OPが流れる最終回じゃないED
↑を考えたときに、エグ〇イド思い出しました。ホウジ〇ウエムゥ!
戦いの後の事を、かいつまんで説明させてもらう。
死闘を終えた俺たちは自由になったマトを連れて人魚の街に戻った。
成長した俺と、巨大なマトの姿を見た人魚たちはざわめいたが、トリトナやレイラちゃん、それから女医さんとそのお兄さんが気づいてくれたおかげで、余計な混乱は起こらず、ざわつきもすぐに収まった、なんてこともあった。
そこで初めて知った事なのだが、オーバードライブを使用した時に発生した魔力の爆発をトリトナたちは感じ取っていたらしい。
あまりに強大な力に、もしや魔王が出現したのかと、皆ピリピリしていたらしい。
マトの陥っていた状況や邪神の野望、それから俺の成長とオーバードライブの事を伝えると、トリトナたちは安堵の息を吐いていた。
それで、当然の話なのだが、マトの処遇については議論が交わされた。
処刑案は真っ先に消えた。理由については、俺たちが擁護したことや、邪神に操られていた事実以外にも、マトが元々、この海域の治安を守っていた功績があったからだった。
こいつ、邪神に操られる前は人魚たちや知性ある者たちからは慕われていたらしかった。
ここ数年姿を見ていなかったため、人魚たちは長き眠りについたか、別の場所へ旅立ってしまったのではないかと考えていたらしい。
トリトナは最近、一度直接合い見えているため、その話を聞いて『こいつ、そんなに偉い奴だったのか?』とメチャクチャ疑いの眼差しを向けていた。
最終的に、マトは以前のようにこの海域の守護、そしてレイラちゃんや人魚の子どもたちの魔法教師をするということで、処遇が決まった。
これは、俺たちの期待通り、レイラちゃんがマトの境遇を聞いて味方になってくれた事が、人魚たちの心を余計に動かしてくれた結果だった。
それと、マトに操られて直接被害を受けていたシーシャドウは、マトの事を許さないとは言ったが、その分、レイラちゃんや人魚たちに魔法を教えて彼女たちの事を助けて欲しいと願った。
シーシャドウもまた、人間のような、いや、それ以上に理知的な奴だった。
マトは明日の道を進むことを、レイラちゃんたちからも許されたことに、目を瞑り頭を下げて感謝していた。
『しかし、邪神の事は、きっと広めない方がいい』
マトは人魚たちに、邪神の眷属化の魔の手がまたいつ伸びるかわからない事を教え、万が一、奴に見初められた者がいた時のために、彼女なりの対処法を伝えた。
曰く、トリトンの加護があれば、人魚くらいの大きさの魔族にかけられた邪神の加護をある程度を防ぐことができるため、残りをマトの持つトリトンの加護で跳ね除けられるらしい。
『これでも、以前は賢者と呼ばれていたんだよ』
そう言って苦笑する奴の顔には、痛みと後悔と、それだけじゃなくて、これからの未来と、人魚やトリトナ、レイラちゃん、シーシャドウたちへの優しが浮かんでいた。
これが、人魚の街の門前で繰り広げられた、マトの顛末だった。
それと、リチュアにユィーハさんについて話した。
ユィーハさんは、結局、自分の事を通りすがりの超越者である、と言う事しか教えてくれなかった。
超越者が文字通り、凄まじい力を秘めた者、という事は彼女を見ればわかったが、結局本当に何者なのかはわからなかった。
だが、何となく、だが。
リチュアと関係があると思って、彼女に聞いてみたのだ。
ユィーハさんを知っているか、と。
それに対して、リチュアは、
『いずれ教えてあげる』
と言って、それ以上の問答を許してくれなかった。
結局、俺が知りたいことは謎のままだったが、今は、それだけで十分だと思った。
予想は予想、彼女が話したくなった時に、聞くとしよう。
それから数日後。
俺たちは人魚の街を発つことになった。
‡
『リチュアちゃーん、カイトお兄ちゃーん』
レイラちゃんの声がしたので振り返ると、ふよふよと近づいて来る姿が目に留まった。
その後ろから、トリトナと女医さんが少しだけ距離を開けて着いて来ている。
『皆、来たぞ』
『ん』
加護を通した呼びかけで、俺の額の上に寝そべっていたリチュアが起き上がり、レイラちゃんたちを出迎えた。
『あらレイラ、来てくれたの? ちょっと時間には早いんじゃない?』
『授業が早く終わったから、お話しがしたくて』
『そうなのね』
リチュアはレイラちゃんのところまで泳いで近づき、抱きしめてやっていた。レイラちゃんもリチュアの事を抱きしめ返していた。
その様子を見守っていると、トリトナと女医さんが、同じように二人の様子を見ながら近づいて来た。
