あ、流れ変わったなってなるOP前
そろそろ章付けしようかなと悩んでいたりするこの頃です。
それではアニメで言う所の第5話OP前のプロローグです。
前話のエピローグとか次回予告で「あ、山場来たな」とか「嫌な予感しかしない」みたいな展開がありますけど、ある程度覚悟できますよね。最新話プロローグでされるとドキドキ感が増しませんか?
「あ~!」
茶髪の男を見た途端、ベルルが目を輝かせて手を振りながら小走りに駆け寄った。
そして、何の躊躇もなく抱き着いた。
「叔父さん、来てたんだぁ!」
「おう、来ましたともさ、我が愛する姪っ子たちよ」
ベルルの頭を撫でながら、男はミーナに視線を向けた。そこにあるのは、親しい家族へ向ける、無償の愛があった。
ミーナも、近づきながら、頬が緩むのを自覚した。
「叔父様、ご無沙汰してる」
「半年ぶりだな、ミーナ。ベルル、背ぇ伸びたな」
「えっへへ~わかっちゃう~?」
最年少討伐者である、ミーナ・ストライクは、普段から無邪気な様子を見せている。
だが、彼女のパーティーメンバーよりも親しく、それこそ親戚であるミーナと同じような距離で接する相手は他に居なかった。
それも男だ。
しかも、普段よりもさらに甘えた言動になっている。
彼女の行動も相まって、他の討伐者や職員たちも、目を丸くして注目していた。
「ありゃりゃ、相変わらず人気者だなぁベルルは」
「もう皆、何見てるのさ~?」
と言いながらも、離れる様子の全くないベルルの顔はふやけている。まるで恋する乙女だ。
事情を知る、と言うよりも完全に話題の中心にいるミーナは、仕方ないと思っている。
「これで、ストライ一家、勢揃いだね!」
「いや、揃ったのは叔父と姪っ子二人だけだからな?」
やれやれと男は笑い、それからアリアとライラックへ、帽子を外して軽く一礼した。
「お嬢さんたちもお元気そうで何よりでさぁ」
「えぇ、お久しぶりです。ライラック、もしかして同行人というのは……」
「そう、彼だ」
「しかし、こう注目されるとは思いもよりませんでしたよ。全く、ベルル、狙ったな?」
「えへへ~。でも、叔父さんも乗ったじゃん?」
「仕方ないだろ。可愛い人気者に抱き着かれてる野郎なんて、恰好の獲物じゃねぇか。むこうでもこっちでも」
肩を竦める男に、ベルルは悪びれもせずに舌を出した。
注目を浴びる男は、周囲を見渡すと、ベルルを優しく剥がしてから、優雅にお辞儀をしてみせた。
「お騒がせしてすいやせん。
俺は冒険者のストライクと申します。
トライティア支部長からの呼び出しに応じて参上いたしました。
少しの間、御厄介になりますが、どうか、よろしくお願いしやす」
「私とミーナの叔父さんなんだよ、えっへん!」
「ベルル、今は叔父様が話している最中」
建物内が賑やかになっていく。
あの代わり者、雷炎のベルルとミーナの親族だ、と言う声があれば、騒ぎが輪をかけて広がっていく。
その中でも一際、目立って響いた声があった。
「冒険者……ってことは、大陸の向こうから来たんですか?!」
驚く声は、職員の赤髪の少女から放たれた者だ。
ミーナの記憶が正しければ、入ってまだ一か月の新人で、一般募集を通過した期待の新人(支部長談)だった。
彼女は隣にいた先輩受付嬢に「こらっ」と窘められて、慌てて口を塞いだ。
「おや、お嬢さん、冒険者をご存じで?」
ストライクは、感心した様子で話を振った。
新人受付嬢は先輩受付嬢をちらと見て、仕方ないからと頷かれたのを確認してから、ストライクへ向き直った。
「えと、はい! 魔獣や魔物、それからダンジョンと呼ばれる神出鬼没の迷宮や古代遺跡の調査をしている冒険家の方々……冒険者ギルドの組合員、ですよね!」
「その通りでさぁ! 何せできて二十年ぽっちなもんですから。こっちでは冒険者って言っても、首を捻られる方が多いので、驚きやした」
「え、えへへ……」
新人受付嬢は照れ笑っていたが、ふと、何かに気付いて、顔を上げた。恐る恐る、あれ、とでも言いたげに。
「あの、その、つかぬ事をお伺いしますが、もしかして、貴方は冒険者ギルドの上級冒険者キール・ストライク氏ですか……?」
「その通りです。いやぁ、冒険者ギルドだけでなく、俺のことも知っているとは、恐悦至極。お嬢さん、お名前をお伺いしても?」
「……はっ?! そ、そそそそ、ソフィア・ラクシアですぅ!」
ストライクが肯定した瞬間に硬直したソフィアだったが、先輩受付嬢に肩をつつかれて我に返り、どもりながらもどうにか名乗っていた。
その様子に、ベルルは大変満足したようで、誇らしげに胸を張っていた。
ミーナも、こちらではあまり知られていない冒険者である叔父の事を知っている者がいて、周囲の者がさらに彼の事を知ってくれることに、多少の嬉しさはある。
だが、目立っているので、少し恥ずかしかった。
「こりゃ、後でウォークの姐さんにどやされるなぁ……」
