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OP前に新キャラが出てくる回

アニメで言う所の第四話突入です。

感想を頂きました! ありがとうございます!


 武具のメンテナンスや修理が終わり、装備も整えたミーナたち四人パーティーは、リーダーのライラックを先頭に、討伐者組合へとやってきていた。


 討伐者組合トライティア支部。

 街の中央広場の一角にある、二階建ての木造建築が、この周辺地域の魔獣討伐を請け負う討伐者たちの本丸であった。

 荒くれ者が多いというイメージを持たれているが、そんなことはない。


 討伐者になるには、国と討伐者組合が規定した筆記、実技、面接の試験を潜り抜けて、晴れて入ることができる。

 一見荒くれ者でも、しっかりと礼儀をわきまえた者が大多数だ。もちろん、イメージ通りの者はいるが、彼や彼女たちにしたって、手を出されなければ喧嘩はしないし、筋はしっかりと通す。

 下手な騎士や戦士よりも、討伐者組合は街や周辺の住民たちから慕われていた。


 その討伐者たちを纏めるこの支部には、未だ現場で体を張れる実力を秘めた支部長がトップに君臨している。

 支部長の一言で、気難しい討伐者でも、緊急討伐任務に参加すると言われる程、組合員から慕われていた。

 その部下たちも討伐者出身が大半で、丁寧に受付をしている見た目麗しいご婦人たちや少女も、いざとなればその手に武器を持ち、魔獣と戦える強者揃いである。


 討伐者たちを受け入れるこの施設は、しっかりとした造りで、中は広く、そしてとても綺麗に手入れが行き届いているため、何も知らずに訪れた者は、役所か何かと勘違いするだろう。

 ここは、街と周辺の人々の安寧の、最後の砦であった。


 しかし、こう言った人が多く集まれば、えてして変わり者が多くなることも事実。

 中でも、最年少討伐者であり、雷撃を放てる唯一の魔法槍を持つベルルは、このトライティア支部の中でも十本指に入る代わり者だった。


「さて、今日の依頼は~……」


 掲示板に張り出された依頼書を眺めていきながら、ベルルは体を右横へと傾けて行く。

 それに合わせて、背負った槍の穂先が右側へと落ちていく。ベルルの身長を優に越している彼女の獲物は、周囲の成人男性よりも若干長い。故に、誰も彼女の傍に近寄れないため、掲示板の前には空白の地帯ができていた。


