第五話...決闘壱・夕
京都の稲荷神社に行ってきた。修験者がいて、凄く疲れてイナリワンを当てたました。
屋敷で目覚めるとそこには髪が白い美少女が椅子に座り、ティータイムなのか紅茶を片手にティラミスをホークで切り分け、口に入れて満足そうに笑う。
人の家でなければ何も問題はないが、ここは他人の家である。
──最近、厄介事に巻き込まれるな。
圷堵が背後から声を掛けるとその美少女はビクッと跳ね、振り向くと目を見開き驚いて、圷堵の両肩を掴んで意味の分からない事を叫ぶ。
その大声で朝飯を作っていたエクレシアと影璽は頭に?マークを浮かべ、ライアと春羅も自室から騒ぎを確認しに来る。
「どうした!?その姿は?!えっ?見間違えた?!!俺が!!?まさかァ......」
「先生、どうしました?」
「先生!?此奴が!!?」
「じゃねえとデザートを渡したりしないぞ」
「はい。彼は少し、出張に出ていっていた魔機末未来」
「え?男?そういや匂いも、でも変わってる......」
魔機末未来。二万年の出張は異能都市の莫大な結界を調整する為、二万年前から調整を行う為に壁の中に入っていたが、結界術に寄って一時的に封印状態となっていた。
本来は二日程度の作業だったので、彼が出てこない事に驚いたが、これは歴史的に珍しくもない出来事なので出張と言う事で半ば放置状態にあった。
実力は強く、性別はない。そもそも生殖器自体が彼にはなく、異能と固有魔術の二つを持つ強力な人物ではあるが、その信頼が放置状態を産んだ。
教育者としては随一ではある。
が、スパルタじみた教育をしたり、変な事を教えたり、映画の内容を他者の経験として語るので、完璧という訳では無い。
「どうしてそんな先生が俺達の家に?理由は何です?」
「いや?理由はちっぽけなもので、二日で決闘を受けた馬鹿がどんな顔をしているのかを見に来た」
『ライアだったか、アイツは恐怖心に負けそうだな』
「今日から戻るんですか?」
「まぁな。《《話し》》を聴く必要があるようだしな......」
「デザート食ったなら帰れ」
「教員に何て態度......まぁ、仕方ないか。うん!仕方ない!」
時間は進み昼のコロシアム。試験の時とは違い、そこには歓声の声で溢れてるのではなく、そこにはライアと影璽に向かいブーイングが響き渡っていた。
頭を抱えてしゃがみこみ、吐瀉物を吐き「ごめんなさいごめんなさい。私がグループに入ったから、君を......断れば良かったよね。本当に、ごめんね。私は、要らない子だから......お父さんお母さんに──」と泣きながら謝罪するライアの背中を影璽が優しくさすり、耳元で囁いた。
「ブーイングか。少しだけ痛いけど、ブーイングは未知なる王道に挑む挑戦者に与えられる勲章なんだ。だから、気にすことはない」
ガリアが現れるとブーイングが一斉に歓声へと変わり、ガリアコールが五月蝿い位にコロシアム中を響き渡る。
キメ顔で手を振り、圷堵達を振り向くと目付きを鋭く変え、圷堵の胸ぐら掴んで吠える。
圷堵はカァァァァっと喉を鳴らし、ペッ!と痰を顔面に吐き捨てると溜息を零して、股間に蹴りを喰らわせる。
悶絶するガリアの後頭部を踏み台にして、アホズラのまま雄叫びを上げるとブーイングが圷堵に向けられる。
「あっ...あっ......あっ...潰れたかも............」
「ウオオオオオオアアアアアアアアアアアアアーーーーーッッッッ!!!!!」
「まだ速いってっ!」
「大丈夫だ。ライア?お前は俺が護ってやるよ」
「うん!」
「速く始めようぜ?」
審判に話し掛けると審判は前歯に親指を押し当て、素早く指を動かして血を出すと陣に落とす事で特殊な機械が結界術を起動させる。
視界が真っ白に包まれ、空気が変わるとそこはビル街、雑踏がする日常風景が広がっていた。
人が交差点を渡り、肩を叩いて反応すると頤を掌で弾いて首を捻れば死に顔さえ再現され、悲鳴が日常を突き破り、悪夢が顕現する。
笑みがこぼれ、袖から大鎌をゆっくりと取り出し、鈎柄をクルクルと指で回して逃げ惑う人間を縦に切断すると返り血を浴びる。
「何かさぁ?良い匂いがしないか?」
「分かるよ。なんだろう?この匂いは、興奮するんだよな」
「二人とも、大丈夫?」
「血腥い」
「先道?ライアを五分間だけ、頼んで良いかな?」
「良いぞ」
