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内部探索 その3

「なんか動いたよね? いま」

『わからん』

 私は、恐る恐る川の方にとって返していった。

 向こう、中庭の中心にはチャペルがあった(結婚式をあげられそうなところ)が、その電気が消えた。

 電力切れか?

 私のあの方法+雷の直撃で、そこまで多くの電力を蓄えられただろうかっていうと、疑問だし。

(大丈夫。なんともない)

 城の大広間ラウンジに戻る。

 明るかった。

 ……あれ? 電気はまだあるってことだぞ……。

 と、またしても視界の隅で、なにかが動いた。

 がたあん。

 扉が音をたてた。そこに、何かが入っていったらしい。

「なにっなんなのっ」

『気圧されるなよ、ここはお前の城だ』

「怖いよ誰なのっ」

『聞いちゃいねえ』

 私はその扉を開こうとし――扉に「従業員以外立ち入り禁止」の文字があった。字体は昭和のような趣があった。

「日本におけるっ少し昔のホテルなのかなっこれ。ふんぐううううっ」

 扉を開ける。防火扉か、っていう重さだった。

 奥には、暗い廊下が続いていた。

 私はそこへ入っていく。

 闇の中だった――私の入ってきた頭上にある、夜間におなじみ「非常口」の緑の光が、ここでは唯一の光源だ。

 扉がまたひとつあったが、鍵がかかっている。その向こうに地下への階段があった。

 そっちに行ってみる。……すると。

 かんこんかんこん。

 階段をなにかが降りていく音が聞こえてきた。

「……!!」

『……何者だろうか』

 私は息を殺し、階段をそうっと降りていった。

 地下の一階へ。

 その階の廊下へ出るまでの間、扉が閉じる音がした。

 もう、誰かがいるのは間違いない。

 廊下はぶつぶつっ、と、光がまたたいていた。

 上では、明かりは問題なくついていたから、ここではたぶん単純に――電灯の劣化だろう。

(誘ってたり、しないよね……)

 複数の扉がある。

 目の前には「従業員休憩室」。

 どこだ? どこに何がいるっていうのだろう?

「くっ……くそっ」

 私は目の前の扉を開いた。

「出るならっ、出てこおいっ!」

 小さな部屋だった。

 またしてもほのかな光の中に――

 ――黒猫がいた。

「にゃ?」

「……」

「にゃあーん」

「あ、えっ、猫?」

「にゃーん」

 猫はなにか答えるように返事をしてくれた。

 ……。

 かわいい。

「にゃー」

「……。ウヒョオオオオーー、よーちよちよち」

「にゃ」

「かわうぃいいいいっ↑ねええええええ↑→↓←↑→↓←~~~んっっ」

『なに? その反応』

「ネコちゃあああん♡ にゃっ♡ にゃーん♡」

「にゃっ」

「にゃあああああん♡」

 電気が急についた。

 部屋の中には、たくさんの人がいた。

「ニャ♡ にゃあっ♡ ……。……。……」

『……』

 あれ?

 えっ、人?

 おっ? おっおっ?

 ちょっと待って?

 ニャーン?

「「「「「マスター」」」」」

「えっ?」

「「「「「命令の セットアップを 完了させてください」」」」」

 いっせいに、それらが喋った。

 ~~~~~~!?!?

 !?!? おぎょおおおおおおお!?

 はァっ!??!

 なんすかこれ!?

「ニャッッニャーーーーーーーーーーーーーーッッ!?!?!」

 私は悲鳴をあげてしまった。

 彼ら彼女らをよく見ると、男性もいるし女性も、いろいろな人がいる……!

 男性はみなグレーのモーニング・コート。女性はメイド服。

 ……。あれ?

 見ると全員がネコ耳がついている。

 え!?

 なにこれ!? なにこれなにこれ!?!?

 ややや、やっぱりネコ!?

 どゆこと!?

「私どもは 汎用ネコ型配膳ロボット『ハウスキーパーズ』――あなたさまの電力供給により 再起動いたしました」

「あっえっおおおおおおんっ? いやでも……ネコじゃなくて人の形……あれ?」

「ありますよね ファミレスとかに ほらあれ」

「ああアレね」

 ここ異世界ですけど。

 って、そうか。ここは「向こう」の建築物だから……。

 その備品も一緒に、ついてくる?

「いや待て、向こうでは人の形をしてなかったし、受け答えとかはできないんじゃ……」

「この世界に 持ちこまれた結果 魔法生命体『ゴーレム』と 世界によって 誤認識された様子」

「あっ……ふーん」

「電力が切れると 元の……」

 ぽんっ、と音を立てて、ネコ耳メイドの一人が円筒状のかわいいネコロボットになった。

 両方の目が×マークになって表示されていて、

「充電してくださいニャー」

 と言いだす。

 ふっ、ふしぎー。

「ああっ6号」

「6号ーーーーーーいま寝るなニャーーーー主人の目の前だぞニャーーーーーー」

「私どもは 建物からの 自動給電です」

 中心の、黒猫が言う。

 ひえー、人の言葉だあ!

 おそらくはリーダー格っぽい。

「当建築物への 給電だけ お忘れなきように おねがいします」

「あっ……はい」

 ってことは。

「電池は『この城』そのものってことなのかな」

「いかにも」

 見ると、あの充電切れのネコロボットが、

「充電中です 電気をもぐもぐ」

 と言いだす。

 充電のための特定のスタンドなどに、誰かが動かした様子はない。

「私どもの業務は 雑用全般です。 たとえば――ベッドメイキング、お掃除、配膳、フロント受付、簡単な調理やインフラ面のメンテナンスまで」

「配膳ロボットの範囲は、余裕で超えてるのね……」

 私はハンマーを見た。

「君……すごいね」

 ぶるぶるぶるっ、と彼は震えた。

『違う違う違う!! 私は知らない! このような現象は知らない!!』

「またまたー謙遜しないで素直に受け取るべきだよ」

『違うううううう!』

 異世界建築チート。

 私って「クソすごい力」が絶対に似合わない女なのだが。

 というか、なんなら「またまたー、最強の力とかさ、どうせ巡り巡って最後には自分に牙を剥く展開とか、待ち受けてるんでしょー?」とか考えてしまうほうの人間……今はドラゴン……なのである。

 目の前で、ネコたちはおのおの勝手に動きはじめた。

「ベッドメイキングが、俺を呼んでいる」

「目に見えぬスミッコのホコリを、ぶちのめす」

「毛糸をコロコロ転がして、遊ぶぞお」

「じゅうたんの張りかえを、やるニャア」

 お、おう……。

 そうか……。

 できたら、廊下の点滅する電灯をどうにかしてほしいな……。お願いします。あれ怖い。

 彼らは扉から出ていった。

 私はひとり、残された。

「……」

『少なくとも、今は夜だ。お前は彼らとともに、この城に滞在する必要がある――ここは家なのだ』

「巣?」

『どちらでもいい』

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仮に書籍化をすることになったら商標とかないか心配な場面

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