古代の血、覚醒の日
今回はあとがきが長いです。興味がありましたらお読みください。
「これが、俺なのか」
顔や体を動かして、色々な角度から自分の姿を映し出して、客観的に確認する。
俺の広い視界に入っている以上に、頑強そうで立派な体だ。襟巻が短いところがトリケラトプスの亜種と呼ぶにふさわしい(?)かもしれないが、ちょっと残念なところではある。やっぱり、もうちょっと大きい襟巻になってほしいなぁと思う。
それ以外に関しては、文句なしに、いや、俺が思っていた以上に強そうな恐竜の姿だった。
これなら、ティラノサウルスに襲われようが一撃でノしてしてまうに違いない。
あ、でも末姉や育ての親夫婦ら家族の一族はどうだろう。鳥っぽいティラノサウルスは異世界の種族、俺のように魔法を使えるかもしれないし、できれば戦いたくないな。、
そんな事を瞬時に考えて、俺はユィーハさんに礼を言った。
彼女が手を引くと、鏡は出てきた時と同じように、音もなく瞬時に消えた。
「どう? 自分の状態は?」
「えと、自分で確認していた以上に強そうだなと」
「きっと貴方が思っている以上の力を持っているわよ。それを今から確認していくの。その後は、アンタにいくつか魔法とスキルを教えるわ」
すらすらと言葉を並べていくユィーハさんに、そこで待ったをかけた。
「ありがたい話ですが、その前に、二つだけ教えてください」
「いいわよ。私も急かしている訳だし、答えられる範囲であれば答えるわ」
「それではまず、先ほどまで俺がいた家や家族、それからここがどういった場所なのかを教えてください」
「アンタのご家族と自宅も、街も、そしてこの場所も、全部……そうね、夢と思ってもらっていいわ」
「夢……」
言われて、自分でも不思議な程しっくりと納得できた。
マトの攻撃を浴びた後からいきなり意識があそこへ飛んでいて、なおかつ俺は生きているという。
そして、ユィーハさんに連れられて不思議な体験をしているのだから、夢と言われて納得できたのだろうか。
けれども、家族の反応は、夢とは思えない程に鮮明で、温もりもしっかりとあった。
夢というには、あまりにも現実味に溢れていた。
それでも、これは夢なんだと、胸にこみ上げる悲しさを堪えた。
「わかりました」
「すんなり……とは言わないけれど、一応は納得したわね?」
「言われたら、あぁそうかって納得しちゃったんです。我ながら驚いています」
「さっき精神安定用の魔法を撃ちこんだ影響か……まぁアンタの生来の気質も関係しているでしょうね」
気になることを言われたが、二つ目の質問には、それに関したことだ。もしも答えがあったら御の字だ。
「では、次の質問へ移ります」
「どうぞ」
「貴女が何者か、それは仰られた通り、最後に教えていただければそれで構いません。ですが、先ほどから魔法を行使している……ようにお見受けします。貴女は魔法使い、なんですか? それとも……」
何か、妖精の類なのか、と続けようとしたら、ユィーハさんが手で制してきた。
「それも後で教えようと思ったけれど、いいわ。それくらいなら」
すると、ユィーハさんは踵を返して、一歩、二歩と離れてから振り返り、えっへんと胸を張った。
「見ての通りよ!」
「見ての通りって……」
見た感じ、めちゃ美人の日本人のお姉さんって感じだが……。
後、パーカーの上からでも、スタイルの良さはわかる。
「カイト君や。例え草食動物の視界を手に入れていようと、視線と言うのは感じられるのよね?」
「すみません」
素直に頭を下げて謝った。いや、ちらっと見ただけで、別に特別意識をした訳ではない。
「OK、許してあげる。別に悪意はなかったって分かっているし」
「ありがとうございます」
「んで、疑問は解けた?」
「えと」
「よし、じゃあ今度こそ本題ね!」
俺がわかんないと言う前に、ユィーハさんはさっさと進めてしまった。
ダメだ、この人のノリとテンポがわからない。
「とりあえず、もう思い出してるとは思うけど、アンタはマトのスキルを受けて消し飛びかけた」
「はい。あっ、リチュア!」
そう言えば、アイツとフローチュアはどうなったのだろうか。何で二人の事を今の今まで忘れていたんだ!
