オレの幼馴染に告っただと?
推理というより頭の体操という感覚で楽しんでいただけると嬉しいです。
幼馴染の愛華はわけのわからん女に育っちまった。
中学受験くらいからたまに意味不明なこと言うようになって、中学高校別々だから普段はどうか知らんが、まあ、見た目は美人なんだよ。
だが最近は、言うことが全く理解不明。
オレが甲子園行きたいって野球ばっかしてるせいかな?
子どもの頃は勝気なくせに泣きべそで、ちょっかい出してくる男子に囲まれても涙目でタンカ切る姿が凄いと思ってたのによ。
まだ高2だってのに塾に通いだして、夜遅く危ない目に合わないか心配ではあるんだが、別にオレの彼女でもないし、愛華のおばさんにボディガードを頼まれてもいない。
ただ、家が隣同士で家族ぐるみ仲良しなだけだ。
ある日の昼休み、隣のクラスの特に仲も良くないがり勉くん、徳田が「話がある」と言ってきた。
「なんだよ、めんどくせぇな……」
などと呟きながら聞いてみるに、愛華のことらしい。
「片桐君、聖泰和学園の谷崎さんと……親しい?」
いや、確かに愛華の名字は谷崎で、私立のお嬢さん学校、聖泰和に通ってるけど、それが、何か?
「じ、実は、谷崎さんと塾が一緒で……」
コイツ、愛華と仲良くお勉強してるってわざわざ言いに来たのか?
斜に構えて次の言葉を待っていたら、徳田は俯いて黙ってしまった。
仕方ないので、
「オレは家が隣なだけだ」
と助け船を出した。
徳田は急に元気を取り戻して、そっかと呟きながらポケットから紙切れを出す。
「告白……したんだけど、この謎の解ける人としか付き合わないって……」
「はあ?」
オレは徳田に相当間抜けな顔を向けたのだろう。
なんでそれをオレに言いに来る?
愛華とお前が付き合うだと、冗談じゃねぇ。
このふたつの文章が同時に胸の中を駆け巡ったからだ。
何を言っていいかもわからないから黙っていたら、目の前の恋する男までもが、
「小学校の頃、片桐君と谷崎さんべったりだったって聞いたんで、何かわかるかと思って……」
と口ごもる。
付き合いきれないから突き放すことにした。
「その謎、オレが解いても意味ないんじゃね?」
言い捨てて背を向けると、徳田は回り込んできて、
「せめて一度見てくれよ」
と手帳から切り離された1ページを広げた。
『私の好きな人はハイタッチの仲間外れ』
愛華の綺麗な筆跡でそう書いてある。
案の定これは愛華の大得意なクイズだ。
何段階もワナがしかけてあるはず。
小さい頃からうちの両親と愛華の両親はグルになって、オレと愛華にこんななぞなぞを浴びせ続けているのだから。
ーーにょろにょろな数字はどれかとか。
徳田は本気で愛華を好きなのだろう、すがるような目でオレを見る。
「ハイタッチって普通ふたりでするもんだろ? その仲間外れってどういうこと? 僕以外なら誰でもいいって意味なんじゃないかって……」
「愛……、谷崎は嫌いなら嫌いってはっきり言うぞ」
オレは半分投げやりに答えたのに、徳田はホッとしたようだった。
「そうなの? ならもう少しこの謎考えてみる! ありがとう、片桐君」
パタパタと教室に戻っていったがり勉くんの背中を見て、オレはヤレヤレと頭を抱えた。




