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古代の血、明日の道

Zでリク君再登場したから、多分、Zさんがイリュージョンするのは次回登場時かな、来週ついに……ですしって展開早ッ!!


<え、嘘、ちょっと!>


 焦った調子の、まだ少女と言っても差し支えない声が聞こえてきたが、それを聞いた途端、カイトの背筋に悪寒が走り、同時に胸に怒りがこみ上げてきた。


 あれが、マトをこんなに苦しめ、トリトナたちも苦しめた原因!

 それを理解したカイトの心の奥から、ユィーハの詠唱が湧き上がってきた!


<大地の力よ、星の血よ! 今、そなたの外敵を天へ追放しましょう!>

<ま、まさか……こんな事って!>

<ボルカニックゥゥゥゲイザァァァァァァァ!!!>


 黒い霧の真下の岩盤から、突如として溶岩が吹き出した。それは水蒸気爆発を起こし、周囲の海水を沸騰させながら、黒い霧を包み、上へと噴き上がった。だが、霧は溶岩に飲み込まれることなく、その場に止まり続けていた。やがて溶岩の噴出が止まり、まるでビデオ映像の巻き戻しのように、その灼熱の輝きが岩盤の下へと戻って行った。冷やされて岩石化した溶岩はなく、まるで、今の地獄のような光景が幻だったと言わんばかりの静けさが海に戻った。


 遠距離でドライブ化でシールドをリチュアに張り、通常のシールドでマトごと自分を包み込むことで脅威を防いでいたカイトは、霧の恐るべき執念深さを感じていた。

 あれが、邪神!

 カイトは本能で、アレと直接戦ってはいけないと悟った。

 だが、同時に倒さなくてはいけない相手だとも確信した。


 その時、カイトは視界の中に、霧へと手を伸ばすような仕草のユィーハの幻覚を見た。

 彼女の口元には、不敵な笑みが浮かんでいた。


<こんな程度っ! その子を手に入れるのにどれだけ苦労したと思って――――>

<ヴェスタ・フレイムッ!>


 邪神が文句を言い終わる前に、霧は淡く輝く、不思議な炎に包まれて消えた。


<これで終わりよ……今日のところは>


 ユィーハの幻は意味深につぶやきながらマトへと振り返り、手を翳した。


<よく頑張ったわね。癒しを、ヴェスタ・フレイム>


 霧を包み込んだものと同じ炎がマトの巨体を包み込む。

 海の中だというのに燃える火は、恐ろしくはなく、見ていて心がとても落ち着き、安らいでいく不思議な存在だった。


 やがて炎が消えると、カイトの突撃や戦闘で負った傷が全て塞がり、憑き物が落ちたように安らかな表情のマトが現れた。


『あったかい…………』


 そう言うと、マトは海底に沈み込んだ。

 カイトは駆け寄り、心身の損傷を癒すヒーリングドライブと、魔力を回復させるマナドライブを駆けようとして、絶句した。

 マトの体が、少しずつ、少しずつ、光の粒となって消えようとしていた。


『おいマト! どうして!』

<そういうこと……クッタクァの置き土産よ>


 リチュアの幻は静かに言うと、マトへと近づき、手を翳す。


<限界を超えて、アイツの加護に逆らった影響ね。この子自身の抵抗と、トリトンの加護のおかげで、まだ崩壊には時間があるけれど>

『治す手立てはないんですかっ?』

<あるにはあるわ>


 ちらと振り返ったユィーハの顔には、どこか陰りがあった。言うかどうか迷っている気配があったものの、それは一瞬だけだった。


<コルヌドライブをオーバーロードさせて、その力を彼女に与えれば、助けることができるわ>

『わかりました、それじゃあやり方を教えてください!』


 マトの体から離れていく光はごくごく僅かだが、悠長にしている暇はないだろう。

 そう思ってカイトはユィーハを急かしたが、彼女はすぐに答えてはくれなかった。


<私が今言った方法で彼女を助ければ、アンタは鼻先の角を失うことになるわ>

『え?』


 一瞬、本当に一瞬だけ呆気にとられたが、すぐにそれがどうしたとカイトは我に返った。

 腕一本などの条件なら少し考えたかもしれないが、鼻先の角なら良いとすぐに思えた。それに異世界のトリケラトプスなのだから、また再生させることができるだろうという考えもあったし、なければなければで、正真正銘のトリケラトプスの亜種として生きていくだけだと割り切っていた。

