現地住民(アーティファクト)その1
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私は、やっと声の主を捜し当てたところだった。
『俺はすげー道具なんだ――アーティファクト。名は『建築王のハンマー』という』
ワーオ。
まさか、ハンマーがしゃべっているなんてなあ。
「で、なぜハンマー……あなたがこんなところにいるの?」
『おまえの中から出てきた』
彼は続ける。
『異界から来たんだろう? 今までの経験上、『日本』という名の場所なことが多いようだ』
「! そこですね元いた場所はハイッ」
……ってあれ?
今までの、ってことは私だけじゃないみたい。
さては、これは重要なポイントだな?
『俺は、そんな異世界転生者に与えられる贈り物の一種だ。手っ取り早くいうと――武器とか道具とか、モノの形を取っているなら『アーティファクト』とか『アイテム』とか言われている。見えない能力なら『スキル』らしい。誰が決めたんだかしらんが』
「そうなってるんですね……」
『アーティファクトとアイテム、2つの区別はあいまいだ。が、誰が見てもスゲエものはアーティファクト、そう見えないものはアイテムって傾向がある。まあ、スキルと違ってまわりにも見えるから、呼び名も、細分化されたんだろ』
ここに来て、何が何やらだったので、ありがたい。
たすかる。
私は話しながら、歩きまわった。
「このあたりにある木って、材木向きですか?」
『ああ。ここにあるのは「クノリ」っていう木が多い。枝も取りやすいから加工も簡単だ。向いてるよ」
「な、なんと!」
『上へ上へと伸びて葉を付けるのは普通なんだが、冬になってくると――枝をひとりでに折り、幹の表面に貼り付ける。そして新たな枝を裏から伸ばし、葉とつなげちまうんだ』
「ほへー」
『そうやって、湖や雪の地面の反射による日光を取りいれるらしい。普通の木は上へばかり葉を伸ばそうとするが、こいつは側面の光を拾いあげるんだ。ただ、それゆえに、育っちまうと幹の中に葉の残骸が入りこんでくるんで、若いうちに切らないと使えない』
なんと。
聞いたことない性質の木だな。
だから間伐なしの密集した森でありながら、背丈も幹の太さもあるのだろうか。
『服を着るみたいに見えるから「装いのっぽ」ってあだ名がある。それだけじゃないぞ。冬に近づくと、ぱき、って音が頭上から聞こえる。枝を折ってる時の音だ。それで、何も知らない獣や鳥がたまに落ちてくる。だから、「リス落とし」の名も』
「へえー……」
森は、道が見つからないので、人の身だと歩き回れる気はしない。が、今の私は人ではない。
あたりは見た事のない花もある。青くて、花びらの形は丸っこい。
きのこもある。カサは白くて、赤い斑点がある。
(プラスチックごみは無い)
あれは気分の悪いものだが、まさしく人の文明に近いという証拠ではある。『私が知っている』人の文明の、だ。
本当に、この地は……。
いや。『世界』は……。
天国ではなくて、そう、なのか。
『ここは、この世界では、旧・人魔境界という場所だ』
「……面妖なネーミングですね?」
『まわり360度、ぜんぶ『人領』、つまり人間とか獣人とかエルフとかの領土に囲まれている。地理上ではな。ただ、魔王領――つまり魔族たちのいる領土に通じている転移陣が、あるとされる』
「???」
――転移陣。
「転移ってのは、やっぱり、あの?」
『手っ取り早く言えば、ワープ……らしい』
「は、はあ……」
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