第七話 友達百人目指して
遅くなりました。
よろしくお願いします。
おい。
カタカタカタ、パン、カタカタ
おーい、イツキ。
パン、カタカタッタ、パン
イツキ!
「は、はい?」
やっと気づいたか。
昨日からイツキはどこか抜け殻のようになっていた。
今日も生徒会の仕事を淡々とやっていた。
そのおかげもあってか、書類仕事はすでにすべて処理してしまう。
そのうえで、生徒会顧問である教頭の仕事を手伝っていた。
俺はよくわからないが、なんかの会議に使われる資料作成の手伝いだった。
「下半期の部活動に対する予算調整案の資料ですね。あまりにも無駄が多すぎるので」
それを任す方も任すほうだが、受けるイツキもどうかと思うぞ。
このまま、生徒会をやるのか?
「それは無理でしょう。元々僕がやる気がないのもそうですが、来月から夏の高校野球の予選があります。ハジメがスタメン入りたのですから、僕の方でも多くの情報を整理したうえで勝つ可能性を上げていかなくてはいけません」
お前がやる気があるのはうれしいがその割には面倒ごとを抱え込むよな。
昨日、公園で泣いている彼女はミランダではなくマリア・ヴォルコフその人だった。
なんで、うちの制服を着ていたのか、あそこで泣いていたのかはわからない。
だが、イツキは泣いているマリアを『マーシャ』と呼ぶとマリアはイツキに抱き着いて『嫌いにならないで』と懇願した。
そんな、彼女をイツキは泣き止むまで、優しく抱きしめた。
そして、駅まで送っていたのだった。
さて、一日たって落ち着いただろうから、さっそくげろってもらおうか。
いつから、嫌ってたはずのマリア・ヴォルコフを『マーシャ』なんて呼ぶようになったんだ?
「それは、昨日のマリアの後ろ姿が『彼女』と重なって見えて」
だが、あのこは死んだはずだろ?
「そう、ですね」
そんでもってあのこは錦織先輩を悲しませた張本人だ。
それなら、距離を置くべきだ。
もちろんミランダとも。
「そうでしたね」
なら、その仕事をさっさと終わらせて、錦織先輩との連絡手段を考えた方がお前が好きな効率的ってやつなんじゃないのか?
「そうです。ハジメの言う通りです」
そんじゃ、ちゃちゃと終わらせちまえよ。
「もう終わってますよ」
は?
「今やっていたのは、実際にどの部費分配案を行った場合、どれだけのお金が各部活に分配されるかをシュミレートしていたのです」
もういいよ。
なら、次の授業教室に行くのか?
「そうしま『一年 生徒会役員 柏山 一樹君。教頭先生がお呼びです。職員室に来てください』
イツキが立ち上がったところで全校放送でそう流れた。
よばれたぞ。
「なんですかね?」
教頭がお呼びなら、お前に関する内容だろ。
「確かにハジメに接点がありませんしね。ただ、一点間違いがありますね」
?
「僕は生徒会役員じゃないです」
たぶんそう思ってるのはイツキぐらいだと思うぞ。
「いえ、もう一人いますよ」
職員室は生徒会室の真下の階にある。
職員室の扉を開けると次の授業の準備や俺たちのように呼び出された生徒でごった返していた。
「柏山! こっちだ」
教頭が奥の別部屋の資料室から手を出して呼ぶ。
樹は教員たちの間をうまく通り過ぎて資料室にたどり着く。
すると、白衣姿の中年のおっさんが出てきた。
こいつが教頭の 青木 寛之だ。
担当は社会だ。
髭が青くなってることから別名青ひげなんて呼ばれている。
「悪いな、次の授業もあるし、手短に言うな。生徒会。いや、生徒会長に興味ないか?」
おっと。
もしかして、新生徒会メンバーが集まらないとか?
「そうですね。はっきり言えば興味はありません」
「そう言うなよ。お前しかいないんだ」
頭をかきながら教頭は困った顔をする。
「遠藤さんとか、来てるでしょ」
「ああ、遠藤 蜜柑か。やる気はあるんだけどな」
ダメなのか?
