内部探索 その1
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私は――。
城の中を、ひとまずは探索することにした。
最初は廊下のようなところだった。
石造りで、暗い。
外も雨で暗くなってきた頃である。
私は、右手にハンマーを持ったままで歩いた……。
(なんか私の身長、低くね?)
まわりの風景が馴染みある世界の人工物になって、初めて気づいた。
身長は30cmくらい、下がっているんじゃないか。
『あ、そういえば言っておく事がある』
「?」
『俺は、お前に与えられたアーティファクトだ。使わないときは、しまっておける』
「そういう機能があるの……!?」
『うむ、利き手に、6本目の指が生えたと仮定しろ。それを折りたたんで丸めこむイメージだ』
目の前には、ドラゴンのポニャッとした手があった。
信じがたいが自分の手である。ちくしょう、人間じゃない。
外見としては、肉球があって爪がとんがっている。
……あれ、ドラゴンって肉球あったっけ……?
まあこの世界だとそうなんだろう。
さて。
私は言われたとおり、そういう想像をしてみた。
……すうっ、と、ハンマーが消えた。
「うおおお」
『できたな』
「すげええええ」
脳みそに、まだ彼の声は響いている。
『これが、アーティファクト。お前の力だ。もっとも、向こうの概念を引っ張ってくるのは、お前の知識からだろう』
「建築物マニアが役立つことって、あるんだ……」
まわりは古城の大広間だ。
ホテルなのでラウンジ、ということになるのだろう。
吹き抜けになっており、両脇に上へ登る階段がある。
暗く、灯りもないので、こわーい。
頭上には豪奢なシャンデリアがある。……灯りとしてはあれを使えばいいのかな……。
ん……?
シャンデリアを使う、って、ことになると……。
「あの。大事な事言うよ。私の世界のエネルギー事情について」
『おう?』
「電気がないと、灯りはつかないの」
……外から、バリバリバリッ……と雷鳴があった。
「この世界に雷があったとしても、電気ってのはね……。ちゃんと、建物が使える形に調整をしてから、配電しないといけない」
シャンデリアには歴史がある。じっくり検分したいがそれは後だ。
いちおう、私はスイッチを探して歩いてみる。
現代的な電気システムに改修されているってことはありうるんだろうか。ここ古城だぞ。
『電気なら、お前は持っているじゃないか』
「? 私?」
『お前は見たところ、ライトニングドラゴン――この世界では雷を放つ竜の魔物だ』
電気を使う生きもの、ってこと?
初めて知った。
デンキウナギくらいしか知らねえー。
ていうか私、薄々は思っていたけれど、『魔物』なのね。
いわゆる人族と魔族のくくりを鑑みると、人間の敵か。
えええー……。
「だからって……なあ」
私はスイッチを見つけた。
一般的な家庭のように壁についている。
かちかち。
切り替えてみるが、案の定、灯りはつかない。
「ううう暗い……」
『騙されたと思って、額のツノで触れてみろ』
「え?」
手で確認してみると、自分のおでこにツノがある。忘れていた。
『そこで、壁の今触ったものに、触れてみたらどうだ』
「こう?」
スイッチの前にかがみこんで、ツノで、こつん。
すると――
ぶわああ、と光が広がった。
閃光で目の前まっしろ。
「な、なんだってええええええッッ!?」
『ライトニングドラゴンの電気は、そのツノに溜めこんで武器とするのだ……ってこれはちょっと強すぎるな……うおおおおおあああ』
「目があああああああ!! ここの概念を確認すべきだったあああああああ!! 電圧・電流・抵抗とか変電所とか発電とか電気技師資格とか」
打ち上がった花火の中心にいるみたい。あれを間近で撮影するドローンもこういう気持ちだったのかなあ? 暑い夏、火の中で頑張って仕事する彼らのことを誰も可哀想だと思ってなくて、嫌だった。
さらに。
外で鳴っていた雷が、この城に落ちたらしい。
さらにバリバリバリバリっと轟音が鳴る。
なにかが焼けるようなにおいもした。
「うわああああああ追加電力ううううううう」
……。
目を開いたり閉じ、ぱちくりぱちくり繰り返す。
いつまでたっても目の前がまっしろなのが、終わらない。
って……。
『おい! 灯りがついているぞ! よく見ろ』
「わ!」
頭上を見ると、あのシャンデリアが灯っていた。
垂れ下がったガラス群が光を反射していた。まるで、滝の上で妖精が踊るがごときあの光を放ってる。
……「まばゆい」という形容をするには、さすがにさっきの光のほうが鮮烈すぎたので、しないが。
(……ていうかどういう原理でこの灯りはついてる? 蓄電はどこに……なんかもういいや)
内部を探索していれば、わかるだろう。
大広間=ラウンジは、階段があるから上に行ける。
けれど、ひとまずは、この階を探索したい。
「じゅうたんが続いている先から見てみるね」
扉を開き、中を確認していく……。
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