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疾風怒涛の遭遇戦




 狼たちとの死闘から、一夜が明けた。

 オアシスで十分に休息を得た俺とリチュアは、狼の群れに干し肉をまた分け与えて、お別れの挨拶をした。


「世話になったわね」

『ボス、元気で』

『あぁ、お前たちも達者でな』


 朝早く、まだ寒い中を、俺たちは振り返らずに走りだした。


 狼たちには、とても世話になった。

 夜の警戒だけでなく、この先に海があり、そこへ行くためのルートまで教えてもらえたのだ。

 その際、ボスから、こんな忠告をもらった。


『カイト、リチュア、この砂漠には恐るべき主がいる。砂の中を泳ぐ、神出鬼没の巨大な怪物だ。私たちもそして稀に通り過ぎる人間も、その怪物を避けて進む。私たちもそうだ。この砂漠では誰も奴らに気を付けろ、若き竜種と妖精。あの怪物は、強く、速い。見つかったら、なりふり構わず走って走って、奴が諦めるその時まで走り続けるしかない』


 ボスの言葉には重みがあった。

 リチュアの指示を聞いて走りながら、俺はその怪物が現れないか、と注意していた。


「少し右にずれたわ。よし、そのまま真っ直ぐ走って」

「了解」


 いけない、集中しないと、進路がずれる。

 今は小さなズレでも、到達地点は大きく変わってしまう。

 リチュアは、ボスから教えられた方角をしっかりと記憶していた。俺たちはずっとその方角へ向けて走っている、と言う訳だ。

 しかし、走っている最中にどうしてもそう言ったもの外れるだろうと思っていたのに、リチュアは方位磁石も無しにその方角を見失っていない。

 理由は教えてもらえなかった。


「そのまま真っ直ぐ……あら」


 リチュアが右方面を見て声を漏らしたかと思うと、表情を硬くした。


「そのまま真っ直ぐ走りなさい。何があっても、前だけ注視すること!」

「おいおいまさか……」

「そのまさかよ」


 視界の中の砂漠には、何も変化はない。

 草木一つ生えず、遠くに砂丘があったりなかったり、じりじりと太陽が照りつける、湿度ほぼほぼなしの乾燥した砂の世界。

 ボスが巨大な怪物だと言っていたが、砂がわかりやすく盛り上がっているなど、わかりやすい兆候はない。

 だが、リチュアは妖精の感覚で、何かを察知したのだろう。


 恐れていた存在が、近づいてきていることに。


「私たちに気付いている……か。獲物に認定されてる感じね」

「どうやって俺たちを見つけたんだ……まさか、音か?」


 地球に居た頃に遊んでいたゲームで、砂漠に生息するモンスターは、音で獲物の位置を把握するという設定があった。それを利用して、ゲームではそのモンスターを倒す足がかりにするのだが、現実でも同じような特徴を持つ魔獣がいたとすれば。


「分からないけれど、とにかく走りなさい。今は全力で」


 リチュアはクロスボウを取り出した。

 威力はそこそこあるが、砂の中に潜む相手には、効果はないように思える。その辺りは、リチュアも理解していないはずがない。


「そのまま真っ直ぐ、真っ直ぐ……速度上げて!」


 砂を踏みしめ、捉え、蹴って進む。後方に大量の砂を飛ばしながら、更に速度を上げた。

 足裏には、昨日、回復したリチュアが即席で作ってくれた、タクティカル・ボアの余った毛皮の靴……見た目は靴下だが、それがある。これのおかげで、昨日までは走り辛かった砂場でも、調子よく走ることができるようになった。


「……追いかけて来るわね」

「逃げられないか」

「逃げられないわね。このままだと」


 リチュアがクロスボウを仕舞い、代わりに杖を取り出した。

 魔法でどうにかするらしい。

 狼たちを縛ったみたいに、魔法の鎖でも出すのだろうか。

 ボスが巨大な怪物と言っていたが、果たして魔法の鎖で動きを封じることはできるのか。


 その時、右の視界ど真ん中で、突然、砂が大きく爆ぜた。


「な?!」

「っ?!」


 俺とリチュアが息を呑む中、砂の雨が降る視界右側で、大きな影が飛び出してきた。

 咄嗟にブレーキをかけ、Uターン。視界の後方で、影が本来の俺たちの進路上に着地し、再び大量の砂を巻き上げていた。

 足を止めることなく、来た道を戻っていく。


「ナイス判断よ」

「どうも。で、あれ、もしかしなくても例の奴だよな」

「……そうね」


 ぎらぎらの日差しの下、襲撃者がその姿を現した。

 ごつごつした鎧のような表皮と、ずんぐりしながらもどこかしなやかさを感じさせるボディは、巨大なゴーヤのようだ。

 顔は鰐型のようで、左右の目元が膨らんでいることがわかった。まるで昆虫の複眼を想わせる目だ。異世界の魔獣は、一体どんな生態をしているんだ?!


