びかけられたことに気づきハッとすると、部員たちにこう告げる。

「明日は本番だから、気を抜かず頑張ろう。そしたら明日に向けて……、土呂ちゃん、どうぞ」

土呂は突然の振りに思わず自分で指を差す。和信はゆっくりと頷いた。

「まあ、とりあえず……。明日は誰も後悔しない楽しい時間にするで! 」

「おーっ!」

部員たちは拍手しながら、土呂に拍手を送った。そして明日の公演に向けて、意気を上げていくのだった。

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