数日前、街に戻った時、大きくなった俺の姿を見て大騒ぎになったこともあったが、それが遠く、何年も前のように感じられる程、今は普通に接してくれている。
『行っちまうんだな』
頷くと、トリトナは『まぁ何だ』と言い淀んだ。
『私も、レイラも、お前たちには世話になった』
『何回も聞いたぞ、それ』
『それくらい感謝してるってことだよ。えと、それでその』
「トリトナさん、ちゃんと言わないと時間が来てしまいますよ?」
女医さんが穏やかに指摘する横で、トリトナは『わかってるよ!』とむくれる。
はっきりしない態度は珍しい。こいつは言いたいことをすっぱり言ってくれる性格なのだが。
一体どんな言葉が飛び出て来るのだろうかと見守っていると、やがてトリトナは俺を見上げてきた。その目力は強く、これから決闘しようぜと言わんばかりだったが、敵意は感じられない。
『また海に来い! 私とレイラに会って、それで、たまに陸であったことを教えてくれ!』
『あぁ、いいぞ』
それくらいならお安い御用……と言う訳にはいかないが、例えば月に一度くらいならいいかもしれない。
ここまで来るとなるとちょっとした旅行になるため、そこはリチュアと相談しよう。
『本当だな? 約束だからな!』
とても上機嫌になったトリトナの横で、女医さんがほほ笑んでその様子を見ていた。
それから少しして、リチュアはレイラちゃんと離れて戻って来ると、額の上に座ってきた。
曰く、背中よりもこちらの方が収まりがいいらしい。まぁ言いたいことは、わかる。そこだと、角の間に収まる形だから、安定しているだろうし、防御面でもいい場所だろう。
俺がもうずっとこの姿で、並大抵の魔獣は近づいて来ることはないため、リチュアが背中の上からわざわざ警戒したりしなくてもいい、という結論が出てから、そこがリチュアの指定席になってしまった。
『じゃあ私たちは行くわ。マトのこと、頼んだわ』
「はい。お任せください」
『じゃあ行こうかしらね。レイラ、トリトナ、先生、助かったわ! お達者で』
『お世話になりました』
俺は頭を下げ、海の中を駆けだした。加護のおかげで、陸地と遜色ない動きができる今、猛スピードで人魚の街から離れていく。
『二人ともー! 元気でねー!』
視界の中に、手を振るレイラちゃんが映る。彼女に寄り添う女医と、トリトナが俺たちを見送ってくれている。
やがて、三人の姿が見えなくなった頃、右の視界に巨大な影が現れた。
ディープ・シーシャドウだった。
『途中まで見送る』
加護を通した意思が伝わってきたので、『よろしく』と返した。
それからしばらく併走していたが、人魚たちと契約している範囲まで来たようで、ピタッと止まった彼女が、そのままUターンして帰って行った。
またしばらく走り続けていると、海面から射し込んでくる光が強くなってきて、海底を薄く、透明に、鮮やかに照らしてくる。
加護を通して、水圧が小さくなるという現象を感覚で捉えてすぐ、俺たちは海から飛び出して、陽光照りつける砂浜へと出た。
海へと振り返る。
穏やかな波が、軽く弾けるような音を立てて、浜へと押し寄せては退いていく。
この数日の騒ぎが、まるで嘘のような、そんな光景だった。
「色々あったわね」
久しぶりに、加護を通していない、空気を伝わった声が聞こえてきた。
リチュアだ。
しかも珍しく、感情的な事をリチュアから降ってきた。
なのに、彼女の顔は無表情で、先ほどレイラちゃんと会っていた時に比べて、冷たいような印象を受ける。
戻ってからの人魚の街でもそうだった。
普段はいつも通りなのに、ふとした時にこんな表情になっていた。
これに気が付いていたのは、俺以外だとレイラちゃんくらいだった。
それでも、俺もレイラちゃんも、リチュアに指摘をしなかった。二人で話し合って、少し落ち着いたら、俺から話しを振ってみることにしたのだ。
だが、今はその時じゃない気がした。
『そうだな』
短く返すと、リチュアは「さてと」と言って寝転び、頭の後ろに手を組んだ。
「それじゃあ、戻りましょうか」
『あぁ、戻ろうか』
言って、俺は海へと背を向けて、砂漠へ向けて走り出した。
もうその時が来た。
想像していたよりもずっと早く、そしてずっと強い力を手に入れた。
今の俺なら、一人だけでも倒すことができる。
リチュアが太鼓判を押してくれた。
『レッドハンドを倒しに!』
‡
向かう先は、フローチュア、それからリチュアとの出会いの地であり、フローチュアとの別れの場所である。
木漏れ日を作る大樹が見守る、フローチュアの森だ。
☆
キール・ストライクは、髭を剃って間もない顎に右手を添えて思案に耽っていた。手元に届いた二通の手紙が原因だった。
一つは、調査を終えたダンジョンの出現した街のギルドで一休みをしている時に届いたものだ。
