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古代の血、魔宮の司

お待たせしました。前半で終わらせるとは何だったのか(遠い目

 マトのブレスの雨あられをギリギリで躱し続けながら、出口を目指した。

 だが、突然出口の穴が岩壁で塞がってしまい、直前まで迫っていた俺は急カーブをする羽目になった。

 リチュアが背中の上で上半身を横へ大きく逸らし、そこを水ブレスの一部が通過して行く光景が視界に入り、肝が瞬時に冷えた。


「リチュアッ!?」

「掠ってもいないわ!」


 言いながら、リチュアは背中と荷物入れの間に隠していた弓矢を取り出した。


「お前の言う通りか。本当にそれを使うことになるなんて……」

「全くもって同感だわ」

「そもそも、それ、アイツに通じるのか?」

「さぁ?」

「さぁってお前……」


 言い合いながらブレスを回避し続けているが、陸地部分は激しい水鉄砲で穿たれ、穴ぼこだらけになっている。まとな部分はもうなく、足を取られないように走ろうとすると速度が落ちてしまうため、瞬時に着地地点を判断しながら動き続けなければならない緊張感を強いられている。


「これでどうにもならなかったらその時はまたその時。それより、アンタは逃げ続けなさい」


 上下左右に激しく揺れる背中の上で、リチュアは矢を番えて弓を引いた。その姿勢は美しく、芯がぶれていない。


「チェーンッ!」


 リチュアの体と俺の胴体が、魔法によって構成された鎖で結ばれる。これで、万が一にもリチュアの落下は考えなくてもよくなった。


「さぁ、やるわよ!」


 すでに狙いを定めているリチュアの掛け声に、すぐに返答できなかった。

 マトが怪しいと、シーシャドウの戦いの時に、何となく思ったが、できれば外れて欲しかった。

 アイツとは、何となくだが、仲良くなれる気がしていたからだ。

 だから、余計に悲しく、すぐに戦うなんて気持ちにはなれなかった。

 以前の俺なら。


 けれども、トリトナやレイラちゃん、人魚たち、シーシャドウの苦しむ姿を見た今、それを上回る怒りが、俺の中に生まれていた。

 悲しくて、悔しくて、頭にも来ている。

 だから、一呼吸置いて、俺は返答することができた。


「おう!」


 アースショットを周囲に展開して、マトへと向けて発射する。

 惑星のエネルギーを借りた攻撃は、マトへとぶつかるが、奴は避けようとすらしなかった。

 全弾命中した大地の魔力弾は、その巨体にかすり傷一つつけることができなかった。


「練り方が甘いね。こうするんだよ!」


 奴の周囲のブレスの魔法陣が全て掻き消えたかと思うと、入れ替わるように巨大な魔力弾が出現した。

 あれが、全部アースショットだって言うのか?!


「アースショットは、今、地上の人類たちには地上戦専用の、大地属性の魔法弾として広まりつつあるらしいけれど、こいつの本来の威力はそんな枠には収まらないのさ」


 マトの解説と共に降り注ぐ大地の魔弾を、今度は着地地点を考えて右へ左へとステップを踏むように躱していく。

 こちらもアースショットで相殺できないか試してみたが、奴のアースショットの前に押しつぶされてしまった。


「レベルが違い過ぎるわ。アンタは避けることだけに集中!」

「了解した!」


 リチュアが弓を限界まで引き絞り、マトへ目がけて矢を放った。

 先端に付けられた矢じりはタクティカル・ボアの肋骨を削って作ったものだ。果たして、あんな大きな生物にダメージを与えられるのかと不安になったが、リチュアの放った一矢は、マトの首の下部に深く突き刺さった。

 魔法弾でダメージを一切与えられていなかったのにも関わらず、小柄なリチュアの攻撃が刺さったことへの驚きの余り、俺は声が出なかったが、動きは止めなかった。

 マトは目を細め、くつくつと笑い声を漏らした。


「やるじゃないか……その弓、で出せる最大の威力といったところかな? でも、君の力ではそこまで引き絞ることができないはずだ」


 リチュアは何も答えない。


「となると、答えは一つ……君、身体強化を使っているね」

「ご明察」


 短い返答と称賛と同時に、リチュアの第二射がマトの首に命中した。

 身体強化、恐らく聞いた通りの効果の魔法だと思うが、リチュアの奴、そんなものまで使えたのか。

 リチュアはそのまま矢を何と三本取り出し、弓に番えて……ってそんな事もできるのか?!