「大丈夫大丈夫~私がついててあげるからさ~」
「もとはと言えばベルルのせいだからな?」
「でも乗ったのは叔父さんです~」
そんな騒ぎも、数分もすれば収まり、普段の支部へと戻って行った。
とりあえず、ストライクは支部長がわざわざ声をかけるほどの実力者であり、大陸の向こうから来た冒険家の組合の上の人間であり、ミーナとベルルの親戚だという事で、落ち着いたようだった。
やれやれとまた肩を竦めるストライクの横では、ライラックがベルルの両ほっぺを引っ張ってお仕置きをしていた。それをアリアが苦笑して見守っていた。
ミーナも止めずにそれを見守っていたが、ふと、自分たちから一歩離れた場所で、青年が苦笑している様子が目に留まった。
その笑顔を見て、晴れ渡った空のような空気を、そこへ向かって伸びる大きな樹のイメージを、感じ取った。
先ほどの、死の気配とは真逆だった。
首を振って我に返り、ミーナはストライクに話しかけた。
「叔父様、それで、彼は?」
「ああそうだった。待たせて悪いな、坊主。恥ずかしいところも見せちまって」
「いいえ。家族と会えるのは、嬉しいことですから」
声変わりを終えている声が、ストライクを気遣った。
「叔父さん、そのお兄さん、誰?」
お仕置きが終わり、両頬をほんのりと赤くさせたベルルが首を傾げた。
ミーナだけでなく、アリアとライラックも、今度は青年へと注目する。周囲も多少視線を向け、聞き耳を立ててはいるが、先ほどまでのように騒ぐ様子はなかった。
青年は周囲をちらっと眼だけで伺った。
その時、ミーナがそれを見る事が出来たのは、丁度、彼女だけが青年の右手を見られる位置にいたからだ。さらに自分の体が影になって、ベルルたちや支部内の者には見えていなかっただろう。それに何の意味があるのか、その時、ミーナにはわからなかった。
ストライクは口端を少しだけ上げると、青年を手で示した。
「俺の友人の知り合いでね。冒険者ギルドには登録していないんだが、腕は実際に俺も見たから保証する」
「叔父様がそこまで言う人なの?」
ベルルが訝しげに青年を見上げた。彼との身長差は、四十センチ近くある。
すると、青年は片膝をついて、ベルルと視線の高さを合わせた。
「初めまして、ベルル・ストライクさん。キールさんには、大変お世話になっています。若輩者ですが、よろしくお願いいたします」
「ふぅん?」
ベルルは青年を覗き込むようにして、すぐに「うげっ」と声を漏らした。
「こらベルル、失礼だぞ?」
「ご、ごめん叔父さん。でも、このお兄さん、滅茶苦茶その……」
「大丈夫です。ベルルさん、とお呼びしてもよろしいでしょうか」
「……うん、いいよ」
「ベルルさんは、とても素晴らしい感覚をお持ちです。そして、皆さんも」
アリアとライラックは目を丸くした。どうやら、彼女たちも青年から、不思議な気配を感じたらしい。
ミーナと彼女たちの心中は同じだろう。
(この子、只者じゃない)
ベルルは顎に手を当てて思案顔をしていたが、やがてにこりと笑った。
「悪い奴じゃないみたいだね!」
「ありがとうございます」
「悪い坊主。ちゃんと後で言っとくから」
「えー? あ、それでお兄さん、名前はなんて言うの?」
青年は立ち上がると、一度全員を見渡してから、頭を下げた。
「サエと申します。
ストライクさんと一緒に、皆様と同行させていただきます。
よろしくお願いいたします」
そして再びミーナは見た。
青年が、またミーナ以外に見えない位置で指を音もなく弾いた。
それと同時に、周囲で聞き耳を立てていた討伐者たちが、息を呑んだ気配を感じた。
その時にもミーナには、何が起こったのかはわからなかった。
その後、支部長から改めて説明があると、ライラックが一同を応接室へと引き連れだした。
「最初から応接室で集合にすればよかったんじゃないか?」とストライクが言えば、
「丁度、応接室が別のパーティーの案件で使われていたのです」とライラックが申し訳なさ気に目を閉じた。
「わかっていたんだ……だが、どうしようもなかったんだ……」
「ごめんね? でも、これで叔父さんたちにちょっかいをかけるような不届き者は出てこないから、結果オーライって奴だね!」
「それ、ベルルとミーナがよく使っている言葉だけれど、どういう意味なの?」
「終わりよければすべてよし! って意味だよ!」
「すまん、俺が教えたんだ……」
ストライクが今度は申し訳なさそうに言っているのを耳にしていたミーナだったが、ふと、サエが立ち止まっていることに気が付いた。
彼の視線は、受付に居る、ソフィアへと向けられていた。
「どうかしたの?」
「いえ、知り合いに似ていた者で、つい」
彼はそう言って、ミーナの横を通り過ぎて行った。
その横顔は、どこか嬉しそうだった。
ミーナはもう一度ソフィアを見て、青年を見て、
(初恋の人に似ている……とか?)
