表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/43

ダイレクトメッセージ

気に入っていただけましたら、ページ上か下の「ブックマークに追加」や、ページ下部にて「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」とある「☆☆☆☆☆」のマークにて、評価をいただけると幸いです。

 私は彼と別れた。

 今になって、医療機器を武器にしたことが罪深い気がしてきた。こういうのって、人を助けるために使うものである。

 結局はセレネローザさんを助けるために使ったのだ……と自分を納得させた。

 ああ、業。

『ハマシマ・ヨシキ……』

 ハンマーがつぶやく。

『狡猾だぞ。彼女を欺いて殺したからには』

「必ず倒さないと」

 私は考えた。というのも、このままこの道を行くことについて、である。

 問題の敵、ハマシマ・ヨシキとすれ違いになったり、しないか?

 見たところ、道は今進んでいるここ、一本だ。

 日本、特に都市部にいると、そのような感覚がどのくらいあるかわからないが――森の道とは、外れて抜けられるようなものではない。整備された道を外れるのは自殺行為だ。こういう場所には、木の根もあるし岩も斜面もある。しかも野生動物のなわばりに入りかねない。自然にできた獣道など、道に含めてはいけない。

 このまま行くと、必ずぶつかるだろう。

「この先の土地はどうなってるの?」

『ひらけた土地がある。すぐ着く。あれだ』

 小高い丘があった。

 高くなるにつれて、草も木もだんだんと姿を消していく、痩せた荒れ地がぽっこりと高いところにある。

 ――瘴気、というべき空気を感じる。

 といっても、嗅覚上でなにかにおいを感じるわけじゃない。

 喩えるなら、高濃度の二酸化炭素のよう――普通なら身の回りにあるし、吸っては吐いている。けれども、濃くなったならば無臭の劇毒と化す。

 しかし今回のこれは、この土地の多めの降雨や風でも、なお消えない。

 登るにつれて、それはだんだんと濃くなってくる。

 なんとなく、その瘴気こそが、このあたりを枯らした原因なのではないかと思った。

 きっと、そうなのだ。

 これに関しては感覚でわかる。カテゴリとしては魔物だったものね、私。そういうものを感じ取る感覚器はあるんだろうか。

 身体の中では、とくに翼が、それらを感じ取っているようである。

 なんか禍々しい空気、毒のありそうな空気、って感じか? 空気中の性質として、上へ上がる性質があるんだろう。翼、つまり風を受ける部分に感覚があるのは、ある意味、理にかなっている。

 私は、丘の頂上に立った。

「こっちから、誘ってやる。とっとと終わらせよう」

 家が待っているのだ。

 仕事は、定時で帰るべし。

「やっぱ決闘なら、これを建てるべきだよね」

 私は、ハンマーを構えた。

 うちの会社は、ローマ帝国とその軍団にあやかって社名を付けたという。

 私でも知っている歴史上の大帝国だ。

 今でも残る偉大な建築物を多く建て、西洋文明にあまりに大きな影響をおよぼした、ある種の母胎。その兵士らは、平時には工兵として建設にも励んだ。戦では防備を築きあげ、橋も建てて川を渡り、進軍した。

 彼らの帝国には、ある決闘場があった。

「――導きの星は私だ!」

 大地を打ちつけた。

 稲光の輝きがほとばしる。

「だから来い、私の敵!」

 土が盛り上がり、古い地層から岩塊が削りだされる。

 形を整え、地響きを立てて浮上する。

 そして、それは建った。

 建った当時、西暦80年の姿ではなく現代の姿で、そこにある。

 途中までが袈裟斬りにされたような外観の全体をしている、三階層に及ぶアーチの巨大な連続。

 時を経て削られた岩の、荒く削れた表面を晒している。

 フラウィウス円形闘技場――

 ――またの名を、コロッセオ。

 剣闘士試合で数多くの戦士と猛獣が戦って死に、そしてたくさんの市民がそれを見た。

 血なまぐさい歴史があった場所だ。

 一階層めのアーチはドーリア式という、ギリシャ建築由来のシンプルな柱をしている。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます! この下部にある「☆☆☆☆☆」のマークにて、評価をいただけると幸いです。

SNS、Discord等での共有もしていただけると、助けとなります。


ある意味転生者同士でのみ通じるメタ表現

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