「落ち着きなさい」
またユィーハさんが手を翳した直後に、いきなり気持ちが落ち着いた。
「フローチュアは無事よ。リチュアもね」
「本当ですか?!」
「本当よ」
ホッと胸を撫で下ろす俺の鼻先の角に、ユィーハさんが背伸びをして触れてきた。
「アンタが助けたい人たちを救うには、マトを止めなくちゃいけない。けど、彼女はかなり強いわ。シーシャドウを止めた今の状態のアンタでも、あの子には敵わない」
ユィーハさんのきっぱりとした言葉に、思わず呻き声が漏れた。
シーシャドウは、俺がこれまでに戦ってきた中で、上位の化け物だった。それをどうにか退けることができたこの姿なら、と思ったが、そう上手くはいかないようだ。
理由は、自分でもわかっている。
最後に浴びたあの破壊光線は、シーシャドウよりも実力が高い竜種の、クロウのどの攻撃よりも苛烈だった。
真っ先にゴ○ラの放射熱線が頭に浮かんでくるような、凄まじい攻撃だった。
「マトが撃ったあの、最後の光線は何だったんですか?」
気付けば問いかけていた。
ユィーハさんなら、何か知っているかもしれないという、謎の信頼が俺の中で生まれていた。
そして、それは的中した。
「オーラル・エレクトリック・ブラスター。口から発射される、荷電粒子砲みたいなものね」
「かでんりゅうし……?」
「エ○ァってわかる? アニメの」
「あ、はい」
「それで、○ヴァとラミ○ルが撃ち合った奴、と考えればいいわ」
「あぁ、なるほど」
それなら、母さんが全話見せてくれたのを覚えているのでわかった。そう言えば、作中で荷電粒子がどうのとか言っていた気がする。ラ〇エルの攻撃に関しては、専用のシールドでも十数秒しか防げないっていう、かなり滅茶苦茶な威力の技だったはず。
「って、それ絶対防げない奴じゃないですか!!」
「そ。しかも、アレと違って厄介なのは、チャージ時間がないってところね。威力を考慮しなければ連射できるのよ」
「は?」
「後は、撃った後の硬直がないとか、自身の冷却とか、エネルギーの残量を気にするとか、地球の磁場の影響とか、そう言ったものを全く気にしなくていいってところかしら」
「はぁ?!」
何だその僕の考えた最強の必殺技じみた性能は。
元から反則的な威力があるのに、それに見合うだけの弱点すらないってどういうことだ。
そんな隙のないものに、いくら竜種でも、一生物である俺が太刀打ちできるはずがない。
「チート……って奴か」
思わず、生前に聞いたことのあるフレーズを口にした。その直後の事だった。
「は?」
ユィーハさんが目を座らせ、低く重たい声を発した。先ほどまでの溌剌とした様子からは全く想像の付かない、恐ろしい雰囲気を発し始めた。
思わぬ状態に後ずさりそうになった俺に、ユィーハさんは静かに、しかりはっきりとした口調で、
「今、チートって言った?」
「は、はい」
「チートって、何か知ってる?」
「えと……」
確か、ずるいこととか、そう言う、ネガティブな意味だったはずだ。友人たちは、漫画の登場人物たちがあまりにも強い能力を持っていた時に、嬉々としてチートだと言っていた気がする。
俺がそう言った旨を伝えると、ユィーハさんはこくりと頷いた。
「そう。まぁ、言いたくなる気持ちはわかるけれどね。別にアレはチートじゃないわ」
「でも、ユィーハさんの言った通りの力なら……」
「化け物染みているって言う意味なら同感だけれど、断じてあれはチートじゃないわ」
「でも」
「でもも案山子もないのよ。私の前で軽々しくチートという言葉を使わないで、いいわね?」
よくわからないが、生前にも友人の一人が、チートという言葉をいたく毛嫌いしていることを思い出した。確か、ゲームが大好きで、チートをするプレイヤー、いわゆるチーターという存在を憎んですらいた。
