第六話 ブランコ
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「はらへったな~」
ハジメは今日の野球部の練習が終わるとプロテインバーを口にくわえながら呟いた。
今、プロテインバー食べてるでしょ。
帰ったらすぐに夕ご飯ですし我慢してください。
「でも、動いた後って腹が減るんだよ。なあ、どこかで何か食べようぜ」
いえ、その前にお説教です。
今日は練習に身が入ってませんでいた。
正式にスタメンに入ったのがうれしいのは分かりますが、練習に集中しきれてませんでした。
新田さんにも注意されてましたし。
そのままではスタメンから降ろされるだけでなく、いつか怪我しますよ。
「分かったって、小言は今度にしてくれ疲れてるんだ」
いえ、この体はあなただけのものではありません。
それと今日は電車を使って帰りましょう。
オーバーワークです。
幸か不幸か新田さんもマネージャーミーティングでいませんし。
「それなら、あっちの方だな」
ハジメは駅のある方へ歩き出します。
「なあ、錦織先輩のことどうするんだ」
……どうするとは?
「分かってるくせに。遠藤にもう来ないって言われてからずっとお前が機嫌が悪かったのは分かってるんだ。ミランダにも半分八つ当たりみたいになってたし」
それは。
「だってそうだろ? マリア・ヴォルコフのしたことで錦織先輩は傷ついて、先輩の親父さんはキレて、しまいには先輩は転校。泣きっ面に蜂どころか後頭部を思いっきりバットで殴られるレベルだけど、それをミランダに当たるのはお門違いだろ」
……。
…そうですね。
冷静さを欠いていたのは確かのようです。
「そういうことだ。俺とは違う意味でイツキは熱くなりすぎ。お前の長所は冷静に効率よく、だろ? そのうえで先輩との事はどうするんだ?」
うーん。
どうしましょうか?
「おいおい。いつもの頼りがいがないぞ」
といっても、僕も恋愛に関してはあなたと大して変わりませんよ。
数式みたいに確かな答えが一つあるわけではないですから。
恋さんのことを沢山知っています。
彼女が僕を好きでいてくれていることも知っていました。
でも。
それでも、いつも不安でした。
「そうなのか? 見てる方が恥ずかしくなるほど仲が良かったように見えるし、揶揄って楽しんでたじゃないか」
ハジメの恋愛は智香だけですものね。
一方的にいうことだけ聞いていれば好きでいてくれると思ってるというのとは違うのですよ。
「棘がある言い方だな」
そうでしょ。
一方通行では相手の気持ちが分からなくなる。
ハジメは智香の気持ち、分かってました?
「……分かんなかったよ」
でしょうね。
まあ、僕も恋さんの事を本当の意味で理解していたか今では分からなくなってしまいました。
好きでいることも、好きでいてもらうこともとても怖いのですね。
「じゃあ、諦めるのかよ」
なんでそうなるのですか?
新田さんに諭されて、出来るだけもがくことにしました。
昨日の事なのにもう忘れたのですか?
「はあ、端的に言ってくれ。どうするんだ?」
転校することになった彼女と連絡を取る手段がありません。
彼女は最近の学生にしては珍しくスマホを持っていませんでした。
交換日記にしたのもその辺の理由も込みでしたから。
はっきり言って八方ふさがりです。
「……遠藤に頼んでみたらどうだ?」
今日の事があったのに?
がっつり胸を触ってましたしね。
わざとですか?
「急に体変わったからそんなこと考える暇ねえし。それに、気づかなかったんだよ。あまりにも何もなさ過ぎて!」
聞かなかったことにしておきましょう。
「まあ、どうするかは別にして、錦織先輩を諦めない方向でいいんだな?」
そうですね。
「はあ、面倒な弟分ができたもんだ」
聞き捨てなりませんね。
弟分はあなたの方でしょ?
「何言ってるんだ。兄は俺だ」
ハハハ。
こんなに頼って来る人を兄とは思えませんよ。
「なんだと」
第一、あなたは野球に関しても本来は自分でやらなくてはいけない練習のメニューも僕に任せっきりですし、当初は勉強以外の特に人付き合いは一が担当するはずだったのにいつのまにかほとんど僕が担当しているし、こんな何もでき「待ってくれ」
なんです?
全然言い足りないんですが。
「泣き声が聞こえないか?」
特に聞こえませんが。
説教を聞きたくないからってでまかせはいけませんよ。
「でまかせじゃねえよ。こっちだ」
ハジメは駅へ向かう方とは別の道を歩いていく。
少し歩いていくと住宅街の中に入っていき、小さな公園を見つける。
その光景に僕はあの日を思い出しました。
~~
あれ?
公園でブランコにのる銀髪青眼の女の子を見つけた瞬間、いつの間にか俺の方が意識世界にいた。
あの子はミランダだ。
帝海大の制服着てるし。
泣いてる理由もイツキが威圧したせいだ。
イツキ、今はいかない方がいい。
「やっぱりそうなのか?」
だが、イツキがゆっくりと彼女に近づいていく。
どうしたんだ?
「そうなんだな」
俺の話を聞け!
泣いている彼女はミランダだ。
お前が言ってもまた泣かせるだけだ!
しかし、その歩は止まらなかった。
「マーシャ?」
イツキは見当違いな人の名前を呼ぶ。
それなのに彼女は顔を上げる。
そして、声を震わせて声を発した。
『カズ、嫌いにならないで』
私、柏山 芽明は二度目の弟の通う帝海大附属高校に潜入していた。
「さあ、愛する弟を泣かせた女はどこ?」
二度と関わろうと思わないように徹底的に追い込んでやる!
あんな事や、こんな事や、もう口に出すこともはばかれるようなことで!
後悔させてやる!
倍返しだ!!
「さて、どこに「ここにいたか」
後ろを振り向くと青のジャージにポリエステルの手袋と長靴をはいた初老のおばさんがいた。
急いで逃げようとするがとんでもないスピードで先に回り込まれる。
「できる!」
「なにができるだい。まだ、掃除は終わってないんだよ!」
「え? 掃除?」
「ほら、さっさと更衣室に着替えに行くよ!」
私はおばちゃんに後ろ襟を掴まれる。
「ちょっと、待って」
「待たん」
そして、引きずられながら連行されるのだった。