「なら、五分後に落ち合おう」
「「ゲーム、スタート!!」」
ライアと共に中心である道を歩き、ガリアがいる中心地区に向かう。
戦闘フィードには中心地区に武器庫があり、魔力が籠った武器を手に入れる事ができる為、速く中心に向かわなければならない。
が、ガリアは貴族特権で色々とやる利用がある。罠を貼っていても可笑しくなく、猪突猛進に罠を踏み潰す意味はない。
数キロ離れた場所では爆発音がし、地面が揺れている事から爆発系の魔法陣を地雷として使われている事が解る。
「良い人に出会えて良かったな」
「良い人?」
「影璽の事だよ。ブーイングをものともせず、君を導こうとしている」
「何で、私何かを救おうとするのかな......」
「好きだらじゃないか?一目惚れとか、色々あるだろ。男って者は、女と違って凄く単純だからな」
「──だったら、こんな、親にも捨てられた私も、生爪を剥がされても、前歯を抜かれても、何も言えない私を、好きになってくれたら......良いな」
「えっ?マサか、悪魔がそこまで嫌われるとは......」
悪魔族が異能都市や外の世界を暴れ回ったのは四千年前の出来事の為、長寿で有名なエルフの長老でなければ現場をその目で見た生物は居らず、生物の中では長寿である人間でさへ、一人も知らない。
ただ、憎しみを伝える、危険を伝える本能が起こした現状。
正義感は感性によって形が人それぞれに違い、多種多様に解釈が変わってくる。
が、悪意は似通ったモノが多くあり、善意寄り遥かに病気の様に、感染し、多くの人々を惑わせ、その人物が病原体になる。
幼い頃に感染すれば酷く、ストレスに反応して数を増やして行く。
行為はエスカレートし、小学生のような現実を余り知らない発想力が豊かな子供は、ひどい仕打ちを軽い気持ちで行う。
ブレーキが効きにくい子供は、何を仕出かすかが予想出来ない。
影璽は匂いが多い方へと向かうと魔法陣に寄ってビル街に移動させられ、状況を瞬時に理解してとぼとぼとフードを深く被り、匂いを探って歩いていると窓から銃口が此方に向き、三階から一階まで囲まれているらしい。
数は百を超え、影璽のライアを殺す為に用意されたSレート以上の殺し屋達。
窓ガラスを砕いて影璽の頭に迫り来る無数の弾丸を鎌の一振で防ぎ、クルリと回って大鎌を振り回すと柄込みが外れ、長い鎖が勢い良く飛び出し、影璽を囲むビル街を斬り刻む。
左指の骨を鳴らし、舌を徐に出し、死体を踏み付ける。
──今の一撃で彼等は当然死んでいないのは承知している。クラスと奴らとは比較にならない強さを持ってるな。
それから人差し指を顳顬に押し当て、瞳孔を開き、クルクルと長くなった鎖を金髪の女の首に巻き付け、柄込みだけを戻す事で鎖に固定された首と胴は分かれる。
キュイーンと甲高い音を立てて鎖を巻き戻して、大鎌を肩に乗せる。
「君は一体、何者なの?」
「何で的にそんな事を聴く?時間稼ぎか?待ってやろうか?」
「気になってね。我々の様なSレートが、どうして君の様な子供に、一人一億何て大金を?もしかして悪魔を守っているのか?」
「それがどうしたよ」
「悪魔は我々の先祖を殺し回った下賎な種族だ」
「お前が何かされた訳じゃないだろ?それなのに何でお前達は悪魔族を悪だと決め付け、石を投げる事が出来る?」
「雑学家だね。だけど、君の意見は通らないよ」
眼を見開き、瞳孔を細く開いて歯茎きが見えるほど、歪んだ表情を見せてケタケタと笑って見せる。
でもその表情には、乾いた笑いでは隠せない殺意がその表情にはあった。
彼の中には一つ、殺意が沸き立つ感情は、呆れたと進む道でもある。彼の夢は夜姫家の復興と、ライアを大切に思う人を増やす事。
哀しくて、途方もない確率の上でしか誕生出来ないこの世界に生まれたのだから、彼女には、生きている事を幸せに思って欲しい。
────笑って、いて欲しい。
ほんのささやかな影璽の祈り。願いを、神に祈った所でこの世界は残酷無慈。己の手で掴む他なく、その祈りを叶えるまで戦い続けなければならない。
「愛した女の、幸福の土台を作って、柱を立てて、好きな男を嫁がせる。さぁ、俺の夢を語った所で、処理時間だ」
「ソレ、叶うの?」
「夢ってのは、口に出さなきゃ叶わねぇの」
「悪魔族を守って、何になる!」
