表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/43

おかね 第二章

「またATMに電気を流してみたいのだけど」

「う、うむ。やってみろ」

 私は準備運動をはじめた。

 背筋を伸ばし伸びの運動。

 腕を振って足を曲げ、腕を回し、胸そらし……。屈伸、腕立て、スクワットをする。

 そして、

『なあもうよくないか? それ要る? 角でこつんとするだけだろ』

「なんでも楽にやろうとするクセがつきそうだから」

 さて。

 私は姿勢を整え、ATMにツノで触れる。

 私とATMは光に包まれた。

「充電! ――金をくださああああああい!」

 十分ほど経過。

(あっ、なんか体力持ってかれるやっぱり……)

 あるだけの電気を、ATMに流してみた私は――

 地に這いつくばって、ゼエハアゼエハア息をつくことになった。

『あの、大丈夫か……?』

「壮絶な死のイメージキャラクター、壮絶死くんになりそう」

『意味を伝える事を放棄してるよね?』

「頭がまわらない」

 壮絶死くん。

 3歳。

 二頭身の背丈をして、ふわふわの体毛に包まれ、目がぱっちりしたキャラクター。

 無辜の市民に、壮絶な死を遂げさせる。

「グオオオオオ」

 私は倒れた。

 もう電力が出なかった。

 ツノが、倒れた拍子に再びATMに当たったが、もう電気は起こらなかった。

「やっぱり有限だ」

『金はどうなった?』

「立って調べることすらできねえ……」

 私は、台風が近づいた涼しい夕方に、いつもいつもぐったりとして何もできないのを思いだした。

 ああいう感じ。

 あるいは全身筋肉痛で迎える朝?

「か、カネ。カネは? できてる?」

 なんとか這い上がる。

「カネエエエエエ゛~~~」

 ATMには、本来ならお札が出てくるところがあるが、ここだと小銭のみが出てくるようになっている。小さなハコ状のコイン受け皿である。

 そこでは、なにか、ドロドロな銀色の塊がぐつぐつ煮えていた。

 金貨がぽつぽつ沈んで見えている。

 は?

 え? なにこれ。

 まさかこれっ。

「ギャアアアアアアア!! 溶けてるのおおおおおおお!?」

『わあ……そうなるのかあー?』

「いやああああああああッッ!!」

 ここの金属は、向こうとは違う。

 考えてみれば、そう。

 銀だからといって、向こうの銀と同じとは限らない。とか?

 電気で溶ける性質があるらしい。

「カネエエエエエエ!!」

 私は平静を欠いて、そこに腕を突っこんだ。

 あちい! でも耐えられなくはない!

 身体のおかげ!

 なんとか金貨を4枚5枚取り出した。

「銀は完全に溶けるけど、この金貨は大丈夫!」

『ってことは、ふたたび電気を流せば銀の汚れは綺麗にできる?』

「毎回やってられないなあ! こんな面倒なこと!」

 ATMに電気を流して金を稼ぐのは、なしだ。

 とはいえ作れなくはない、ということは覚えておくべきか?

 ……やりたくねえ……。

「苦労の果実が、これかー」

 よく見てみると、取り出した金貨も、バリバリバチバチと放電している。

「簡単な灯りとして使えそう。ほら明るくなったろう」

『金を金として使う発想ではないのだな……』

「はひー」

 私はぐったりと倒れた。

 そのままゴロゴロと転がって、メイドのネコが敷してくれたおふとんに、イン。

 限界です。

 寝ます。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます! この下部にある「☆☆☆☆☆」のマークにて、評価をいただけると幸いです。

SNS、Discord等での共有もしていただけると、助けとなります。


特殊能力の悪い活用のやりかたを考える場面っていいよね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