episode.12 父の抱えていた想い
こんにちは、ノウミです。
たくさんの小説や素晴らしい作品がある中で、私の作品を手に取っていただきありがとうございます。
これまでに多くの作品を発表してきましたが、皆様に楽しんでいただけるよう、これからも様々な物語をお届けしていきます。
皆様に「読んでよかった」と感じていただけるよう、
一層精進してまいります。
どうぞ、これからもご期待ください。
伝わる緊張感と述べられたお父様から真実の言葉、私が考えていたよりも辛く大きな思惑が絡んでいた。
「いいかエレナ、この屋敷の人間がお前に敵意を向けてくるのはとある人物の魔法によるものだ」
「そんな事を信じろと?」
「信じる信じないはお前次第、ただ私から伝えれる事は伝えておきたい」
「……いいでしょう、座って聞きましょうか」
「すまないがそんな時間は残されていない、エレナにはこの後行ってほしい場所がある」
「ちょ、ちょっと待ってください。ただでさえ混乱しているのに、ゆっくりと話す時間もなければ私をさらにどこかへ連れて行こうと?」
「今は私に付いてきてくれ」
そうして黒いフードの付いたマントをアリサから渡され、反論する余地もなくそれを身に纏う。慌ただしくも三人で慎重に部屋を出て二人に挟まれながら私達は歩き出していく。そうして部屋を出て廊下を歩いていき、見慣れた玄関から外にようとする。
「おや旦那様、こんな時間にお出かけですか?」
後ろから屋敷の掃除係に声をかけられた、私は心臓の音が五月蝿いぐらいに高鳴り始める。フードを深く被り静かにお父様とアリサの背に隠れる、薄暗かったおかげでこちらには気づいていないと思いたい。
「済まない、王太子に至急の案件で呼ばれていてな。帰りは遅くなるだろう」
「さようでございましたか、それではお気をつけて行ってらっしゃいませ」
「あれ、旦那様?」
「なんだ」
そう呼び止められ一層緊張感が高まる、私は息を殺し影のように気配を溶け込ませる感覚になった。
「いえ、何でもありません。一瞬変な人影が見えたのですが、気の所為でした。呼び止めてすみません」
「構わんよ、仕事お疲れ様」
「ありがとうございます」
掃除係が仕事に戻っていくのを確認し、静かに息を吐きながら私は、ほっと胸を撫で下ろす。「安心してください、私の魔極の一つですから」側に寄りながらアリサが私に耳打ちをしてきた、私は他の人の魔極を見た事が無かったので驚いていた。
詳しく聞いてみたいが、そんな暇も無さそうで引き続き玄関から外に向かって歩いていく(そういえば先生も魔極を見せてくれなかったわ)。そういうものだと思っていたが、授業の一環として見せてくれても良かった気が。
しばらくすると予め用意していたであろう馬車が待機していた、御者にはセブンスが座っており彼もまた一連の流れに関わっているのだろう。
「さぁ、乗ってくれ」
「はい」
どこへ向かうのかはまだ聞かされていない、馬車の中に乗り込むとお父様はセブンスに声をかけ走らせた。馬車の中には私とお父様にアリサが入り込んでいた、時間はないがここなら話を続けれるとの事で、私はフードをめくりお父様と向き合う。
「それでお父様、魔法とは一体。誰が何のために?」
「あぁ、話を続けよう。先ずは私のこの国において防衛の要を担っていることは知っているな?」
「えぇ、その甲斐もあって先日の夜会が開かれたと」
「それもあって伯爵でありながら国内でもそれなりの力と人間関係を構築している。王家とのつながりもその一つだ」
それでリュシアン様が〝この屋敷は心安らげる場所〟と言っていたのね。防衛の要を任される実力に、王家からの信頼ともくれば私達の家がどれ程のものなのかは想像に難くない。
「その裏でこの国への反逆を企てる者達を探し出し、王への報告と処理をする事も任されていた。このオーエンス家は代々そういった一族だった」
そんな仕事をしているとは全く知らなかった、嘘を並べている可能性もあるがそれにしては内容に違和感を感じられない。
その証拠に、屋敷にほとんど居なかったのはそれだけの仕事をこなしていたからなのだろう。
「そこを狙い、近づいてきたのがディンズ家だ」
「えっ、お継母様がですか」
「私を下せばこの国を思い通りに出来ると企んでいたのだろう。私は王より監視と楔を討つ命を受け婚約を結び、子を成す事でディンズ家の思惑に近づこうとしたが尻尾を掴む事すら出来なかった」
「そんな事があったんですか」
「そんな中、ソフィアが産まれてから不穏な影は大きくなり始めた」
ソフィアが産まれてから私も感じてた違和感だった、急に屋敷の者たちは私への扱いが変わり、それは時間が経つにつれて加速していた。
あまりにも理不尽で、納得のいかない環境に身を置かれるほどに。思い返せば、いつもあの二人の言動に周囲が疑問もなく動かされていたようにも思える。
「その中心には知っている通りルーゼンがいた、魔法の痕跡を見つける事はできたがその正体と方法については未だ不明なままだった。ただ、私が確認できたのは人の精神操作に関するものだ」
「それは、身に覚えがあります」
「私も屋敷に居座りお前を守ってやりたかったが、長くいればその魔法に絡め取られると分かっていた。その証拠に、数人送り込んだ執事やメイドがいつのまにかルーゼンの言いなりになっていた」
