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追放令嬢の叛逆譚〜魔王の力をこの手に〜  作者: ノウミ
第一章 灰姫と魔王
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episode.2.5 ディンズ家

こんにちは、ノウミです。


たくさんの小説や素晴らしい作品がある中で、私の作品を手に取っていただきありがとうございます。

これまでに多くの作品を発表してきましたが、皆様に楽しんでいただけるよう、これからも様々な物語をお届けしていきます。


皆様に「読んでよかった」と感じていただけるよう、

一層精進してまいります。


どうぞ、これからもご期待ください。

私の名はルーゼン・オーエンス。このオーエンス家に嫁いできてはや十数年。私と血の繋がったソフィアに、オウル・オーエンスが連れていた忌々しい灰かぶり(エレナ)、母親はおろか出自すらも明かされずその見た目から悍ましさすら覚える。


一度家から追い出そうとしたが、我が子可愛らしさにオウルが何度も何度も阻止しようと動き回り思い通りにいかなかった、私の実家より位の劣る分際で灰かぶりにも似て生意気に。


「それが今度の夜会で変わるかもしれないわね」


オーエンス家から選ばれるとすれば私の可愛い可愛いソフィアでしょう、あんな見た目の灰かぶりが選ばれるはずもないのだから。


そんな事を考え自室で思案を広げていると扉のノックする音が聞こえる、部屋にいたメイドに扉を開けさせると珍しい二人が断りもなく部屋の中に入ってきた。


「これはこれはお母様、お兄様。急な来訪ですわね?」

「ふふふっ、ルー()に会いに来たのに急もあれへんやろ」

「可愛い妹がこんな家で辛い思いをしていないか心配で心配で、お兄ちゃんはたまらないよまったく」

「そう言うなザンラ。あれでも武功を上げて成り上がってきてんから、嘘でも褒めるぐらいはしたりな」


入ってきた二人は私の母と兄。母の方は【グレア】といい何代にも渡ってこの国を支え、商いで今の地位を築き上げてきた。鋭く相手を値踏みするかのような目線と頭の回転に畏怖の念を抱かせる者も少なく、私自身も娘ながらその内の一人である。


兄の方も母に見た目がそっくりで名は【ザンラ】と言い、良くも悪くも母の全てを受け継いだ次期当主。掴みどころのない飄々とした態度は昔から変わらない。


この二人が足を運ぶ事は余程の事なのでしょう、二人を目の当たりにした瞬間から頭を回転させ緊張の糸を張り詰めさせ、悟られないようにと軽い抱擁を交わし私は二人を部屋のソファに案内し対面に座る。


「それでお母様、お兄様。何用ですか?」

「全くお前は、急に本題て‥‥少しは親子の会話をしようとならへんのかいな」

「"時は金なり"、お母様の教えですわよ?」

「それもそうやなぁ……本題、お前に用件があったのは王子殿下の次期王妃選定についてや」


その言葉に部屋の空気が冷たくなったように感じる、私ですら先ほど聞かされた話を何故この二人が知っているのか。疑問に思わなくはないがそれを成し得るだけの力を持っているのは間違いない、この国中にお母様の耳と目が張り巡らされていると幼い頃に教え込まれていたのだから。


私はこの言葉と訪問の意味を必死に考え、この先の会話の展開を予想し組み立てていく。焦りを見せた瞬間に喰われる、何度も味わってきた緊張感に再び身を沈めながら。


「さすがお母様、お耳が早いですね」

「我が【ディンズ家】にかかれば当たり前の事や‥‥ルーのやるべき事は分かってるよな?」

「えぇ、勿論ですわ。ソフィアを王妃に仕立て上げる、そうして………「分かっとるならええわ、変わらずうちのもんは何でも使ったらええ、やるからには徹底的にやりや」


お母様からは女性だからと相手に舐められないような話し方や、空気作りを幼少の頃から叩き込まれていた。それが今、鋭い刃のように私に向けられている。


「かわいい妹の為や、お兄ちゃんにも頼ってや〜」


そうして少しの沈黙が流れる。徹底的にと言われ二人からの協力もある以上失敗は許されない、様々な考えを巡らせながら固く開かない口を無理やりにでも開く。


「も、勿論です。ただ‥‥一点気がかりが」

「なんや、言うてみい」


その瞬間に、冷たい言葉が私に突き刺さる。私は呑まれないように堪えながら言葉を絞り出す。


「…オウルがエレナを推そうとしている事です」

「……ちっ、相変わらずやな」

「今回の夜会自体もオウルの功績を称えるものらしく。そのの口添えは正直、影響力も大きいかと」

「せやな……」

「王とオウルがどのような言葉を交わしたかは、こちらに入ってきていないので」

「はぁーっ、悔しいがそれはうちも同じや」


ソファに大きく仰け反りながらお母様は言葉を吐く、事あるごとにオウルが私たちの邪魔をしている事は否めずそれを抑えるために私は嫁がされたのだが現状として、効果は薄いように思える。


「それもあってか、今回はエレナの同行を許さざるを得ないかと」

「ははっ、なるほどね〜」


エレナ一人であれば気にする必要はないがオウルが後押しをするとなれば話は別、何故か王に気に入られているオウルからの口添えがあれば万が一の事も有り得る。私としても、この一件において万全を期して挑みたく不安の根は摘んでおきたい。


