夢ではなかった
そうして次に目が覚めた時、私は自室のベッドで眠っていたわけだけれど、側には約束した通りセバスチャンが控えていたのは言うまでもない。
「お目覚めですか、お嬢さま。」
「・・ん。」
のそりと半身を起こして後頭部に手を当てる。
「しっかり冷やしましたから、たんこぶにもなっていませんよ。というか、あんなので死んだら貴族の恥ですよ。気をつけてくださいね。」
「・・分かってるわ。」
どうやらセバスチャンの毒舌が戻ってきつつあるようだわ、と思いつつそう言えば・・と自分の中にいるはずの存在を思い出した。
「えーと・・いるのかしら・・?」
『いるよー、おはよエスタん。よく寝てたね〜。』
・・夢じゃなかったんだわ。。
「お嬢さま?」
「・・いいの、なんでもないわ。」
「いや・・なんでもなくは見えないというか・・、いや、まぁ・・はい。」
『セバスチャン、喉が渇いたわ。レモネードが飲みたい。」
「・・かしこまりました。・・ちょっと待ってろ。」
スッと立ち上がり、頭をガシガシとかきながら部屋を出ていく粗暴な態度の執事を見送ってから、ちふに言う。
「それで、説明とやらはどこにあるの?」
『ん、ああ、胸んとこ。ドレスってポケットないんだね、ポケットはあった方が便利と思うんだけど。エスタん胸ないから挟むとこに困ったわ〜。』
・・余計なお世話だわ。
ごそ、と胸元を探ると小さく折り畳んだ紙が出てきた。
『医務室にあったペンと紙勝手に拝借しちゃったけど大丈夫だよね?』
「・・ええ、問題ないわ。」
カサ、と紙を開いてみる。
そこに書かれている文字は、どう見ても私が知っている文字の羅列ではないのに、なぜだか全て理解できる。
「・・気持ちが悪いわ・・。」
『ねー、私も羽ペンの使い方とか知ってる自分にびっくりしたもん。』
どうやら、私たちは互いの知識をも共有しているようだ。
釈然としない思いを抱えながら文字を読んでいく。
そこにはこう書かれていた。