「偶にいるよな!こんな繰り返す歴史を無視たつもりで、自分が痛いめにあって歴史を繰り返すやつ。誰もお前の独り言何て届かねぇ!」
「くだらねぇ。歴史は繰り返す。でも、それは踏み出さねぇ臆病者共が茨の道を進む事に臆し!目を瞑って、憶測で語って自分の目で確かめないからだ!!!」
地面を蹴ったと同時に大鎌を四方八方に振り回し、鎖で伸びるリーチを活用して敵を寄せ付けず、闇で構築した大鎌に炎を纏わせる事でビルを焼き、相手が展開する魔法陣を切り裂き機能停止させる。
地面に着地すると本気で地面を蹴り、地面を隆起させる事でビルを傾かせ、走っている途中の青髪にピアスを着けている男の肩に手を置き、大鎌を宙に投げ、懐に隠していたナイフで心臓に瞬時に66回突き刺した。
銃弾の雨を避け、ナイフで一つの弾丸の弾道を変えると無数の弾丸は互いに被弾し弾道を変えて影璽を中心とする円形を構築、避ける様に移動する。弾かれた弾丸は銃撃した本人に爆音を上げ、眉間に着弾すると脳髄を火花の中、撒き散らして死亡する。
銃撃者の数を減らした後はとうりすがりに数を減らし、一度急停止し地面から土煙を巻き上げ、対物ライフルの銃口を向ける男に魔力で覆ったナイフを投擲する。
「剣璽・青く燃える深槍」
青く燃えるナイフの一閃は青白く輝き、建物を風圧で吹き飛ばして着弾すると同時に起爆、ビル寄り大きな青い火柱を上げる。
火柱は薔薇に形を変え、美しく瞬いた。
刀を引き抜くと巨大な魔法陣が影璽の方向を向き、巨大なエネルギーが放たれた。
五属性が凝集された五本のレーザーを易々と斬り裂いて土煙から現れ、爆風に寄って加速して刀を振り上げる姿を見て、魔術師は腰を抜かした。
「66......55.........49...43」
また地面を強く蹴って次はビルに移り、蹴って更に加速。ビルや建物、地面を蹴る事に寄って宙を縦横無尽に駆け回る事で刀の二刀流で周囲の人の首を切り落とす。
移動せず、思考中の女の喉に二本の刀に突き刺し、吐血しながら足元の陣を起動させる呪文を誐と同時に顔の一部を喰い千切る。
地に落ちている大鎌を引き寄せ、手元に戻したあとは固まる三人に狙い、裏通りでヒッソリと気配を殺す。
「決闘開始から、約二分弱......何人死んだよ?」
「半分以上は......」
「今の女見たか?顔が喰い千切られてた......!!」
「あの瞬間的な判断能力からしてS以上はあるぞ?S.A7位か?」
「なら俺達絶対に勝てないじゃん!S.D4だぞ!!」
「おっおい、音のはッ」
脚で女の首の骨を砕き、ビルの最上階の柵に絡ませている大鎌の鎖を引っ張り、女の肉塊を捨て、男二人の腹を二本目の大鎌で突き刺して最上階に上がる。
女の発言に首を捻り、少し考えると意味が分かる。
──反響音で解ったのか。強いな。
残った二人に触れ、脳味噌を捻り潰す。
頭蓋の中に脳味噌がギチギチに詰り、影が潜む事が出来ない状態でなければ、影璽に触れられると影を操られ、脳味噌が圧死する。
「あと......26人────!!」
「さっきは良くもやってくれたな」
「セコい方法で俺達を殺そうとするからだろ?」
「気付いてたのか?」
「やけに血腥い匂い奴らが沢山いたからな」
「今頃死んでるだろうなぁ」
「そうだな」
「影璽君っ」
「問題ない」
澄まし顔で言放つ圷堵を海時の背後で伺うライアは、頭を傾げると爆発音にも似た爆音が衝撃共に響き、高く巻き上がる土煙から返り血塗れの影璽が現れた。
フードを脱ぎ捨て、鎖に繋がれた百人以上の生首を引き摺り、現れた影璽に、ガリアを取り囲むスーツ姿の男女は顔を引き摺っている。
彼らは殺し屋達の情報を熟知している為、この状況を理解出来たのは二人だけ。それに彼ら二人だけは影璽の底知れなさと百十二人の殺し屋達を三分強で殺しきった実力に恐怖した。
残るはガリアのパートナー、ボディーガード二人の合計四人。数は揃ったが、戦力差は明らか。
「五分じゃなかったのか?」
「予定が変わった」
「決着......つけようぜ?」
「つけてやろうじゃないか」
「お前は俺達には勝てないがな!」
「根拠を持って来い!天龍寺!」
「根拠何かねぇよ!うるせえよ、黙れよ。データなんかあるんけないじゃん。拳こそが正義!常に正しいのは俺!!!」
「ひでぇな......」
海時君の戦闘シーンは次にお預けです。エクレシアは二章からです