「一年生だから勉強に集中してほしい。今から生徒会の仕事をさせても覚える頃には次の生徒会選挙になってしまうからでしょう」
「分かってるじゃないか」
青ひげは資料のたくさん入った袋を持ち上げる。
「ちょっと歩きながら話そう」
そう言って、俺達は職員室を出た。
青ひげは人通りの少ない道を選んで歩く。
「正直言ってお前さんは今まで見てきたどの生徒よりもずば抜けて頭がいい。ぶっちゃけこのまま大学受験しても国公立ですら現役で入学できると思ってる」
「まあ、その通りですね」
「だが、それ以上に危うさを感じてるんだ」
そして、青ひげは途中で止まり、イツキに向かい合う。
「正直に言ってしまえばお前が今、とんでもない立ち位置にいることは知っている。錦織、大賀、松田、それにヴォルコフか。最初はとんでもない化け物が生徒になったとも思った。だが、昨日の放課後に遠藤が来たと思ったらお前をボロクソに言って、生徒会から追い出せなんて言ってきた」
錦織先輩は分かるとして、なんで大賀先輩や松田の名前が出てくるんだ?
それにミランダ?
青ひげの言う事はよくわからん。
「そうですか」
イツキは頭を押さえながら、うなずいた。
「野球部に関しても期待の超新星が入ってきたなんて言われている。そんなお前はどうも人付き合いが超絶苦手と見える。お前ほどの天才はいなかったが、人付き合いがよくない奴はどこかしらで失敗していた。ここらで少し人間関係について勉強してみなさい」
人付き合いが悪いのバレてやんの。
「それで本音は?」
「お前が今抜けるのは痛い」
「そうですか」
青ひげは「考えといてくれ」と残して、二年生の教室に向かってしまった。
「生徒会ですか」
さっきは入らないって言ってたよな。
「そうですね。でも、ここ最近人間関係がうまくいってないのも本当の事です」
そうか、がんばれよ。
「カズキ!」
~~
「あれ?」
ミランダの事はお願いします。
「人間関係どうのこうの言っておいて、逃げる気か!」
よろしくお願いします。
「分かったよ、は~」
溜息をつきながらも一は僕の代わりにミランダさんの対応をしてくれるようです。
小走りで来た彼女は到着するなりなぜかDОGEZAしてきました。
「昨日は、スミマセンでした」
「いや、俺も言い過ぎた。ごめん」
「なら、仲直りです!」
そう言ってミランダさんは手を出してきます。
それをハジメは握るとミランダは嬉しそうにはにかんだ。
「それじゃあ、これでカズキも友達です! 姉ともどもよりしく!」
「あ、ああ。よろしく」
ん? なぜ、マリア・ヴォルコフともよろしくお願いされないといけないのでしょうか?
だが、その疑問を投げかける前に走って行ってしまった。
その方を向くと数人の女子グループがミランダを待っていた。
もう友達ができたのですか。
「お前も見習えば」
大西君がいます。
「人間関係について勉強しなさい」
ハジメが青木先生の真似をします。
思いの外似ていたのが更に悔しく感じました。
私、柏木 芽明は食堂で学生のご飯を作っていた。
「お姉さん、お願いします!」
「はい、カレーね」
「ありがとうございます!」
私はなぜか昨日掃除のバイトだと勘違いされて仕方なく庭の掃除やトイレの掃除をしていた。
だが、その最中食堂のおばちゃんの一人がぎっくり腰で退場してしまい、仕方なく他のバイト要員である私が駆り出されることになったのだ。
「お姉さん、お願いします!」
「はい、カツ丼ね」
「ありがとうございます!」
だが、食堂のバイトは思いの外大変だった。
生徒たちが食堂に来る生徒たちが来るまでに下ごしらえをすべて終わらせ、昼食の時間になると出来上がったものを素早く渡していく。
しかも、私のカレー・丼ものコーナーは思いの外大盛況だった。
昨日の麺類コーナーも大盛況だったが、それと同じくらい大変だ。
「お姉さん、お願いします!」
「はい、カツカレーね」
「ありがとうございます。……」
カツカレーの男子生徒がはけない。
「どうしたの?」
「お姉さん!」
「?」
「アドレスをおし「おい!」
いつの間にか彼の後ろには体の大きな生徒がいた。
そして、連れていかれる。
カツカレーを残して。
「一樹来ないかな~」




