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レベルアップという概念

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 自分は考えごとをする時には散歩をするが、考えたくない時にも散歩をする。

 どっちみち散歩からは逃れられないのである。

 私はひとまずラウンジに出てきた。

 床は磨きあげられており、ドラゴンの足だとやはりかちかち鳴るので、絨毯を選んで歩くことにする。

 いくつか、ソファーが柱のまわりに増えている。ネコメイドたちが運んだのだろう。建築物を建てた時についてくる付属品としてはもっともありそうな家具で、今まで出てこなかったのがフシギだ。今までは彼女たちが手入れでもしていたのかもしれない。

 そのソファーのひとつに、昨日の女騎士さんがやってきて、そっと腰かけたのを見た。

「なんなんだ、この場所は……」

 などと呟いている。

 こっちには気づいているようだが、警戒のそぶりはなかった。

 私は近づいていって、挨拶をする。

「施設はどうでしょうか。ご不便などございませんか」

「なにもない。快適すぎるくらいだ。これからお風呂に入るようにメイドがすすめてきたよ」

 はああ、と彼女はため息をついた。

「私は、セレネローザという。紹介しそびれたな。……なぜここまでする? ……歴史が、とか、経験値をためてのレベルアップが、とか説明していた。執事の言葉だ」

「……私の家になったから、ですかね。ここが」

 たぶん、私が転生者なことくらいはこの人も気づいているだろう。

「最初は来たばっかりの勢いで、家を建てようとしたらこの城が建ったんです……家ってものは来客がいらしたら、楽しんでもらうものです。レベルアップっていうのは興味こそありますが、あくまでそれは興味止まりというか……」

「ふむ」

 彼女は少し考えこんだ。

「実際のところ、この土地は国境という立地からして、王国は使いそこねていた。所有それ自体の文句はあるまい」

「申し訳ございません」

「見た目には、あなたは魔物。ライトニングドラゴンだ。国に危険視されないようになるには時間がかかると思う。しばらく人前に出るのは避ければいい。その上で、先んじて、魔王軍に対する緩衝地帯――防衛力となる約束などを申し出るんだ。そうすれば、平和に生きていくことはできるだろう」

 ……。

 この人、私を信用してくれている。

 私のこれからを、考えてくれている。

「結局、レベルアップとはなんなのか、わかるのか?」

「まだやったことはないのですが、この城の敷地が拡大するみたいです」

「むむ」

 まだ敷地を拡大する必要を感じていない。

 いずれは必要になるのだろうか。

「どうも、レベルまわりのシステムは『来客をもてなして売り上げをもらおう』っていう、めが……誰かの意思を感じます。レベルアップのために必要な数字は、お客さまからの売り上げの他には防衛経験……その二つを必要としています」

「ふむ。……しすてむ……」

 今朝、女神さまによって『スパ施設とホテル施設を建てろ』とも説明があった。

 だけどやっぱり、もてなす理由なんて、最終的には私の気持ちである。

 私の家に来た人はくつろいで、楽しんで、英気を養ってほしい。

 そうして充電満タン、さあがんばるぞ、ってなって、日々を頑張って欲しい。

 充電――。

 そう、充電だ。

「防衛経験……そうか。ここは城だな」

「きっと、建物としての経験というものが、あるのかと」

「レベルアップとは、王国が知りたがっている概念だ」

「え……? すでに、私以外にも概念を持ちこんだ人がいるんですか? レベルアップって」

「そうだ」

 転生者が複数いるのは、すでにわかっている。

 でも、なぜ、国が出てくる?

「隣国にちょっと、な。レベルアップの概念を持ちあげる奴らがいるんだ……まあ言葉だけなら、伝播するのは珍しくない」

「それは、どういった国のどういう人たちですか」

「傭兵国家ゼテア=ヌン。単刃踏破流という片手剣の戦闘流派を持ち、銃という武器を使う者がいる。彼らは――『レベルアップ』を信仰する」

「銃!? ……それに、信仰?」

「らしい……銃はおそらく誰かが作ったのだろう。精密な金属の加工を要するが、火薬の原理などを知れば作れなくもない。だが明らかに製品としての質が高いものがあるのだ」

 んー。

 日本でも鉄砲の活躍は、たとえば、1575年、長篠の戦いである。戦国時代だ。織田信長の京都入りが1568年なので安土桃山時代に含める場合もある(ともに私の学んだ時の教科書に準拠していますと注をつけたい)

 たぶんそういう「火縄銃」と現代銃の違い、とかかな。

「そして『レベルアップ』は近年、『鉄人教』という国教に持ちこまれた――『汝、鍛錬せよ』」

「あ。なるほど。そういう教えになるんですね……」

 私は納得しつつも、ちょっと心の中ではヒヤッとしていた。

「要は――殺しの正当化だ」

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