 だが、


<その鼻先の角はね、アンタが人間の言葉を話せる要因なのよ>


 ユィーハの言葉に、再び言葉を失うことになった。


<解析してわかったんだけどね……カイト、アンタの三本の角の中で、かなり重要な役割を果たしているのは、その鼻先の角なのよ。コルヌドライブで使える魔法が癒しや救済に関するものばかりなのも、そこに由来している>

『ただの……角じゃないってことですか』

<そう。正直に言うと、その角を失うと、アンタはこの先、もしも人と出会っても会話ができなくなるし、回復や補助魔法も初歩のものしか使えなくなる。それでも彼女を助ける?>

『助けます』


 即答すると、ユィーハは目を細めた。少し怒っているようにも、悲しんでいるようにも、どこか誇らしげに思っているようにも見える、感情がない交ぜになった表情をしていた。


<時間がないから理由は聞かないわ。だから、一応聞いておくけれど、後悔はないわね?>

『ありません』


 かなり迷った。

 けれども、これから人の世で生きられないのなら、人の言葉が話せなくても、そこは問題ないのではないかと思った。

 それに、リチュアと会話がしたければ、トリトンの加護があれば、意志疎通はできる。

 そこまで考えて、


『あ、でも、フローチュアと話ができるかどうか……それだけが不安ですかね』

<覚悟に水を差すようだから正直に言うとね、多分フローチュアとも会話できるわ>

『それは、どうしてですか?』

<それは起きたリチュアか、フローチュアが目覚めた後にでも聞きなさい。もしもリチュアが話さなかったとしても、フローチュアに関しては、多分リチュアが起きた後に何か言っておいてくれるでしょうから、どうにかなるわよ、きっと>

