置き手紙
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鳥のさえずりが聞こえた。
――ちゅんちゅん――。
朝の光が窓から差しこんでいる。
眠っていたらしい。
……この私が、朝まで?
目をぱちぱち開いたり閉じたりした。
「任務っ?」
がばあっ!
私は跳ね起きた。
分厚い布にくるまれていた――朝の冷えた空気が布のあいだに流れこんでくる。
「さむっ……?」
私は、鎧を着ていない。
あの「バスローブ」なる服を着ているようだった。
(寝ている間に、着替えさせられた?)
頬にも、違和感がある。
毒矢を受けたところだ。が、手当されている。
ややしびれる感触はあったが、ほぼ回復している。
(賊の毒なんてたいてい粗悪かニセだが。……手当の質がいいのか? わからん)
毒物はほぼ王国が薬師に認定を与え、軍で買っている。そこからあぶれる薬師は大抵ろくでもない。
私はあたりを見回した。
傍らの、円形をした小さな卓に、手紙があった。
「……」
信じられない。
眠っていたのに、殺されなかった。
手紙を手にとってみる。
ぐにゃぐにゃとのたうつような字で、読めなかった。
ヒラ・ガナ?
いやしかし、崩れすぎだ。
「ええ~……」
あのハマシマ・ヨシキの使う文字――「カンジ」が混じっているように見える……。
「転生者が書いた、か……?」
特徴は他にもある。……筆圧が強かったのか、紙の途中にはペン先で開いた穴がある、とか。
身体に不慣れな転生者の特徴だ。
だが、それも、筋力が高いとか、そういう類の転生者の話なわけで……。
(戦闘能力として役立ちそうだが、宿のまねごとに関わっているのか?)
……物好き?
そんな転生者が、この城のどこかにいるのか……?
広間で出会ったあの中の、誰かかもしれない。
誰か?
真っ先に疑うべきは――。
(言動でも行動でも、あのドラゴンだ)
やたらフレンドリーなのもつじつまが合う。
が、そもそもドラゴンに転生したという前例がない。
いや、ひょっとしたら国が把握していないだけで、本当は、今までにもいたのか……?
(むう)
この手紙……。
どうしようか。
(持ち帰れば、なにかの情報がわかるかもしれない。……だが)
私は、悩んだ。
(害意がない者たちの情報を、国に渡すのか?)
――「PS,おふとん・アンド・もうふ・イズ・これ」――
と書いてある内容は、私には意味として理解ができない。
なんか、文末からは矢印が伸びていて、紙の外を指している。
なに?
なんなの?
「……。鎧は。剣は。どこに」
傍らを見ると窓の横に揃っていた。
ご丁寧に返却されている。
「……普通なら、奪う……」
信じられない。
――彼らは敵ではない。
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