「しゃーないうちに任せとき、ええ案があるわ」

「と言いますと?」


お母様が一呼吸置いて話し始める。


「その夜会、王太子殿下を襲う」

「なっ!?()()()()()()()()()


私は慌ててその場から立ち上がる、実家から離れたとはいえその思惑が無茶なものだと理解できるからだ。掴んでいる情報でも、まだその時期ではないと。


「慌てるなルー、そういった噂をオウルの周りに流すだけや。実際に襲うわけやない」

「それに何の意味が?」

「オウルをエレナから引きはがせるやろ、噂が流れれば周辺警備なんやに駆り出されるやろうからエレナが孤立するようになる」


その言葉に私も同調する、それならばこちらの被害も被ることなくオウルを会場から追い出すことが出来るようになり、私もソフィアのアピールに集中する事が出来る。それでも真実味のある噂でなければ意味が無いと思うがそこは上手い算段があるのでしょう、この顔を見ればそう思わざるを得ない。


「手筈はこちらに任せといて、ルーは後頼んだで?」


その視線が私の心臓を握り掴んでくる、成功の二文字しか考えさせないようにと。それでもただ言われるだけの駒に成り下がるつもりはない、私にも野望はある。それまでこの状況は、精一杯利用させてもらいましょうか。


そうして夜会に向けての確認と摺合せは終わりを告げる、お母様は今回の夜会を足がかりとして計画を大きく進める予定らしくその為にここまで足を運んだと。


「あれ、そういえばお兄様は本日何用で」


と、問うた瞬間に部屋の扉が勢いよく音をたてながら開かれソフィア()がその勢いのまま部屋の中に入ってきた。お母様もお兄様も姿を見るなり嬉しかったのか同じく勢いよく立ち、強く抱きしめていた。


「お祖母様様、伯父様お久しぶりです!」

「久しぶりやなぁソフィア、相変わらず可愛いの」

「ソフィア、元気にしてたかい?」

「はいっ!!」


そこからは先ほどまでと違った気の抜けた空気が部屋を包んでいた、ソフィアも王太子殿下の妃に選ばれたいと懇願しており二人も頷きながら助言をしていた。そうして息抜きに庭でお茶でも飲みに行く事になり、ソフィアがお母様を連れて行くように部屋から出ていき、私はお兄様に話があると言われ部屋に残った。


「ふふっ、相変わらずだねソフィアは」

「えぇ、あの容姿はしっかりと私の血を受け継いでいる証ね。頭の方はちょっとあれですけど」

「それでも問題ないのだろう?」

「勿論ですわ、()()()()()()()()()()()()ですが」

「構わないよ、可愛い妹と姪の為だからね」

「あら、お母様の計画の一端ではなくて?」


そう、お兄様はこの国で魔法技術局に努めており日々新たなる魔法の開発と改良を行っている、その一端で創り出された新型の魔法を私たちのために使ってくれている。誰にも気づかれぬように。


「それもあるけど、僕は魔法の実験ができればそれが一番だからね」

「まぁ、そのおかげでこの屋敷にいる人間は全て、私とソフィアの傀儡となっているのですけれども」

「悔しい事に、一部の人間を除くけどね」


そういいながらお兄様は親指を噛んでいた、余程自身の魔法が強くしていない事が悔しいのだろう。魔法で私とソフィアの身近な人間は、私たちの言動を疑う事が無いように仕向けられているが、オウルとその執事、そして憎たらしいエレナの三人だけは何故かお兄様の魔法が介入されていない、原因を探ってくれてはいるが現状は不明らしい。


それでもオウルとその執事は屋敷に滞在できないように計らえている、エレナ一人だけだと気にする必要もないので私にとっては何の問題もない。


「そういえば、また弱まってるみたいだからついでに魔法を張り直しておいたよ」

「ありがとうございます」


そうして互いに笑みを浮かべながら私は立ち上がる。ソフィアの元へと向かおうと、私が部屋の扉に手をかけるとお兄様が後ろから軽く肩に手を置き耳元で囁いてきた。


「僕は母より妹のほうが大事だよ、何かあれば相談するといい」


今まで感じたことのない少し君の悪さも覚えそうな口調と声を置いていき、それだけを伝えるとお兄様は部屋を出ていった。


私は出ていく兄の背中を見ながら一人部屋に残り思案を巡らせる、お母様ではなく私の計画がバレてしまっているのではないかと。先の言葉をそのまま飲み込むのであれば取り敢えず味方になってくれるという事だが、果たして信じていいものか。


それよりもまず、目の前の目的としてはソフィアを王妃の座に収める事で、その後に王太子殿下がこの屋敷に足を踏み入れるように誘い込めばお兄様の魔法でどうとにでも出来るようになる。そうすればお母様の計画である、この国をその手に収めるこ事に大手をかけれるだろう。ただ、私はそんな事に興味はない。


「お母様、精々私のためにも頑張ってくださいませ」

ご完読、誠にありがとうございます。


視点が変わってお継母様のルーゼン・オーエンスの話でした、こちらもまた内に秘めた想いや計画などが今後の物語にどう影響を及ぼすのか、楽しみにしていてください!


ぜひ次回もお楽しみに。これからも応援よろしくお願いいたします。また次話でお会いしましょう(*´∇`*)

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