『え、そう、なんですか』

<まぁやり方は色々あるってことよ。だから、フローチュアやリチュアとの会話に関しては気にすることはないわ>

『じゃあ、問題ないですね。やりましょう、オーバーロード』


 言い切ると、ユィーハは今度こそ、苦笑を浮かべた。


<マトにそこまでする義理、あるかしらね>

『ありますよ。トリトナに殺されそうなところを助けてもらいましたし、加護もくれましたから』

<OK、アンタが相当馬鹿……お人好しだってことはわかったわ>


 言われるまでもなく、結構馬鹿なのだろうと、自分でも思っている。

 だがカイトは、この選択をしたいと、思っている。

 フローチュアが苦しんでいた自分を全力で助けてくれたように、自分もまた、この苦しみ抜いた海竜を助けたいと思ったのだ。


<決意は固いようね。いいわ、教えてあげる>


 ユィーハから手短に方法を教わり、カイトはマトへと向き直った。


<それじゃ、後は頑張りなさい>

『はい、ありがとうございました』


 ユィーハの幻が踵を返しながら視界から消えた。

 完全に静けさを取り戻した海底で、カイトは鼻先の角に魔力を集中させた。コルヌドライブの時に使用するものを遥かに上回る魔力が溜まっていき、角が激しい光を放ち始めた。


『マト、戻ってこい』


 額の双角が刺さらないように注意しながら、鼻先の角を彼女の体にそっと宛がい、結びの言葉を紡いだ。


『オーバードライブ』


 鼻先の角が、爆発しそうな魔力と、太陽のような輝きとなって、マトへと流れ込んでいった。




          ‡




 その時、世界中で、巨大な魔力の爆発が起きた事を感じ取った者たちが何かしらの反応を見せた。


 その中で、顔を上げた一人の人間の、女性がいた。

 鮮やかな赤髪から覗く、星が輝く夜空のような瞳が明後日の方角を見つめる。


 彼女は少し考え事をしていたかと思うと、執務机の上に山を作ってた仕事の書類の束を退けて、植物製の白紙を一枚置いて、スラスラと筆を走らせる。

 やがて書き上がったそれを折りたたみ、新しい白紙を折って作った封筒へ入れて蓋をすると、蝋を垂らし、右手の中指に着けていた指輪で封をした。


 そして、封筒の表面に届ける相手の名前と住所を記すと、友人であり、戦友でもある部下の女性を呼んで、それを渡した。


「これを、差出人の下へと届けて欲しいの」

「いいけれど、急にどうしたの?」

「わからない」

「わからないって……」

「でも、今、自由に動けるのは、この人だけなの」

「つまり、緊急性の高い案件って訳ね。わかったわ。信頼できて一番速い伝手に届けてもらうから」

「ありがとう」


 部下の女性は手を軽く挙げて応えると、踵を返しながら、手紙を懐へとしまった。

 その表紙に記されている名前は、彼女たちにとって、友人であり、戦友である、一人の男のものだった。


 手紙の冒頭には、こう書かれていた。


「親愛なる冒険者キール・ストライク

 急にごめんなさい。それでも、今、自由に飛べるのは貴方しかいないんです。

 どうか至急、サンドリア大陸のトライティアへと向かってください。

 何かが起きようとしています――――」




           ‡




 マトリックスが目を覚ますと、見慣れた海底洞窟ではなく、微かな陽光が届く海底だった。

 魔照石のない、ごくごくありふれた、海の中の光景だ。

 だが、それだけのことが、清々しさを感じるほどまでに心地よかった。

 一度だけトリトナを試すために出て以来見ていなかった日の光を感じながら、同時にいつも胸の奥に蠢いていた邪悪な気配が消えていることに気付いた。

 地下に作り上げた洞窟の存在も感じ取れなくなっていた。どうやら、完全に崩壊し、消滅したらしい。


『……私は……ようやく、自由になったのか……』

『あぁ、望み通りな』


 声のした方に首を動かすと、カイトの姿を捉えた。

 シーシャドウと戦った時のように成体となった彼は、眠るリチュアを守るように、彼女の傍に座っていた。


『カイト君。君、角が』

『あぁ、気にするな』


 鼻先の角が消えたカイトは、あっけらかんと言ってのけた。

 キャリバー種にとって、鼻先の角がどれだけ重要な存在であるかを、マトリックスは知っていた。

 それを失うということは、癒しの力を行使できるコルヌドライブを失うということである。

 それに、あの角は言葉が通じない他の種族とコミュニケーションを取ることができる、一種の翻訳装置も兼ねている。

 つまり、守りたい存在が傷ついた時、彼にはもう癒す方法がない上に、意志疎通がほとんどできなくなったのだ。


 キャリバー種の角は三本とも強靭であり、折れることはまずない。

