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セレネローザ・ライルハイト その1

 大広間に入ったとき、すでに庭へのカーテンが締めきられていた。外から侵入される構造ではなかったはずだが、念のためか。

 みんなが集まっていた。

 私が飛び出したときに異常を察したようで、用意があった。それぞれが布や、古めの救急箱を持っていた。ある者の持つ手鍋には熱湯が湯気を立てている。

 メイドの数名が、か細い悲鳴を上げた。――予想はできていても、ということだろうか。

「手当てをっ!」

 私は呼んだ。

 が、その時には、もう彼ら彼女らは床に布を敷き終え、セレネローザさんの手当てに入りつつあった。

 私は彼女を横たえる。

「主人、あなたのケガは」

「私にはないはず」

 正直、自分のことには構っていられない。

 私は外へと出ていきたい。

 セレネローザさんが傷つけられたことは――

(そう。許せない)

 敵を、痛めつけてやりたかった。

 私のこれは、紛れもなく、邪悪な気持ちのひとつだと思う。

 ダブルスタンダード。

 究極論の話になるけれど――セレネローザさんが傷つけられて、敵を傷つけたい気持ちさえ、本当なら止めなければいけない。

 止められそうもない。

 正しくなんていられるか。

 私が善良か邪悪かなど、みじんも興味がない。そんなもの、他人からの評価にすぎない。

「がっ……はっ!」

「セレネローザさん!」

『身体は持ち直しそうなのか』

「っ……」

 もう一度、メイドのよってたかって手当てをする彼女を見たが、傷は塞がっている。だから、メイドのうち包帯をぐるぐる巻いている者には仕事があったが、それ以外はやや手持ち無沙汰ぎみだ……。

 結局のところ、なぜ、復活した……?

(わからない。……。けど、……)

 これって……。

 まさか。

 ――『神秘の材料』が、彼女に適応された?

 筋肉、骨、血液。……そうしたものを生成した?

(っ!)

 私は立ちつくす。

 たぶん今、脳みそがくるくる回って、この事態の答えを出そうとしていている。

 脳。

 言うまでもなく――電気信号を伝えることで、身体全体を動かす臓器だ。

 肉体。

 それは確かに「電力を要求する」の条件は満たしている――ってこと?

 ――『神秘の材料』が肉体に適応されるって?

(まさか。そんな?)

 ……。いや、起こった現象の理解は、それだけで済むものじゃない。

 死した命ってのは、本来、肉体を物理的に治療したところで、戻らないものなんじゃないか……?

 ――まさか――

 命、そのものさえも?

 私はその可能性に凍りついた。

 正直なところ、想像を超えている。

『銃を生産したおおもとは、傭兵国家ゼテア=ヌン』

 ハンマーの声がした。

『倒した兵士から銃を奪っただけの魔王軍には、弾薬はロクにない。あの落としておいたハンドガンや遺体の銃創から、魔王軍とサピア王国の間の火種をごねて作りあげるつもりだったのだろう。だがこのセレネローザが――まさか――復活した時点で、奴らの計画は失敗だ。……こんなもの、予想できるはずがない』

「……。ちょっと考えてたことから急にそれたんで、今、追いついていくための頭が動かない。ちょっと待って。……。……私に罪を着せるっていう、アレね。戦争屋さんって迷惑だわー」

 興味はない。

「どのみちぶっ叩く」

 怒りはある。

「やられたら、やり返す。全部吐かせる」

「扉が外から叩かれています!」

 ネコ獣人執事が駆けてきた。

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