領都メイヘンへ
「スープができた。熱いと思うが気をつけてくれ。」
レオンネさんは優しく接してくれている。この人は子供が好きなのだろうか?
「美味しいです。」
美味いし温かい。この世界に来て初めてこんな美味しいものを食べた。
「でしょ。レオンネの料理は美味しいのよ。」
マリア様も、気軽に話してくれる。
貴族ってのは高圧的だと思っていたから驚いた。
「キース君、辛いと思うが何故、奴隷として売られようとしていたのか話してくれないか?」
「分かりました。」
そこから俺は村のこと、両親のこと、馬車で聞いたことを話していった。
ギリッ
レオンネさんの歯軋りが聞こえた。
背筋が凍るような殺気に当てられ、震えてしまう。
「おいレオンネ、嬢様と坊主がビビってるぞ。」
コーネフさんがいつの間にか後ろに立っており、注意をした。
「あ、すまない。マリア様、キール君」
俺たち2人は殺気が抑えられてホッとする。
その後、コーネフさんによって、あの行商人と俺の言っていることが一致しているため、行商人はまた縛られた。なんでも領都に着いたら本格的に調べるらしい。
「ふぅ、美味しかったわ。ありがとうレオンネ。
ところでキース、その村以外に知っている人をいるの?」
「いないです。」
「なら私の家の従者にならない?」
「え?」
聞き間違いか?
辺境伯の従者?
それって農奴がなれるの。
「メイド長」
「はっ、マリア様」
え、いつの間に。
全然気づかなかった。
目の前にいるのに「気配察知」が反応しない。
何かのスキルか?
「先程の話を聞いていたよね?
彼を従者にするにはどうすればいいの?」
「はい。まず1ヶ月間はメイドや従者の見習いと同じように、雑用をしてもらいます。その間に素行や性格などを調査して、問題がなければ採用という形になると思います。」
「ありがとう。
どう?キースならない?」
え、本当に慣れるのか?
奴隷として隣国に流れる前にどこかで逃げようと思っていた。
ただ、逃げても持っているのは形見の銅貨一枚のみ。
仕事をどうしようかと考えていたが…
「本当に良いのですか?僕が従者になっても」
「ええ、構わないわ。
じゃあ、決まりね、従者としての仕事は明日からメイド長に教えて貰いなさい。
さあ、もう寝ましょう。」
そこからは忙しかった。
メイド長に汚いのは論外だと言われ、服はマリア様のものを貸してもらい、身体はレオンネさんの水魔法{洗浄}を使い綺麗にしてもらった。
その時初めて魔法を見て興奮した。
馬車に乗させてもらい、メイド長の授業を受けた。
「礼のやり方は、背筋を伸ばし右手を心臓部分に当てながら腰を曲げます。
自分よりも下の身分の人には15度、自分と同じ身分もしくは上の身分のものには30度、王族には45度です。
覚えましたか?では実際にやりましょう。」
かなり鬼畜だ。「3歳に教える量じゃないでしょ」と愚痴ったら、「教え甲斐があります」と言われた。
意味わからん。
朝から昼までは授業を受け、気絶を使って昼寝をし、野営まで授業を受ける。夜は気絶を4回ぐらい使っている。
気絶の回数がいつもより一回少ないが、その分知識を蓄えている。
それから10日が経ち、いよいよ領都が見えてきた。全員が馬か馬車に乗っていたため早かった。
「でかいですね」
本当にでかい。城壁も20mはある。
「そうでしょう。ガイブ辺境伯領の領都はこの国で3番目にでかいのですよ。」
マリア様は自分の領都が褒められて嬉しそうだ。
「ここで復習です。爵位を下から順に言ってください。」
このメイド長は急に復習問題を出す。しかも、答えられなかったら教える量が増えるらしい。
怖すぎる。
「えっと、騎士爵、男爵、、、、子爵、伯爵、辺境伯、侯爵、公爵ですよね?」
「はい。正解です。」
危ねー、子爵を忘れるところだった。
「門に人が沢山並んでいますね。」
「あれは悪人が入ってこれないように魔道具で検査してるのよ。でも安心して、私たちはすぐに通れるわ。」
さすが令嬢、すげー。
あんなところに並んでいたら日が暮れるところだった。
重厚感溢れる門なところを、並んでいる人を横目に颯爽と中に入った。
「さぁ着いたわ。
紹介するわ。ここが辺境伯領都メイヘンですわ。」