彼女の事を思いだして、俺はそれ以上反論せずに頷いた。
すると、ユィーハさんはため息を吐いて、自分の額に手を当て、バツが悪そうに眼を逸らした。
「ごめんなさい、ちょっと熱くなりすぎたわ」
瞬時に怒気が消え、恥じ入る様子の彼女に、正直なところ心も感情も全く追いつかないが、彼女に悪気がないことだけはわかったので、問題ないと伝えた。
「それよりも、どうしましょうか。と言うか、俺、これからどうなるんですか?」
「これからここで修業して、現実世界に戻ってもらうわ」
「戻れるんですか?」
「えぇ。そして、そのためには、アンタにいくつかやってもらわなアカンあんねんけど、ってところ」
ユィーハさん、関西人かな……言い直してたけど。いや、今はそれよりも大事なことがある。
「俺にできることがあるのなら、教えてください!」
「いいわ。なら、ロスしちゃった時間分、滅茶苦茶張り切ってやっちゃいましょうか」
その後、俺はユィーハさんから、みっちりと修行をつけられた。
死ぬかと思うようなことは、させられなかった。
だが、彼女が規格外の力を持っている事を思い知らされ、その一部を俺に教えてくれた。
修行が終わり、現実へユィーハさんが戻してくれることになった。
「お世話になりました」
「どういたしまして。さ、リベンジに行ってらっしゃい」
「はい。ユィーハさんも、どうぞお元気で」
「えぇ。しっかりマトを助けてきなさい」
「了解です!」
ユィーハさんと、不思議な世界が薄れて消えていき、次の瞬間、苦しむ様子のマトが見えた。
「助けて……私は……邪神の配下になんかなりたくないっ!」
言葉が聞こえてきた。海の中に木霊する歌のような鳴き声が、人間語となって俺の頭が勝手に理解する。
不思議な世界でユィーハさんが、マトは何者かによって自由を奪われていることを教えてくれていたので、俺はさほど迷うことなく、
『わかった』
早速、ユィーハさんから教えてもらった魔法を使って、奴の横面に一発ぶちかましてやった。シールドが出現したようだが、俺の攻撃はそれを障子紙同然に突き破って、かなりの損傷を奴に与えていた。
夢の世界に行く前まで、俺の攻撃を受けても無傷で平然としていたマトが、驚いた様子で振り返ってきた。
奴の目と表情は憔悴しきっていて、今にも泣き出しそうだなということが、わかった。
『…………嘘、だ』
加護に乗って掠れた意思が伝わってきた。
確かに、俺も同じ立場だったら驚くな。
死んだと思っていたはずが、しかも成長して目の前に現れたんだから。
『嘘じゃない』
『だって、君は死んだはず』
『勝手に死亡扱いするんじゃない。俺もアイツも無事だよ』
後ろの視界には、マトの攻撃を受ける前と同じ場所に横たわるリチュアの姿があった。
マトの本気で驚く様子が、まるで人間のようで、思わず笑みが浮かんでしまう。本当に、人間くさい奴だな。
『カイト君……なのかい……?』
頷くと、マトは目を見開いた。
かと思うと、
『私を……殺して……』
必死さがこれでもかと詰まった、悲しい言葉を発した。
どんな事情があるにせよ、あれだけ自分勝手に皆を振り回しておいて、言うに事欠いてそれかと、俺の中でちょっとした怒りが生まれた。
だが、殺したい訳じゃない。憎みたい訳でもない。
だから、お前の言う通りには絶対にしてやらない。
『あぁ、お前は、俺たちが助ける! 生きてちゃんと皆にごめんなさいしてもらうからな!!』
ユィーハさんから託された力を感じながら、俺は泣きながら戦闘態勢を取る大海竜に啖呵を切ってみせた。
〇ユィーハ
種族:人間
性別:女
二つ名:超越者、破天荒な先生、他多数、角鎧竜の師匠(NEW!)