「サンドストーム・ケタス」


 リチュアが謎の単語を小さな唇から紡いだ。


「アイツの名前か?」

「えぇ。名前の通り、砂漠に住まう巨大な竜種よ。特徴は、砂の中を猛スピードで泳ぐように進むために、瞼が変化したゴーグルみたいなスペクタクルよ」

「あれ、瞼なのか?! 昆虫の特徴を持った奴だと思った。それより、音を発する爆弾みたいな魔法ないのか?」

「あるけれど、奴には効かないわ。サンドストーム・ケタスは音で獲物を感知してる訳じゃないの」

「じゃあ、どうやって俺たちを見つけたんだ?」


 後方で、サンドストーム・ケタスが追いかけてきた。四つの足は鰭のような形をしている。まさか、あれでオットセイやアザラシのように進んで来るのかと思ったら、その場で穴を掘りはじめ、すぐさま砂の中に消えてしまった。何という速度だ。


「げっ、砂の中に潜りやがった!」

「流石は砂漠のクジラと呼ばれるだけあるわね」

「ドラゴンなのかクジラなのか、どっちなんだ」

「竜種よ。とりあえず、敵の姿はわかった。正直、今の私たちで対抗するのは難しい。ひたすら逃げるしかないわ」

「どれくらい逃げればいいんだ?」

「向こうが諦めるまで」

「どれくらい追いかけて来る?」

「多分半日くらい追いかけて来る」

「オアシスにたどり着く前にこっちが捕まる!」


 逃げるしかない、と言っても、逃げ切れない。

 こうなったら本当にリチュアの魔法が頼りだ。


「まだ追いかけてきているか?」

「えぇ。今はさっきよりも深い所を進んでるわ」

「深い所? それで俺たちを探知できるのか?」

「えぇ。サンドストーム・ケタスの獲物のロックオン方法はシンプルに二つ。熱と、魔力反応よ」

「魔力反応?!」


 熱はともかく、魔力反応と言うファンタジー要素が出てきたことに驚いた。


「サンドストーム・ケタスは、熱と魔力の反応を別々に感知して標的の居場所を三次元的に捉えることができるの。後、色の違いもわかるわ」

「意味がわからん!」


 地中に潜りながら敵を察知できる、化け物らしい能力はわかった。だが、そこまで化け物とは思っていなかった。


「そして、アイツは魔法が使えるの」

「え、魔法?」

「えぇ、魔法よ」

「それは一体どのような魔法――――」


 現実逃避気味に、昔、両親が好きで見せてくれたネタを返そうとしたら、毛皮で覆われた足下が砂に触れた時、僅かな違和感を覚えた。

 何か、ぞわりとした感覚が、足裏からした。それが殺気と似ていて、直角に急カーブするのと、リチュアが叫んだのは同時だった。


「避けろっ!」

「ギリギリ!」


 背後で砂が爆ぜた。

 サンドストーム・ケタスは姿を現さなかったが、紛れもない奴からの攻撃だということはわかった。


「今のは魔法か?!」

「違うわ。超音波で砂を吹き飛ばしてきたのよ。直接的なダメージはないけれど、追撃されたらひとたまりもないわね」

「クジラみたいにバクンッと行かれる感じか?」

「正解。丸のみよ」

「うわぁ」


 そうなったら、腹の中を角でつついてやる。それは本当の最終手段にするとして、今はとりあえず奴から逃げないと。

 しかし、元来た道からも逸れた今、どこにどうやって逃げればいいのか。逃げ切れたとして、今度は遭難して、全滅だ。


「なぁ、適当な方向に走ってるけれど、まだ方角はわかるのか?」

「えぇ、問題ないわ。だから全力で適当に逃げなさい」

「お前凄いな!」


 懸念がなくなって、少しだけ安堵したせいで、テンションが上がった声が出た。


「凄いのはこの子よ。この子の妖精としての力のおかげよ」

「フローチュアの?」

「えぇ」


 リチュアは立ち上がって荷物入れ越しに後ろを見た。


「追って来てるわね。後、どれくらい走れそう?」

「まだまだ余裕!」

「ま、こんなに喋っているのに走れるからにはそうでしょうね。数日でここまで上がるなんて、成長性が凄まじいったら」


 褒めているのか呆れているのかわからない声音のリチュアが、クロスボウを取り出し、荷物入れの上に腕を置いて固定した。


「次に出てきたら撃ってみるわ」

「効かないんじゃないか? あいつの鎧、俺よりも頑丈そうだったぞ?」


 アレは絶対、ゲームだったら四人のパーティーで戦う相手だ。船の上で命綱をつけて、大砲やらで攻撃してきて、近づいてきたら背中に飛び移って採掘しながら攻撃しないといけない奴だ。

 さっき見たサンドストーム・ケタスには、そう言った部分はなかったが、とりあえずアレは俺たちの攻撃なんかまるで通じない相手だとわかる。


「確かに、このクロスボウじゃスペクタクルも破壊できないわね」

「ならどうする?」

「まぁ見てなさい。とりあえず、ここからは無駄なおしゃべりはなし。いい?」

「了解だ」


 確認し合った直後、また足裏がぞわりとしたため、別方向へ急カーブ。だが、またその先ですぐにぞわりとした感覚があった。

 急いでまたカーブして、それでも足りないと感じて飛び退いたが、吹っ飛んだ砂の威力が強く、俺たちは宙を舞ってしまった。


お読みいただきありがとうございます。

本日は17時頃にもう一話投稿します。


ところでVIVIのオフィーリアが某ソシャゲの青いバラのヒーローとカップ焼きそば現象(ここでメモは途切れている

いや、ほら、お姉さまって(ここでメモはry


VIVIは、素敵なお話です。今のところ、救いがあってないような話が多いのですが……今回は救いがあるような気がしますっていうか救われてほしいです。


某ソシャゲのアニメの方は、某天開さんのプレゼン動画を見て、ちょうど最終回をやっていたので見ましたが、よかったです。熱かった。そしてYouTubeのチャンネルを見て笑いました。


どちらも並行世界の日本が舞台……未来が(少なくとも一方は)定まっている……けれど、全体、または一部が変わって、それでも決まった道があって、変わった部分がどう影響していくのか……と無理やり似た部分をひねり出しながら、結局どちらも面白くてかわいくて熱いので、よし!(夜中テンション

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