「そうですよ、私も気味が悪かったです」
「あれ、アリサは無事だったの?」
「えぇ、魔法がかかっているかの確認をされた事がありましたのでフリは続けていましたが」
そういえば、夜会の後私の部屋に来ても無表情な日が続いていたのだけどそういった事が理由だったのね。
「そして今回、殿下の一件だ」
「リュシアン様も魔法の影響に?」
「あぁ、報告はしていたがなにせ精神に作用するような魔法は今までに開発された例がない。お前を守るために私に代わって側に居て確かめると言っていたが……」
「リュシアン様が………」
それを聞いて自分が情けなくなった、私の身近に起きていた事なのに気づかないどころか、リュシアン様の真意を誤解して勝手に裏切られたと思い込んでしまっていた。
今もまだ苦しみながら戦っているのだとしたら、早々に諦めてしまっていた私は本当に情けなく思える、次にお会いできる機会を頂けるのであれば、その時は一緒に戦いますと、そう伝えたい。
「初めのうちは抵抗出来ていたようだが、今回の一件でそれも危ないと感じ私は時間を、殿下は距離を開けたのだ」
「そんな……」
「そんな顔するな、私も殿下にはかなり怒られたよ。〝父親なのになぜ娘を守らないって〟」
そう言いながらお父様は下に俯き絞り出すような声で話していた、リュシアン様は本当の意味で私のことを心配し、私を守るために動いてくれていたのだ。
「情けない話だが、何度もお前を屋敷から遠ざける方法を考えたが私の目が届かない所で何か起きたらと……そんな事ばかりを考えると動けなくてな」
「それならそうと言ってくだされば」
「言えるわけないだろう、大事な娘をこんな事に巻き込みたくなかったし私の動きが感づかれると命の危険すらあったんだから」
「それでも……私は…」
「だから今回、婚約者を決める話が出た時やお前が選ばれた時は安心したよ」
私もあの屋敷からでれる安心感を感じていたが、それと同様に、お父様も私が選ばれる事を願っていたらしい。それでも家族なのだからと、一緒に巻き込んで欲しかったと思わずにはいられない、それほどまでに私は弱くないと言いたい。
「それでも結果的には巻き込んでしまったが、それも最悪の結果になろうとしている中で」
「私に下される罰、の事でしょうか」
「あぁ、ルーゼンはお前を亡き者とし、新たにソフィアを殿下の婚約者に据える予定だろう。当然だがそんな事はありえない、のだが正体不明の魔法がそれを可能にしているのもまた事実」
「それを阻止するためにこの馬車は?」
「あぁ、そうだ。殿下は寸前で踏みとどまったようなので今から王城に向かい殿下を交えて計画を練る。この後の顛末と、ルーゼン達に対してどうでるか」
「それも下手な動きをすれば逃げられて終わりに…」
「そうなればディンズ家の計画をさらに大きく許す事にもなりかねんだろうな」
「それを断ずる為の証拠もない中で、ですね」
お父様は小さく頷く。揺れる馬車の中で静かな時間だけが緩やかに流れた、まさか屋敷の中でそんな大事になっていたとは思わなかった。
以前にお継母様が声を荒げた時に変な空気の揺れを感じたが、あれが魔法を使った痕跡なのだろう。私にもその程度しか理解はできなく、お父様も打つ手がないなかで非情で巧妙な企みを進めていたのだと伺える。
「そういえば、あの度重なる襲撃は……。夜会の日、〝こんなはずじゃなかった〟と言っていたような」
「だろうな、おそらくディンズ家が裏で糸を引いているだろう」
「でもそれだけじゃ証拠には」
「ならないよ、揉み消されるだけだろう」
歯がゆい、あの時私が言葉の意味を問い詰めることが出来ていればこんな事にはならなかったのでは。悔しいが過去を嘆いていても仕方がない、これから向かう王城で未来の為の話をしていかなければ。
「そういえば、お父様は私がお嫌いではなく?」
「当たり前だろう。お前は私の大事な娘だ、国よりも世界中の何よりもお前を大切に想っている」
「そう……でしたんですか」
その言葉からは疑う感情はなかった、ここまで話してくれたのだから信じてもいいだろう。初めて胸の内を聞けた気がする、もっと早くに聞いていたかったと思わなくもないが、それはこれから話していけばいい。
沢山話せる時間はあるのだろうから、ゆっくりと。
「私も、お父様が大好きでした。ずっと」
「そうか、こんな父親らしい事を何一つしてやれなかった私の事をか………」
「えぇ、それは本当にそうですが」
「すまない、これから償わせてくれ」
「勿論です、その為のこの後ですから」
「あぁ、そうだな」
馬車の中は静かになったものの、先程とは違い優しい雰囲気に包まれていた。それを見ていたアリサは静かに微笑みながら私と目が合った。その顔には、全てを知っていたかのような穏やかさが感じられ、少しだけ恨めしく思える。
「そういえばお父様、本当のお母様につい……「旦那様、到着しました」
「分かったありがとう。エレナ、何か言ったか?」
「いえ、生きましょう」
ご完読、誠にありがとうございます。
さぁ、わだかまりも真実も解きほぐされました!
いよいよリュシアン王太子殿下との再会となります、ディンズ家と立ち向かうにはどうするのでしょうか!?
ぜひ次回もお楽しみに。これからも応援よろしくお願いいたします。また次話でお会いしましょう(*´∇`*)