 そのため、もしも角を失うとすれば、それほどの強敵と壮絶な死闘を繰り広げたか。

 もしくは、


『まさか、オーバードライブを使ったのかい』


 理不尽を覆す、奇跡に近いコルヌドライブを使ったか、である。

 オーバードライブを使用した個体を見たことはないが知識として知っていたため、マトリックスはすぐにその要因にたどり着いた。

 そしてそれを使用した対象は、紛れもなく自分であることも瞬時に理解した。


『……何で……そんな事をしたんだい……』

『言っただろ。必ず助けて皆にごめんなさいしてもらうって』

『そんな事のために、わざわざ角を捨てたのかい? もうそれは回復魔法で生やすこともできないんだよ?!』

『みたいだな』

『な……な……何でそんな他人事なんだ!』

『いや、自分で決めたことだから』

『そうじゃない! そうじゃないよカイト君!』


 マトリックスは首を傾げるカイトに苛立ちと悲しみを覚えた。


『鼻先の角は、キャリバーにとってとても大事な器官なんだ。折れただけならまだどうにかなったけど、消失したのなら戻らないんだよ』

『だから知ってるって。でもそうしないとお前、死んでたぞ』

『それだけの事はやってきた自覚はある』

『じゃ、その分、トリトナやレイラちゃん、人魚たち……後、シーシャドウを守ってやってくれよ』


 カイトはそう言って取り合わない。

 彼の目は本気で、マトリックスが生き残っていることへの安心感に溢れていた。


 マトリックスは気味悪さを覚えて、言葉を詰まらせた。


『それに、邪神の加護とやらは消えた。お前はもう自由だ。だから、これからは罪滅ぼしをしながら、自分なりの人生……というか、生き方をしてくれたらいい』

『……君は……私が憎くないのかい?』

『憎くはないけど文句は山ほどあるな』

『もっと憎めよ私を!』

『だが断る。何でそんな無駄な事をしなくちゃいけないんだよ。するだけエネルギーの無駄だよ』

『普通は私を殺してやると息巻いてもおかしくないんだぞ?』

『だぁぁぁぁっ! いい加減にしろお前!』


 リチュアを起こさないようにか、加護による通話の中でも声量を抑えながら激昂するという芸当を見せたカイトの圧に、マトリックスはまたも口を閉じざるを得なかった。


『いいかマト、お前! 俺は別にアンタを殺したい程、憎い訳じゃないし、かと言って別に許した訳でもねーよ。けどな、俺はアンタを助けたかった。腕……じゃなくて、足の一本とかなら躊躇したかもしれないが、鼻先の角が無くなるくらいなら別に問題ないんだ』

『いや、他の生物に例えるなら足一本どころか、そこに内蔵の一つ二つを一緒に持って行かれるようなものだよ?!』

『グロデスクな例えしないでくれよ……夢に見たらどうするんだ』

『君はそれだけの事をしたんだよ!!』

『うるさいわね』


 迷惑だと言う感情の籠った、不敵な幼い少女の声が、加護を通して頭に響いてきた。

 カイトの傍に倒れていたリチュアが目を覚まし、上半身を起こした。


『まだ寝ていなくていいのか?』

『大丈夫よ。気を失う前にたらふくポーション飲んだから』


 リチュアは背伸びをすると、マトリックスとカイトを交互に見て、肩を竦めた。


『で、何があったか教えてくれる?』


 大まかにリチュアが気絶した後の事をカイトも交えて説明すると、リチュアはため息をついた。


『カイトもアホだけど、マトもしつこ過ぎ。コイツがしたことなんだから、もう受け入れなさいよ』

『俺の扱い雑だな』

『うるさい黙りなさいお人好しトプス』

『酷い言われよう!』


 喚くカイトを無視して、リチュアが続ける。


『マト、アンタがどれだけ理不尽な業を背負わされていたかは、理屈でわかっていても、その苦しさを真に理解できる人は、同じ境遇を味わった奴だけよ。それと同じで、コイツがアンタを助けようとした気持ちも決断も、アンタには真に理解できないの。

 それとも、理解しているけれど、それを認めるのが怖い?』


 図星を突かれて、マトリックスは返答することができなかった。


『……マト、私がアンタに言いたいことは、カイトが勝手にやったことだから、アンタが気負う必要はないってこと。それでも勝手に気負いたければ、せめて自分が振り回してきた奴らを助けてくれれば、私たちが言う事はないわ』


 突き放すように言って、リチュアは踵を返し、手を翳した。すると、戦いの余波で遠くに散っていた武器や道具が全て彼女の前に集まってきた。

 カイトが目を丸くしている横で荷物を纏め、加護のおかげで水圧を無視できる利点を利用して彼の背中に載せて、ベルトの長さを調整して固定しながら、リチュアはまた口を開いた。