 なんて俺が驚いているのを他所に、リチュアは三本の矢による攻撃を行った。流石にマトはそれを回避しようと首を回したが、一本が刺さった。


 俺はまだ驚いた。

 それまで刺さる事には刺さっていたが、余裕を崩さなかったマトが、全力で回避行動に移っていたからだ。

 と言うか、マトの動きが、若干遅くなっている気がする。どこか、奴の表情も余裕がなくなっている。

 リチュアは手を休めずに今度は一本ずつ、しかし素早く撃ち込んで行く。マトも全てを躱しきれず、何本も首に刺さり、何本かが頭に命中すると、呻き声を上げた。


「ぐっ……これは……毒かい?」

「どうかしら? でも、かなり効いて来たんじゃない?」

「た、しかにねぇ……けれど、解毒自体はできるよ!」


 しまった、アイツ、回復魔法が使えるんだった。

 アースショットを練り上げ、どうにか奴の気を逸らせようと顔面へ殺到させてやる。すると、マトが苦悶の声を上げて顔を仰け反らせた。


「目に当たったわね。ナイスよ!」


 滅茶苦茶痛そうな解説をリチュアがしてくれた。そうか。表面がダメでも、目玉や口の中と言った部分は弱いって、大体の生物の弱点だよな。


「今すぐ強固な魔弾を練れないなら、アプローチを変えればいい……そう、そうだよ、それでいいんだ……」


 マトの苦しげな中に歓喜が入り混じる声が聞こえてきて、ゾッとした。

 やっぱり、あの程度じゃアイツをどうにかできないか。


「視界の半分がやられた……やってくれるね、カイト君」

「謝る気はないぞ?」

「謝らなくていい。むしろ、もっと見せて欲しいんだ、君たちの可能性をね!」


 訳のわからない事を言いながら、マトの周囲にブレスの魔法陣と、アースショットが幾重にも出現した。


「あ、あれは不味いんじゃないか?!」

「アースショットで顔を狙いなさい!」

「そうはいかないよ」


 マトはそう言って、海の中に潜りこんだ後、残された魔弾と魔法陣が一斉に襲い掛かってきた。


「海に飛び込みなさい!」


 リチュアの指示に、俺は迷いなく海の中へと飛び込んだ。

 加護は……よし、大丈夫だ。

 マトからもらった加護は消えていない。


 行動にも、装備にも水が悪影響を及ぼさなくなる力のおかげで、俺たちは比較的楽に水中で行動が可能となったが……地上で行ったような素早い回避行動はできなくなった。


『さぁ、次のステージだ』


 マトの歌うような声が聞こえてきた。

 魔照石で照らされる海中に、マトの巨体が浮かび上がる。


 地球に居たどの海竜よりも巨大な生物の偉容は、まさに海の王者と呼んで差し支えないように思える。


『さぁ、魔力回復のギミックは外してある。後、リチュア君が使える魔法は二回。海の中では、いくら身体強化を施していても、弓矢の威力は限られている。そして、ここは私の領域。君たちには圧倒的に不利な状況だけれどどうする?』

『どうするもこうするもないな』

『えぇ。モーロン・ラベ。やれるものならね』

『うーん、よくわからない言語があったけれど、とりあえず君たちが諦めていないことはわかった』


 マトは含み笑いを漏らした後、海底に降り立つ俺たちを見下ろした。


『正直……解毒できなくてちょっと困っているけれど……海中なら動けないことはないからね』

『それが後どれくらい持つかしらね』

『それは君たちもだ。どれくらい持ち堪えることができるのかな?』


 リチュアとマトの舌戦の中、俺はマトが本気を出していない気がして、不安になってきていた。

 確かに、奴の攻撃は凄まじい。防御能力だって恐ろしい。

 けれども、アイツはあんな程度で済むような奴なのか?


