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on the stage  作者: すごろくひろ
1年生

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活動申請書ともう一人の顧問

 ある日の放課後、和信は舞台創造部の設立に向けて、食堂の一角にメンバーを集めていた。この場にいるのは、美空と七菜香、土呂と亀田の四人であった。

「ってかウチみたいなのがいていいの? ちょっと浮いてる感じするんだけど!」

「ななちゃん、落ち着いて」

「目の前にギャルがいるで……。絶滅危惧種や……」

「美人で才女の中山さんとお近づきになるなんてなあ……」

 三者三様なら四者四様。和信は咳払いを一回する。四人はそれに気づいて、和信の方を向く。

「それじゃ、始めようか」

 和信の進行のもと、その場にいる全員でお互いに軽く自己紹介を行った。和信は子役で培った経験があり、高校の部活でもそういった活動をしたいということを話していた。美空と七菜香は、域の子どもたちに向けた紙芝居の読み聞かせに活かしたいこと、亀田は高校に入って新しく未経験のものに挑戦したいことを話した。そして、土呂の番が回ってくる。

「えーっとワイは……、みんなとは違って大層な動機はありません。楽しそうだったし、中学からの仲のいい友達も一緒だったので入ってました。ただ、そいつは転校したんやけど……」

「もしかして、福徳くんのこと? 」

 七菜香が土呂に尋ねた。

「せっ、せやで。そういや、フックと南野さんはクラス一緒やったな」

「福徳くんってフックって呼ばれてたんだ。船長みたい!」

 七菜香が爆笑が止まらなかった。そのニックネームにあるイメージと彼の見た目のギャップがおもしろく感じたらしい。美空は七菜香に抑えるように促すが、土呂は少し顔を赤くしてそのまま椅子に座った。そんな彼らを華麗にスルーした和信は、話を進めだした。

「土呂ちゃん、そういえば部室の件ってどうだった?」

「……すまん、ひーやん……」

 土呂のぎこちない反応に、和信は首を傾げる。亀田が彼の言葉に続けてこう言った。

「部室の場所を仮押さえしようとしたんだけど、申請が通った部活に取られちゃってねえ……。階段に近い広いところは、鉄道研究部に取られちゃったんだよ」

 その事実に和信は頭を抱えてしまった。今のうちに仮押さえして、新入生が獲得しやすい場所を確保しようと考えていたからだ。

「出だしが遅くなったばかりに申し訳ない」

「大丈夫! どうにでもなるよ!」

 七菜香は男子を励ましながら、活動内容を決めようと促した。そのとき、亀田が手を挙げた。

「そういえばさ、舞台創造部ってどういう部活だったの? 僕は今までのことは知らないからよく分からなくて。演劇部とは違うの?」

「演劇部とは重なるところもあるけど、ちょっと違うかな。先輩から聞いた話だけどーー」

 和信は、これまでの舞台創造部について説明を始める。演劇だけでなく歌劇やコントなど舞台に関わるものならなんでも幅広くやっていたこと。あとは学校行事で式典の司会を行ったり、もやっていたことを簡単に話した。

「なるほど、ジャンルに囚われずに表も裏も全部徹底的にやれるということだね。式典の司会とか、他の部活の裏方とかも任されていたのは知らなかったな。てっきり演劇部と一緒かなって思ってたから」

 亀田を部活についてちゃんと理解を深めたところで、五人で年間の活動内容も詰めていった。とりあえずは、公演を年二回行う想定で、通年で練習や勉強会の参加、学校や地域の行事、他の部活の演出補助などを随時行うとして届け出ることにした。

「具体的なものは、追って決めましょう。まずは早く届け出て部室も確保しないと」

「そうやな」

 美空の意見に土呂も同意した。亀田が申請書類を覗き込むと、残りの空白箇所について尋ねた。

「そういや、顧問の先生とか地域の指導者とかって決まってるの? 今はどっちも入れなきゃダメって聞いたけど」

「地域の指導者については公民館の長谷川さんにお願いしたよ」

 美空はそう言って、外部顧問の承諾書を机の上に出した。七菜香はさすがだね!と言って、小さく拍手した。しかし和信は苦い顔をしていることに土呂は気づいた。

「ひーやん、どうした? この人と何か因縁があるんか?」

「違う違う。顧問の話! 顧問は奥田先生が引き続きやってくれるんだけど、もう一人顧問をつけてほしいんだって。澤田先生、新しくできたボードゲーム部に取られちゃったから」