『レイラって子、遠視したのなら知ってるわよね。あの子、魔法使いとしてメッチャ期待株なんだけど、ちょっと育ててみてくれない? それで、私はほぼチャラにしてあげる』

『ほぼ……って』

『後はそうね。アンタが誰かを助けた時に、開口一番もういいわよって言ってくれる人がいたら、それで私はチャラにしてあげる』

『何だい、それは』


 言っていることが滅茶苦茶だが、要するに、彼女もカイト同様に、自分の行いを“許した”ということなのだろう。


『……君は本当に変わった妖精だね』

『アンタに言われたくないわね』


 リチュアはカイトの背中に飛び乗ると、荷物入れに背中を預け、口を閉じてしまった。


 最後の最後まで正体のわからないドライアドだったし、警戒すべき点はいくつもあるものの、マトリックスはこのリチュアという妖精を気に入っていた。


『いいよわかった。トリトナや人魚たちが許してくれるなら、レイラ君に私の持つ魔法と知識を授けよう』

『そうしてくれ』


 カイトが立ち上がり、荷物の固定具合を確かめるように体を揺らした。その巨体が子どもの姿に戻る様子はない。


『カイト君、君の体はもう、そのままだろう』

『え? マジで?』

『マジ?』

『本当かって意味』

『なるほどね。そう、本当さ。君の体はオーバードライブの使用に加え、私との戦闘で魔力が馴染んでしまったようだから、肉体がそれに適応してしまったんだ』

『そうか。でも、こっちの方が色々と都合がいいから、俺としてはありがたいかな。けど、襟巻が小さいままなんだよな……』


 そこまで言って、目を開いたカイトが縋るように見上げてきた。


『って、さっき一回だけ、襟巻が大きくなったんだけど、あれは?!』

『あぁ、あれか。キャリバー種は戦闘意志が高まると、襟巻部分から熱と、使用された魔力の残滓(ざんし)を吹き出すんだ。それが襟巻の肥大化や、巨大な盾のようにも見えるんだよ。そして、額の角は槍に見えるから、盾と槍を構えた騎士にも捉えられる。だから、キャリバー種は角鎧竜(かくがいりゅう)とも呼ばれる』

『角鎧竜』


 つぶやき、目を輝かせるカイトに、マトリックスは、また強い罪悪感を抱いた。

 だが、それを逃げる理由にしては、彼とリチュア、そして巻き込んできた者たちに失礼だと思い直し、何でもないように振舞った。


『そうさ。君はこれから、角鎧竜のカイトだ。邪神の野望とその眷属を打ち破った、若き騎士さ!』

『いや、騎士って柄じゃないんだが……』

『ふふ、例えだよ。でも、騎士って言葉に理解も示せるか』


 これまでの様子から、彼が普通のキャリバーでないことはわかっていたが、ここでマトリックスは、一つの仮説へとたどり着いた。

 最も、それを口にするような無粋な真似はしなかった。


『さて、それじゃあ、人魚の街へと向かうよ』

『私たちも行くわよ。物資を補給したいし。空き瓶を処分したいし』

『地上に出たら重たいもんなぁ』

『今のアンタだったら全然気にならないわよ』

『キャリバー種は力持ちだからね』


 言いながら、マトリックスは一頭と一人と共に、人魚の街へと進みだした。


『マト』


 カイトが名前を呼んだので、目だけで応えると、彼はその広く優れた視覚でそれを拾い上げたのか、小さく笑った。


『この道は、アンタの明日へと続いていく道だ』

『その前に、今日を生き残れるかどうかが不安だけれどね』

『まぁ大丈夫だろ、多分』

『他人事だなぁ』

『他人事だしな。けど、事情を説明したら、まぁ、レイラちゃんは味方してくれる……はずだ』

『だといいけれどね』

『私たちも一緒に話してあげるから、まぁ何とか極刑だけは避けられるように祈ってなさいよ』

『あはは、ありがとう、リチュア君』


 不安はある。だが、生き残った事に、後悔はない。


 カイトが言ったように、生き残ったらしたいことがあった。それを、今から少しずつしていこう。

 何、時間はたっぷりとある。




 大海竜マトリックスはこの日、世界の敵の呪縛から解放され、明日の道を歩み始めた。


メインターゲットを達成しました

マトの救出と全員生残(クエスト)をクリアしました


あと1分で人魚の街へ戻ります


ユィーハ「これで、よかったのよね、マトリックス」




オーバードライブ:鼻先の角に魔力を使用せずに限界を超えるまでひたすら集め、暴走させることで通常ドライブを遥かに上回る回復効果をもたらすが、代償に角を失う、キャリバー種の切り札にしてコルヌドライブ最大最終奥義。その力は奇跡に近いが、代償の関係上、生涯に一度だけしか使えないため、その個体が今後、癒しの力を失っても良いと思える相手が絶体絶命の危機に瀕している時のみ使用する。

 キャリバー種が時に騎士と呼ばれる最大の所以(ゆえん)

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