現地住民(アーティファクト)その2 そしてカモ
とある国民的古典RPGゲーム――竜つながりの某クエスト――では、旅のほこらという施設があった。
渦巻きってのは、本来は海にあるものだ。でもその世界では地上にある。
フシギな青ーい渦巻きに歩いて入っていくと、ゆらゆらと画面が揺れはじめる――すると、瞬時に、別の場所に自分たちは移動しているのだ。
あれである。
おじいさんが「ワープだ! ワープだ!」ってJR線・富山駅のホームで叫んでたのを見た事があるけど、たぶん、酔っ払って電車で寝てたら知らんところに運ばれてただけだと思う。
『魔物たちの住む国から、奴らが直接ここの転移陣まで、ビュンと飛んでこられる場所だった。なので、実質として、人と魔との境界ということになる』
「地理としては陸の孤島、しかし実際はそうでない、と」
『そうそれ』
……。ファンタジーの特殊状況だ。
どうも、聞いたところから想像するに、人間たちをはじめとした「人族」と、そうではない者――「魔王」「魔族」「魔物」らとの間は、区別されている。仲が悪い、っていうことだろうか。
そんな便利なものがあるのなら――
魔物とやらにしてみれば、敵である人間たちその他に対して、奇襲攻撃やり放題なわけである。
なら確かに「人と魔の境界」だ。
『しかし――いま、戦いは落ち着いている』
「それで『旧』がつく、と」
『人族の側は、戦で疲れ果ててボロボロ。その一方で、魔族側はここにあるはずの転移陣を使わなくなっている。原因は不明』
「あくまで、あなたは、人族の側からの情報を持っているみたいだね」
『そうだ。あのサピア王城を建てた建築王の道具だった。それが俺だからな』
「へえ~、建築王……。すごそう。崇めたてまつります」
『わるくないぜ」
ってことは……。
このハンマーの属する人族全体にとっても、その転移陣がどうなっているのかは、わからない。
『女神サマに『おまえ、転生者に与える道具にすっから』って召し上げられたのが俺だからな。モテモテのイケメンはつらいぜ』
「マジの神さまがいる世界?」
「うん。双子だった。力関係はあるみたいだけど」
この話しぶりだと、直接、会っている。
すげー世界だった。
「悪意もないし敵意もないけど、善意もないし責任能力もないので注意ね」
「わかりました……会う機会とかあるのかな……会わないといいな……」
「グワグワ」
目の前の湖から、カモの親子がやってきた。
かわいいー。
そのしゃべるハンマーを置いてみると、カモの親子は「なにこれ、なにこれ」とばかりに囲んで、座りはじめた。
『これこそが崇拝だ』
「かわいいねー」
「グワグワ」
『わるくなさすぎる』
場面が続きます。