「もう一人か……」

 当てがありそうな先生を挙げてみたものの、既に皆が他の部活に携わっていて、難しそうだった。もう一人の顧問は和信がもう一度探してみて、確定し次第すぐに生徒会へ提出することにして、今日のミーティングは解散となった。

 和信は四人と別れ、顧問の先生をもう一人探しにいくことにした。しかし、どの先生を当たっても、多忙のため厳しいという返事しかもらえなかった。そんな調子で和信が彷徨っていると、恒章がカード仲間たちと一緒に階段を降りてくるところを認めた。

「和信ー」

「おっ、恒章」

 何かを察した恒章は彼らに用事があるからと別れることにし、和信のもとへ向かうことにした。その前に、階段下にある自動販売機でいつも飲んでいるビタミン系の缶ジュースを二本購入した。

「はい」

「ごちそうさまです」

 和信は恒章からそれを受け取るとグビグビと飲み始める。恒章は飲みながら、和信と一緒に歩き始めた。

「ボードゲーム部、行ったんだっけ?」

「やってることは変わらずだけどな。今度、小学生を対象にしたカードゲーム大会をやるからその準備とか」

「いいなあ……」

 恒章は発言の真意について和信に尋ねる。和信は先ほどまで話し合っていた舞台創造部の件で、顧問がもう一人探さなければいけなくなり、現在それに苦労していることを告げた。

「心当たりなら……、一人だけあるかな」

「本当⁈」

「そしたら、今行ってみる? ちょうど返すものあるし」

 そう言って恒章はある場所へ向かった。和信もすかさず彼について行く。先ほど二人が鉢合わせた場所に辿り着き、その向かいにはある部屋に恒章は入っていく。

「あれ、ここって?」

「失礼します」

 二人がその部屋、保健室に入ると、美人すぎる養護教諭として有名な齋藤先生の姿があった。齋藤先生は少し微笑みながら、二人を出迎えた。

「あら東山くん。今日はどうしたの? 分裂してるじゃないの」

「先生、冗談はいらないですよ」

 齋藤先生はフフッと笑いながら、二人に椅子へ腰掛けるように告げた。

「えーっと……はじめまして、一年一組の……」

「和信くんね」

「あっ、はい。すみません、具合悪いわけでもなく保健室に来てしまって」

「いいのよ。身体の不調でくる子も多いけど、悩みとかがあってくる子もいるから」

 和信はただただ頭を下げるばかりであった。恒章は保健室から借りていた氷袋を、齋藤先生に返した。

「そういえば、二人は部活は決めたの?」

 その質問に、二人はそれぞれ答える。恒章はボードゲーム部を結成して入ったこと、和信は舞台創造部を再結成することを話した。

「実は、舞台創造部の顧問を探してます。もう一人つけてくれと言われたんですが、どの先生も手一杯らしくて」

 齋藤先生は、それは大変ね。とさらりと返す。恒章が思い出したかのように、齋藤先生にあることを尋ねた。

「そういえば齋藤先生は、顧問とかは持たないんですか?」

「養護教諭も一応できなくはないけど、あまりないパターンね」

 和信は意を決した。

「あの……。突然の申し出で申し訳ないのですが……」

「私でいいならいいわよ」

 即答だった。突然のことに呆然とした二人だった。

「あっ、ありがとうございます」

 和信は精一杯の声で、齋藤先生に礼を述べた。齋藤先生は書類を受け取り、記載された内容を確認する。部員一覧の名前を見た。一点、気になるところがあったような素振りを見せたが、齋藤先生はそのまま顧問欄に署名とハンコを捺して書類を和信に返した。

「早く出しに行きなさい」

「ありがとうございます。失礼しました」

 齋藤先生にそう促され、二人は保健室を出ていった。そしてその足で生徒会室へと向かう。そして、和信は申請書を無事に生徒会へ提出することができた。生徒会のチェックはクリアしたため、あとは職員会議で承認されるのを待つのみとなった。

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