「何をしているんだ」


 ライラックが呆れながらリチュアの首根っこを掴み、穂先が当たらないようにしながら引きずって行った。

 他の討伐者たちが、やれやれと息を吐きながら掲示板の前に集まっていくのを見やりながら、ミーナはすでにライラックが持ってきてくれていた依頼書に目を落とした。


「サンドストーム・ケタスの生態調査」


 アリアが頬に手を当てて、困ったように笑った。


「私たち、生きて帰られるといいけれど」

「ムビチ砂漠のサンドストーム・ケタスなら、恐らく岩場の方から確認できる。わざわざ砂の上を歩く必要はない」

「エサはどうする? 確か生きている奴しか食べないんでしょ?」


 ミーナが知っている記録では、人間が置いた肉は食べなかったとあった。

 かの砂漠の覇者は、人間の仕掛けた罠も調査用に置いた普通の肉も口にせず、あざ笑うかのように悉くを無視していた。

 そう言う訳で、サンドストーム・ケタスの調査をする場合、牛一頭を砂漠に解き放ち、遠くから観察するという手法がとられる。

 なお、この牛に毒なりなんなり罠を仕掛けると、一切姿を見せないため、魔法を使えるのか、超感覚を持っているのかもしれないと言われている。


 ちなみに、ミーナたちは生餌作戦を取るつもりはない。

 生態調査は確かに大事ではあるが、そのためにわざわざ生き物を犠牲にしてしまうのはどうか、というミーナとベルルの考えに、アリアが賛同し、ライラックも付き合っている。


 こう言った生態調査は何度か行ったことがあるが、それにしたって、大砂漠の主である竜種を相手にするとなると、全員に緊張が走るのも仕方がなかった。


 サンドストーム・ケタスは、砂砂漠に生息している、巨大な竜種だ。

 討伐者組合と各国は、今のところ、三つの砂漠でそれぞれ個体を発見している。

 砂の中を水の中のように泳ぎながら、獲物を追い詰める砂漠の狩人は、その巨体にも関わらず、目撃情報は少なく、生態は全くと言っていいほど分かっていない。

 ただ、魔法によって生み出された光の玉を撃って来たり、空間が揺らめいて対象を切断する見えない刃、そして二つ名の由来である、大砂嵐を生み出す謎の力を持っていることだけは、討伐者や軍関係者には有名な話だった。


 その巨体と神出鬼没な生態、そして強力無比な戦闘能力によって討伐不可能な魔獣と認定されている。

 討伐組合はおろか、各国軍部、特に生息域である砂砂漠が領土の中にある、または隣接する国からは、見かけたら戦わずに即時撤退するように命令が出ている。

 守らなければ、その大きな咢に飲み込まれるだけである。


 サンドストーム・ケタスから命からがら逃げられた者はいても、真正面から戦える者は、人も魔獣もいなかった。


「……ちなみに、サンドストーム・ケタスの生態調査って、どんなことするの?」

「個体が増えていないか、食っているものは変わったか、大きさや形が変わったか、狩りの場面を観察してデータを収集する、ねぐらの場所を突き止める……まぁ、普段と変わらないな」

「ぶっちゃけ、大きさと形が変わっているかどうかの確認と、狩りのデータ収集以外はできなくない?」


 ベルルが苦笑しながら、全員が思っていることは代弁してくれた。

 なお、これをライラックに渡した支部長すらも、それ以外は無理だと思っていることを、ミーナたちは知っている。

 現状では、あの竜種へ挑む権利を、人類は持ち合わせていなかった。


「……と、普通は思うだろ?」


 ライラックが冷めた顔で、しかし目には燃えたぎる闘志を宿しながら、静かに漏らした。

 ミーナたちの視線が、ライラックに集まる。

 彼女は顔を上げて、周囲の者に聞こえないように、三人に集まるように指を動かす。


「実はな……同行者が付くことになった」

「「「同行者?」」」

「あぁ。その人物はもうすぐここに……あぁ、来たな」


 ライラックが顔を上げたので、ミーナたちもそちらへ振り返る。

 討伐者組合の入口を、丁度潜ってきた、二人の男がいた。


 一人は、三十代の見た目で、茶髪をした、細身。しかし、その体は見る者が見れば恐るべき程鍛えられていることがわかる。深緑の外套の下に隠れているが、歩き方一つ、常人ではないことが伺える。

 目深にかぶられた帽子の下から覗く顔は飄々としていて、人を食わなさそうな雰囲気をしているが、若干目尻が垂れている目には、幾つもの修羅場を潜り抜けてきた猛者の輝きが秘められている。


 その隣を歩く黒髪の、背は高いが、とても若く見える青年がいた。顔に堀がないせいか、余計に幼く見えてしまう、見たこともない人種だ。変わった服装をしていて、素材も見たことがない。しかし、纏っている皮鎧やグローブは、よく見受けられる魔獣の革を使った初心者用の装備だ。


