死体と出発
おはようございます。3歳になりました。
待ちに待った、誕生日!
レアスキルこい!
(ガチャ)
<当たり。スキル「魔力回復Lv.1」を手に入れました。>
いいねー。レアスキルではないけど俺にとって魔力は多い方が良いから、ありがたい。
効果は何かな?
「魔力回復Lv.1」
1時間に魔力を1%回復する。
んー、レベル上げたら化けるかもな。
確か、1時間に10%自然回復するから、11%になるのね。
よし、明日の仕事のためにそろそろ気絶するか。明日から運ぶ川の水が増えるから大変だ。
「あーー、疲れたー。」
仕事の量2倍になるなんて聞いてなかった。あと夕方に同じ量をもう一回ね。それまでに体を休めよう。
「おい、そこのガキ広場の死体埋めとけ。」
「わ、わかりました。」
「チッ、早よいけ」
うわ、この人機嫌が悪い。早く行かなきゃ。
しっかし、今回で死体を埋めるのは3回目か。精神が麻痺している気がする。
1回目は確か魔物に殺された死体で、思わず吐いてしまった。
2回目は病気で死んだ死体。5体満足だったけど、アンデット対策のために四肢を切り落とさないといけないからな。
今回は何かな? 憂鬱だな……
広場には一つの死体が雑に捨てられていた。
「父さん?」
その死体はおそらく、病気だろう。外傷はないのに、ピクリとも動かない。ただ、アンデット対策のために四肢が切り落とされているぐらいだ。
「なんで?父さん、、、」
正直、父さんとはあまり話したことがない。いつも無愛想で、何を考えているのか分からなかった。
最近は体調が悪いのか、いつも以上に無愛想だった。
でも、それでも父さんは父さんだ。
その後はあまり覚えていない。
ただ、黙々と土を掘り、埋めた。
「父さん、ありがとう」
<「精神耐性Lv.1」を獲得しました。>
<「精神耐性Lv.1」が「精神耐性Lv.3」へレベルが上がりました。>
「ただいま……」
太陽の位置的にもう2時ぐらいだと思う。夕方までには時間がある。
少し休もう。
「おかえり」
「お母さん?」
(なんでいるんだろう。)
「お父さんが亡くなったと聞いて、早く帰れって言われたわ。 どうだった?」
「少し笑っていた気がする。」
「そう…よかったわ。」
俺は母さんを見ることができず、静かに外に出た。
あれから1週間は経った気がする。
「ひー、今日の朝の分は終了っと」
「そこのお前、仕事が終わったんなら広場に行け。」
(あれ、これ先週も…)
「早くいけっ」
「は、はい」
(よかったー。今日は機嫌良い。殴られるところだったぜ)
広場には10人ぐらいの死体とそれを埋めようとする子供、四肢を切断する人間がいた。
(まさに地獄絵図)
「お前はこの死体をやれ」
「わかりました」
その死体は顔の半分がなかった。下半身もない。
けど、その死体には見覚えがあった。
「あれ、母さん?」
<「精神耐性Lv.3」が「精神耐性Lv.4」になりました。>
「おい、ボケッとせずさっさとやれ。」
「おい、聞いてんのか」
ボコッ
殴られた。
「やります…」
なんで母さんが…
自分が憎い。色々なスキルを手に入れ、甘くみていた。
この世界の人を馬鹿にしていた。
無愛想で何を考えているのか分からない父さん。
ブサイクでガリガリおまけに頭も悪い母さん。
自分のことを大切にしてくれて心では心では見下していた。
自分が一番馬鹿だ。
憎い 憎い 自分が憎い。
<「精神耐性Lv.4」が「精神耐性Lv.6」になりました。>
母さんの死体はとても軽く、冷たい。
他の死体よりも丁寧に扱い、埋葬した。
ごめん母さん。
自分は惨めだ。
<「精神耐性Lv.6」が「精神耐性Lv.7」になりました。>
それから3日後の昼、「魔力操作」で遊んでいると
「おい、ガキ」
「は、はい」
(また死体処理?死にすぎだろ。)
「ついてこい」
(なんだ?どこに行くんだ?)
男に連れてこられた所はこの村にある門のところだった。
(あれは行商人か? なんでこんなところに俺を呼び出したんだ?)
そんなことを考えていると、行商人は前に出て言った。
「奴隷として売るのはその子供か?」
えっ、俺奴隷として売られるの?
「ああー、そのガキだ。確か3歳だ。いいか?」
行商人は俺を吟味しながら、
「お前の名は?」
「キースです」
「ふん、こいつでいいだろう。
おいキース、俺がお前の主人だ。わかったな?」
「は、はい」
「おい、ドータムこいつを馬車の床裏に入れろ。猿轡と足枷もつけとけ。
あとキース、こいつは護衛のドータムだ。こいつの言うことを聞け。」
「わかりました。」
訳のわからないまま、俺は生まれた村から出た。