 トリケラトプス(亜種)としての野生の勘と言うべきか、野生動物の力が働いているのか、奴の底がまだ見えていないように感じた。


『カイト、動きなさい!』

『お、おう!』


 リチュアに言われて海底を蹴って泳ぎだす。リチュアが装備を弓から銛へと変えている。つまり、接近戦を試みる訳だが……マトを相手に、接近戦はかなり危うい気がする。


『へぇ、水中で接近戦を挑むのかい?』

『悪い?』


 言いながら、リチュアが空いている手で杖を取り出し振るう。

 すると、そこから激しい水の横回転の渦が発生し、マトの腹へとぶつかった。


『む? これは、ネイチャ-・ブラスト? ……まさか?!』

『カイトォッ!』


 返事をせずに渦の中に飛び込んだ俺たちは、一瞬でマトへと接近し、得られた回転エネルギーを利用した一撃をそれぞれ放った。


 俺はアースショットを、リチュアは銛による一撃だ。

 射出された銛によって貫かれた場所と付近に魔弾を受けたマトの体から血が漏れ出した。


『……やるねぇ』


 一点集中の攻撃を浴びて、しかしマトの態度は余裕そうだった。

 やっぱり、これくらいじゃ、駄目か?!


『しかし、リチュア君。これで三つ魔法を使ってしまった。魔法の鎖、身体強化、そしてネイチャー・ブラスト。もう君が魔法を使うことはできないよ?』

『えぇ、そうね。いつもなら』

『何?』


 渦潮が解除され、すぐ近くで、俺たちとマトはにらみ合う。その中で、リチュアは荷物入れから素早く取り出していた小瓶の蓋をあけ、素早く口に中身を含んだ。

 それを見たマトが目を見開いた。


『ポーション? 人魚か!』

『スパークッ!』


 銛を伝わり、マトの巨体へ強烈な電撃が流れ始めた。それでありながら、すぐ近くにいる俺とリチュアに影響は全くない。

 理不尽な現象を前に、マトは呻き声を上げながら、やはり笑っていた。


『いいぞ……いいよ……流石は私が見込んだだけのことは、あるっ!』

『ネイチャー・ブラスト!』


 マトの周囲の海水が突然、氷結し始め、彼女の巨体を覆っていく。

 これも、リチュアが使っているのか。考えながら、アースショットをマトの傷口目がけて撃ち続ける。


 早く倒れてくれ。もしくは降参してくれ。

 いくらお前が巨大でも、これだけやられたらかなり痛いだろう?


『ははは……カイト君、気持ちにぶれがみられるよ。大方、私が諦めないかと考えているんだろうけれど……甘いね。リチュア君も何か言ってあげなよ』

『敵の言葉に耳を傾けるなと言いたいけれど、今は言わせてもらうわ。カイト、奴が諦めることはないわ。そもそも、ここを抜け出すには、奴を倒すほかない』


 リチュアが再び電撃を放ち、二本目のポーションを口に含んだ。


『こいつは……ダンジョンマスター。この海底洞窟は、こいつが作りだしたダンジョンなのよ。だから、コイツを倒さない限り、あの封じられた出口を開く術はないわ!』


海宮の魔王マトリックス

種族:大海竜

出身:魔界の温暖な浅海

年齢:不明

性別:女性

全長:80m

体重:約20,000t

称号:海原の賢者

魔法(非パッケージング)

・アースショット

・ランド・アイアンニードル

・グランド・ウインド

・グランド・ウォーター

・グランド・フレイム

・グランド・アース

・グランド・サンダー

・グランド・ヒール

・グランド・シールド

・グランド・ウォーターブレス

・グランド・メタモルフォーゼ

・ヴォルカニック・ゲイザー

・ラーン・プロムナード

・エア・プレッシャー

特技・奥義(非パッケージング)

・オーラル・エレクトリック・ブラスター

・マトリックス・ウェーブ












隠し称号:蒼海の魔王の弟子












【隠し称号】クッタクァの半眷属

『ふふふ、君はお気に入りなんだから、その時まで誰にも見つからないでちょーだいよ? トリトンの助けを期待しても仕方ないし、まして自害なんて私は許さないからねー?』

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