 黒に近い焦げ茶色の瞳をしていることを、ミーナはその優れた視力で見て取った。

 同時に、何故だろうか。彼から、言い表しようのない、不思議な気配を感じた。

 それは、魔獣との戦闘中や、ついこの前レッドハンドに踏みつけられそうになった時に感じた、“死の香り”のようなものだった。

 だが、彼を嫌だとは思わなかった。不思議な人物だった。




 一瞬、本当に一瞬だけ。

 ミーナは、自分を助けてくれた鳥竜と似た雰囲気を、彼から感じ取った。


 突然現れ、自分を助けてくれた竜と目が合った時。

 たくさんの死を乗り越えてきた物独特の気配と。

 自分を見て、よかったとでも言いたげに安堵した目と。



 それでいて、自分の死を恐れていて、怖れていないような……そんな――――。

 悲しい気配と、似ていた。





           ‡




 滝の上に着いた俺は、休むことなくワイバーンが飛んで行った方角へ走り出した。

 頭の上に乗っているリチュアが、適宜方角を指差してナビゲートしてくれる。


 あの時、この森で俺はギガントボアから逃げる事しかできなかった。

 けれど今は、またアイツと同種の奴が襲い掛かってきても、倒すことができる。

 この森でサバイバルをすることになった原因である大怪鳥も同様だ。


「話には聞いていたけれど、本当にザ・ジャングルって感じね」

「だろ? リチュアの知っているジャングルがどんなジャングルかは知らないけれど」

「もっとジャングルジャングルしてるわね」

「どんなジャングルだよ」


 ゲシュタルト崩壊が起きそうになりながら、リチュアの淡々とした回答に苦笑が漏れてしまう。

 樹を出来る限り傷つけないように走り、やがて、切り立った断崖絶壁の前に出た。

 空から見た時もデカい亀裂だと思っていたが、実際に目の当たりにすると、その雄大さと絶望さが身に染みてわかる。

 彼我の距離は大凡二十メートル。深さは……恐らく、五十メートル以上。真下は細い川が流れているが、水深は全く期待できそうにない。おちたら、普通に地面に激突して終わりだ。


「この向こうに行ったみたいね」

「わかるのか?」

「えぇ」


 リチュアは言いながら杖を上着の内側から取り出そうとしたので、待ったをかけた。


「いい。大丈夫だよ」

「そう? ならいいけど」


 了解を得たところで、俺は少しだけ道を戻り、ぐっと足に力を入れる。


「落ちたらフローチュアと一緒にあの世でアンタを弄り倒すからそのつもりで」

「了解!」


 絶対にそれは嫌だな、と思いながら、俺は助走をつけて跳んだ。


 しかし、俺の巨体と体重では、残念なことにどれだけ頑張っても二十メートル以上ある崖を超えることはできない。

 普通なら。


 だが、今の俺なら、行ける!


 視界の真下を流れる、断崖絶壁の景色。

 足場のない、吸い込まれそうな空気。

 恐れ。

 優しく手招きする重力。

 それら全てを無視し、あるいはいなしながら、俺は向こう側の地面と、余裕を持って着地をすることができた。


 そして、そのまま、走り出した。


「流石」

「おう」


 短いやり取りだが、リチュアが左角を軽く叩いてくれていた。褒めてくれている、と言う事を、短い付き合いだが知っている。


「このまま真っ直ぐ、進めばいいはずよ」


 指示された方角へ進みながら、ふと、大怪鳥に攫われた時の光景を思いだし、比較して、気が付いたことがあった。

 だが、もしかしたらもう、いないかもしれない。

 けれども……。

 そんな、期待を少しだけ胸にさらに奥へ行くこと、数分後。


 俺たちは、羽毛の生えたティラノサウルスたちの群れに囲まれた。

 少し懐かしさを覚える姿だが、かなり警戒され、さらに半ば獲物認定されていることがわかっているので、あまりうかうかしていられない。


「タイラントバード……?」


 リチュアがぽつりとつぶやいた。

 それが、俺を育ててくれたこいつらの、人間側が読んでいる名前か。


「知っているのか?」

「えぇちょっとね。そう、いたのね……」


 リチュアはどこか優し気な声音で、しかししっかりと杖を取り出して握っている。

 今の俺なら、タイラントバードたちを倒すことは可能だろう。

 だが、こいつらは恐らく、俺を育ててくれた親たちと末姉の群れの大人たちだ。

 攻撃したくはない。


 そんな風に考えていると、


『待って!』


 奥の方から、声がした。

 少し声がはっきりしているが、彼女の声だとすぐにわかった。


 やがて俺たちの前に現れたのは、他の大人たちより一回りだけ小さいタイラントバードだった。





今期のアニメが面白くて切なくて熱くてかわいいやつがいっぱいで燃えてきました。


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