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on the stage  作者: すごろくひろ
1年生

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30/66

お引越し

 ある日のこと、和信は朝のホームルームを終えると、担任の先生から呼び出された。和信が先生のもとへ向かうと、一つの封筒を手渡される。その表面には、『部活動申請結果』と赤書きされていた。和信は席に戻ったあと、ゆっくりとその封筒を丁寧に開けた。その中身を見た和信は、小さく拳を握ったのだった。

 放課後、和信は結果報告のために、部員たちを食堂に集めた。

「一月から活動開始できることになったよ」

 口々に良かった。と活動できることに安堵した四人から拍手が送られた。

「部室は、文化部棟の三階、一番奥の部屋」

「うーん、一番遠い部屋か……」

「まあ貰えるだけ上出来、上出来」

 少し不服そうな七菜香に、亀田が嗜めた。

「ただし学校から講堂やその控室にある物は、年内に片づけるか処分するかしてくださいとのことだそうで」

「先輩たちには連絡は取ったん?」

「うん、好きなようにしていいそうだよ」

「で、それはいつやるん?」

 土呂の質問に、和信は少し気まずそうに切り出した。

「今日これからは、ダメかな……?」

 四人の顔が若干引き攣った。

「今日はちょっと……いきなりすぎてきついんじゃないかな」

「量とか結構多くない?」

 女子二人が不満を少し吐露した。和信は苦い顔をするばかりだ。

「まあ早めに引越しは済ませておけば、あとあと他の部活の準備とブッキングすることはないと思うよ」

「学校の式典でとかで使っているものは、さすがに置いていっていいやろ? だったらそんなに多くないはずやで」

男子二人が和信に加勢してくれていた。しかし女子二人の、特に美空の顔から不安の色は消えなかった。

「でもこの五人だけじゃ、今日中に終わるかは不安かな……」

「そうだね。そしたら一人助けを呼ぶよ」

 和信はある人物にチャットを送った。そして数分後、その答えとなる人物が現れる。まさかの彼だった。

「し、失礼しまーす……」

「あっ、東山!」

「ひーやん二号……」


 *


 和信は職員室から鍵を借りて、恒章を含めた五人とともに新部室の扉を開けて入った。

「思ったより広いね」

 部員たちが感動していく中、和信は全員に号令をかける。

「とりあえず必要なものをここに運ぼう」

 部員たちは、かつての舞台創造部で使用していた備品や、今までの作品集や日誌などを移動させた。女子二人は軽めのものを、男子たちは今まで作った大道具たちなど大きめなものを協力して講堂の控え室から運び出していく。

「このCDとかラジカセとか部室に持っていくね!」

「了解ー」

「恒章、もう少し持ち上げて」

「これ重いって! 」

 手間取っている男子たちの前に、美空が台車を持って来た。

「何回も往復するのは手間だから、これにある程度載せて持っていきましょ」

「サンキュー! 助かるで」

男子たちは総出で、台車に棚などの大きな物を積み上げていく。物がある程度載せ終わった後、和信たちはエレベーターを使って部室へ運ぶ。これを複数回ひたすら繰り返したのであった。


 *


 数時間経って夕方六時を回った頃、講堂にあったものを新部室へ運び切った和信たちは、その勢いで部屋のレイアウトや物の整理整頓までみな終わらせてしまった。その結果、満身創痍となっていた。

「勢いで物の整理までやっちゃったね……」

亀田が息を切らして言う。

「ひーやん、後はないか?」

「うん。とりあえず一月から活動できる準備が整ったよ。みんなありがとう」

そして、奥田先生と齋藤先生が部室にやってきた。

「すまんな、遅くなった」

「結構、いい感じになったわね。みんなお疲れ様」

齋藤先生が、部員たちに飲み物を手渡した。みなお礼を言いつつ、一気に五百ミリリットルのスポーツドリンクを飲み干していく。そして奥田先生から

「一月から活動を始めるが、まずは体つくりを中心とした基礎を重点的にやるからな」

「えっ、練習とかはしないんですか⁈」

土呂が先生に意見する。

「初心者や未経験者もいるし、そもそも部活なんて久しぶりの者が多いだろう。だから一度原点に立ち返ることにした。齋藤先生もその点は同意している」

少々不服そうな土呂と亀田だった。

「まあ仕方ないか。僕も久々だし、今は調子を取り戻すのが優先かなあ」

渋々ながらも和信の考えにみな同意したようだった。

「あと、年末に体力テストやるから、それまで各自で準備しておくように」

「えーっ!」

異口同音とはこのことを言うのだろう。土呂、亀田、七菜香が同時に文句を口々に言うが、先生たちは早く帰るよう促して、部室を出ていった。突然の死刑宣告を受けたごとく、部員はみな意気消沈していた。しかしそれも束の間、七菜香はあることに気づく。

「そういえば、なんで東山はまだいるの? 手伝いはもう終わったよ?」

 七菜香の質問に恒章が口を開いた。

「手伝いのつもりだったけど……」

 容赦なく鳴り響く最終下校十分前のチャイムが恒章の言葉をかき消した。恒章は時計を確認すると、それじゃ。と言って、そのままボードゲーム部の部室へと向かい荷物を取りに行った。他のメンバーは、急いで帰りの支度をすませ、その場で解散したのだった。

 和信は全員が退出したことを確認して部室の戸締まりをした。文化部棟の階段を一人で降りていくとき、ひっそりと呟いた。

「一番不安なのは……、やっぱりアイツなんだよなあ……」

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