などと考え、彼の後を追った。
‡
『カイト……だよね』
小柄なタイラントバードが俺に話しかけてきた。
迷いなく、そしてどこか期待するような言葉に、俺は少し嬉しくなって頷いた。
『あぁ、ただいま、姉ちゃん』
大きくなって、見た目も変わったのに、よく俺だとわかったものだ。
それを言うなら、俺も彼女が末姉だとすぐにわかったのだから、お互い様、という奴か。
末姉は周囲の大人たちがまさかと俺を見やるのを尻目に、どっどっと近づいて来た。そして、そっと頭を俺の頬にこすり付けてきた。
『心配、したんだから』
『あの時は、ごめん。でも、姉ちゃんが無事でよかった』
『私、カイトが食べられたんじゃないかって、心配で、心配で……』
悲しむ気持ちが大いに伝わってきて、少し戸惑った。
正直なところ、もう忘れられていると思っていた。
仮に覚えてもらっていたとしても、もうあの頃のようにはいかず、獲物として襲われるかもしれないという恐れもあった。
何だかな、と拍子抜けして、湧いてきた罪悪感ごと消すように、あえておどけたように言ってやる。
『あぁ、本当に波乱の旅だったよ。デカい蛇に追いかけられるわ、熊に襲われるわ、ワイバーンやら砂漠のデカい竜と追いかけっこするわ……ってな』
『何よもう! 本気で心配していたのに!』
割かし本気で怒っている末姉に、「悪い、調子載った」とこちらも本気で謝ると、すぐに許してくれた。
『……こんなに、大きくなったんだね。あれからそんなに時間は経っていないのに』
『それを言うなら姉ちゃんも大きくなったな。多分、他の兄貴や姉貴はまだ小さいだろ?』
『えぇ、そうね。どうしてだか、私だけ皆よりも大きくなったの』
苦笑した末姉は言いながら体を離して、姿を見せてくれた。
ふわふわの羽毛に、しなやかな体。狩人でありながら、どこか神秘的な雰囲気もあって、綺麗だった。
『綺麗になったね』
『ふふっ、毛づくろいはしっかりしてるから』
『これなら、他の男どもが放っておかないな』
どうして成長が早まったのかはわからないが、これもお互い様か。
しかし、こうなると、若い雄たちが今の内に婚約を申し込もうと意気込んで、求愛のダンス(練習モード)を拾うし始めているだろうな。
相手が子どもだから、一応形だけの奴。
だが、末姉は首を傾げて、
『私、誰とも結婚する気ないよ?』
『わかっているよ。それだけ綺麗になったって言いたいんだ』
『えへへ……でも、私は結婚するとしても、他の男の子はありえないかなー』
可愛い声で、小鳥のように羽毛を膨らませる仕草で、厳しい現実を周囲の若い雄に突き付ける末姉。
おぅ、ご愁傷様だ……これが大自然の厳しさの一つか。
『カイト、お父さんとお母さんに会ってあげて! 二人とも、今でもカイトのこと、すっごく心配しているから』
『あ、いや、もう俺、こんなに大きくなっちまったから……』
育ての親たちよりもデカくなったため、行っても、さっきみたいに警戒されるか、怖がられるのが関の山だ。
末姉が俺の事を覚えていてくれて、表面上は怖がらずに近づいてきてくれたのだって、奇跡みたいなもんだからな。
『なぁに言っているの。二人とも、カイトがこれだけ大きくなったんだから、喜んでくれるよ!』
『いや、怖がるだろ、普通』
無邪気な姉に苦笑するが、彼女は本気のようだった。
『怖がらないよ。だって、家族だもん!』
末姉の言葉に、俺は言葉を失った。
そうか……そう言えば、ティラノサウルスは、怪我した個体を助けている例もあるって聞いたことがある。
ここは異世界で、彼女たちは地球のティラノサウルスとは全く違う種族だろうが……似たように、人間でもわかる、仲間を助けあう習性があって、それがこのような言葉で、俺に伝わっているのかもしれない。
『ね、行こうよ』
真っ直ぐに見つめられて、迷ったが、
「行けばいいじゃない?」
額に寝転ぶリチュアがつぶやいた。
「それに、ワイバーンの反応があるのはこの先だし。ついでに会って行けば?」
素っ気ないが、それが彼女なりに気遣ってくれた言葉であることを、理解している。
そうだな。
色々と理由を並べて行って、会いたい気持ちを無視したくないし、二人の気持ちを無碍にしたくない。
『わかった……行くよ』
俺は、末姉に連れられて、森の奥へと入って行った。
ホロさんのPVフルバージョンに鳥肌が立った今日この頃です。
第一弾ということは……第二弾です〇るさんたちが出てくるということ……ですか?!