差出人は、昔、一緒に旅をしていた仲間であり、現在はとある国の女王をしている女性からだった。
もう一つは、愛する妹と弟が済む別大陸の、トライティアという街の討伐者ギルドのギルドマスターからの応援要請。これはついさっき、オルシャーガの港町に着いた時に、街人のエルフ女性から受け取ったものだ。受け取った直後、エルフは街角に滑るように移動して、気配を瞬時に消した。
届くまでに数日以上の差があった二通の手紙の内容は、おおよそ一緒のもので、要約すると、
『サンドリア大陸であまりにも大きな魔力の反応があったので、その原因を探ってほしい』
と言う事だった。
冒険者ギルド・オルシャーガ支部の飲食スペースの一画で、頭からマントを羽織ってレモン水を片手にしている姿は、流れの冒険者のようであり、誰もキールの事を『冒険者ギルドの創設に関わった上級冒険者の一人』だとは考えないだろう。
だが、そんな偉大な人物も、現状には頭を抱えたくなっていた。
「……まいったねぇ」
思わず口にしてしまう。
仲間やトライティアの討伐者ギルドが感じ取った程の膨大な魔力であるなら、十中八九、魔王クラス。
そして、双方が自分に手紙を出して調査をしてほしいというのであれば、もしかしなくても中級以上。
直接の戦闘を考えず、調査だけだとしても、気が重たくなるような相手だ。
それが上級だった場合は、手早く調査してすぐに離脱しなくては、生還の可能性が消える。
自分が単独で相手にできるのは、下級の下の魔王くらいだ。それ以上は仲間と一緒だとしても無理だ。
「やれやれ……」
その脳裏に過ったのは、姿も性格も違う三姉妹、独眼の喋るカラス、傲岸不遜なオーラを隠そうともしない褐色肌のこの世の者とは思えぬ美女、そして牛のような角を持つ褐色肌の青年だった。
「いけねぇいけねぇ……」
今はいない仲間たちの姿を思い出したことに自嘲し、頭を振った。
随分弱気になっているなと、後ろ頭を掻いた。
その時だった。
「あの、すみません!」
受付カウンターから、若い男の声が聞こえてきた。
何となく目を向けると、頭からマントを被った背の高い人物が、受付嬢に話しかけているところだった。
本物の流れの冒険者にしては、マントにあまり損傷は見受けられない。買い直したのかもしれない。
立ち居振る舞いに隙は見受けられない。
そして、透き通るような、不思議な気配。
中級以上の冒険者か、と一目で瞬時にキールは予想を立てた。
「ここに、小さな女の子が来ていませんか? 赤色の髪をしている、八歳くらいの女の子なんですが」
どうやら、人を探しているようだった。娘か妹と言ったところだろうか。その声からは心配と同時に、何かの焦りのようなものを感じ取れた。
受付嬢が机の下から書類を出して手早く目を通し、近くを通りかかった職員に一言二言告げてもってきてもらった資料にも目を通して、男に何かを告げる。
「そう、ですか。ありがとうございました」
男は慇懃に頭を下げ、カウンターから離れた。そこで顔がようやく見えた。
その顔を見て、キールは息を呑んだ。
気が付けば立ち上がり、気を取り直してギルドを出た男の後を追い、通りの途中で声をかけていた。
「ちょいといいですかい?」
「え?」
振り返った男の、いや、少年の驚いた顔を見て、雰囲気を感じ取り、キールは確信した。
この少年は、かつての仲間と、もしかしたら……。
この時期に届いた二つの手紙と異変、そして少年との出会い。
これはもしかしたら光の運命神の導きなのかもしれない。キールは、未踏ダンジョンへと踏み込む時以上の緊張感を隠しながら、一歩踏み込んだ。
「兄さん、もしかして、二ホン人って奴ですかい?」
「! 貴方は……?!」
警戒が混ざながら、静かに向き合った少年の、底知れぬ気配。
それは、死を知り過ぎていながら、それを恐れなくなった、そんな表現が似合うような凄まじさを秘めたものだ。
「こいつは失礼」
それに気圧されかけながらも、表面には出さずに、キールはマントを脱いでその顔を表し、帽子を脱いで一礼した。
「あっしは、キール・ストライク。しがねぇ冒険者でさぁ」
それが、キールと、サエの出会いだった。
お読みいただきありがとうございます。
6話と7話に渡って展開した、古代の血、明日の道、これにて終了です。
次回からアニメで言う所の8話です。
物語も終盤へ向けて少しだけ加速していくかもしれません。
ユィーハ「これでよかったのよね……マトリックス。
って、はぁ…………わかってたけど、キツいわねぇ。
さて後は――――」
オルシャーガの港町
キール「よろしく頼むぜ、坊主」
サエ「はい(さて、どこにいるんだ、あの人……」