〇様々な制約があり、あえてそれに準じているため、夢の中、カイトの特訓でしかその力の全てを行使しない。
TIPS:名前は本来のものを少し変えている。さらに、真名を使ってもユィーハをどうにかすることはできない。
〇カイト
種族:キャリバー(成獣)
性別:男
二つ名:不屈の角鎧竜、時を超えし超越者の弟子、戦車
魔法(非パッケージング):
・アースショット:星の力を借りて放つ可視光弾。成獣となった事で威力、操作力、飛距離、速度、すべてが別次元クラスへ上昇した。一度外しても、額の角を用いてコントールし、後ろから再度狙うことも可能。方法はリチュアに教わった。
・サンダー:額の一対の角を用いて非自然現象の雷を発生させる。使用方法は夢の中でリチュアに教わった。威力や発生ポイント、電流の向きなど調整可能。
・身体強化:ただでさえ人類を凌駕する身体能力を持つキャリバーの身体能力をさらに向上させる。その力はもはや『怪獣』と言っても差し支えない。それでもカイトのレベルでは中級以上の魔王には及ばない。
・シールド:グランドシールドクラスの防御力を有しており、細かな操作も可能とする。
・ネイチャーブラスト:三本の角をアンテナにして強力な魔力操作で環境も操作する。但し、人類よりは強いだけで、妖精には及ばない。
・バイタルドライブ:生命力を回復、強化する。また、飢餓も満たし、癒す。
・ヒーリングドライブ:生命力を回復し、心身の損傷を超強制的に修復し、完全に癒す。
・マナドライブ:魔力を回復し、強化する。
・ホーリードライブ:聖女以上の出力で、あらゆる邪悪や呪いを浄化する。
・レクイエムドライブ:死した者を弔う。死して尚囚われた者を超強制的にあの世へ送り出す。
・ディバインドライブ:人を含めた生物・非生物のあらゆる罪に対して罰と償いを与える。
他、多数の効果を顕現できる。また、状況によって新たに生み出したり、既存のドライブを組み合わせることなどもできる。
歴戦のキャリバーとなれば、中途半端な魔王など歯牙にもかけないほどの戦闘能力を有しており、コルヌ・ドライブの数や技量はとんでもないものになっているうえ、使い時を見極めて的確な一撃を繰り出してくる。
・ヴォルカニック・ゲイザー:星の力を借り、指定した限定された場所のみを噴火させる。威力は見た目以上で、溶岩の熱も相まって、食らえば並大抵の生物は死滅するか、宇宙空間へ飛ばされて死亡する。威力の調整が可能で、噴火させず、岩の柱を勢いよく出現させることも可能。カイトではまだ威力の調整ができないため、惑星の血のアッパーが標的を容赦なく襲う。
スキル(非パッケージング):
・コルヌドライブ:鼻先の角を用いて、対象に魔法効果を強く与える、キャリバーの代表的なスキルであり、最大の特徴である。魔法にある各種ドライブはこれを用いて発動させる。
・バイコーンドライブ:額の二つの角を用いて行うドライブ。コルヌドライブと違い、超攻撃的な効果のある魔法がほとんどで、回復や補助効果のあるものは非常に少ない。カイトはサンダードライブとアースドライブの二種類しかまだ使えない。
・グランダッシャー:鋭く丈夫な三本の角と、頑強な超重量の巨体を、身体強化とネイチャーブラスト(風、水中なら水)を用いて、標的へ高速の体当たりを仕掛ける。その様子は戦車を彷彿とさせる。さらにシールドを組み合わせ、各種コルヌ・バイコーンドライブを自分へかけた状態となるともう手が付けられなくなる。教えたのはリチュア。
・魔法槍:頑丈な二つの角に魔力を纏わせ、馬上槍のようにして攻撃する。これにグランダッシャーを組み合わせたカイトの一撃は、二段階上の魔王や防御特化の魔族や魔物に致命傷を与える。
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――――彼は戦士ではなかった。戦士にならざるを得なかった者だったが、大樹の妖精の女王に祝福され、騎士となった。彼は女王と共に旅をし、一人の騎士として成長していった。経験もなく、敵に対して甘さが目立ち、危機に陥ることも少なくなかった。そして彼はついに、大海竜との試練において、騎士としてまた一つ成長した。
――――――ナーサリィライム文庫 第二巻コルボレオ大陸とサンドリア大陸の生物と伝承
第五章サンドリア大陸 実在した竜種の伝承 キャリバー種 カイト P.218より抜粋
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ユィーハ「がんがりなさいよー? って、まぁ、アンタが我儘貫き通したから、私がここにいるのよね……。卵が先か鶏が先か……いや、アイツが関わっているなら、その辺の問題も……それとも、ザタークのせい? もしくは……ううん、どうでもいいか。この結末がどうなっているのか、その真実を見させてもらおうじゃない!」
フローチュア「大丈夫だよ、だってカイトだもん」
ユィーハ「貴女のそう言う裏表のない気持ち、嫌いじゃないわ。本当、こんなに素敵な子、もったいないくらいだわ、カイト。だから、思う存分、やっちゃいなさい!」
EDテーマは特殊回なので『リーフジャーニー』オルゴールアレンジです(全方位土下座級超嘘
ラストは決まりました。そして、この話を上げるのと同時に、前々話までを第六話を前編、第七話を後編として分割します。
次回、古代の血、明日への道
アテナ「明日を諦めない。それがこの星の生物よ!」




