第十話 新たな目標
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俺と智香の出会いは赤ん坊の頃だったらしい。
母さんと智香の母親の病室が同じで、歳も近かったから仲も良くなり、退院後家が近かった事から家族絡みでの関係が始まった。
そんな関係の中、俺が今でも思い出せるのは幼稚園の頃の記憶からだ。
その頃は恋人というよりは、よく一緒にいる友達だった。
結婚の約束、なんて甘いものはなく、やんちゃな智香に手を引かれ無理矢理走らされた。
元々、内気な俺がそこそこ体力が付いたのもそのせいかもしれない。
でも、それは小学校に上がる頃には変わっていた。
周りの女子達は小学校に上がって、年を重ねるごとに昔のように走り回る事はなくなった。
それは智香も同じで俺たちはそれぞれ男子は男子、女子は女子で遊ぶようになっていた。
でも、内気な俺は男子の輪に入らず、昔智香と作った秘密基地で借りてきた本などを呼んでいることが多かった。
そんな時に、マーシャに会った。
そして、彼女を失くしたのだった。
俺は彼女を失った穴を埋める為に、心に蓋をして、男子の輪に入っていった。
その頃から少年野球に入った。
体を動かすのは好きでは無かったが、動かしている間は寂しさを感じなかった。
そして、始めてすぐの頃俺の隣には智香が戻って来てくれていた。
野球をやってる時はタオルや飲み物を用意してくれたり、学校でも一緒にいる時間が多くなっていた。
中学に入ってから野球部に入った。
智香も野球部でマネージャーとして入部していた。
俺はその頃には、智香を好きだと思っていた。
野球が好きだと思っていた。
一緒にいるのが当たり前だと、思っていた。
「好きです!」
初めて俺は告白された。
それを断ったのだが、それを知った智香が距離を置くようになったのだ。
機嫌が悪かったのはすぐに分かった。
少しずつ疎遠になっていく内にマーシャを失った寂しさを思い出した俺は、智香を失いたくない一心で告白していた。
中学二年夏のことだった。
それから、一年半程経ったある日、新しく、彼氏が、できたと、言われて、別れた。
〜〜
「俺が最初に折笠先輩を好きになったのも、何も知らずにバスケの勝負に挑んで新田さんに迷惑をかけたのも、何も変わらなかった俺のせいなんだ」
校庭のベンチで新田さんは何も言わずにハジメの言葉を聞いてくれていました。
「今日、態度がおかしかったのも、智香に会って動揺して」
「うだうだと、かっこ悪い」
新田さんは低い声で呟く。
「寂しいってガキでしょ」
そうだ、もっと言ってやってください。
「ねえ、柏山くんは悔しくないの」
新田さんが強い眼差しで見てきます。
ハジメは戸惑い、言葉を紡げません。
「悔しくないかって聞いてるの!」
強い言葉にハジメは「はい」と、だけ呟く。
だが、それが新田さんの怒りに油を注いだ。
「は!? 本当に悔しいならその感情を腹から出しなさい!」
「は、はい!」
「それであなたは悔しくないの!!」
「悔しいです!」
その言葉に新田さんは立ち上がり、ハジメの前で腕を組み見下ろします。
そして、目を瞑り息を吸い上げる。
「いい! 客観的視点でアドバイスしてあげる! まず、マーシャ? に謝りに行きなさい! そこで、昔の自分に踏ん切りを付けて、自分磨きをしなさい! そして、最高の男になって、自分を捨てた元カノを後悔させてやりなさい!」
「わ、分かりました!」
新田さんは歩き出します。
方角的に野球部へ行くのでしょう。
ですが、途中で立ち止まり振り向きます。
「後、謝罪の気持ちがあるなら、最高の男になってご飯でも奢って。それで、許してあげるから」
それだけ言うと新田さんは小走りで去っていきました。
さて、ハジメ。
新田さんの言う通りです。
僕もマーシャに謝りたいです。
ですので。
「……」
聞いてますか?
「……」
おーい。
「…師匠」
熱のこもったその呟きに僕は嫌な予感しかしなかった。
「以上で報告は終わります!」
私はやることがあるため、愛しの弟とは今会えない。
でも、彼に何かあった時のために、私は会員に調査をお願いしていた。
「それで、松田さん。(一樹と泥棒猫の)関係はどうかしら?」
「大変良好です! (野獣とイケメンの)間に入れるものは誰一人としていません」
その報告に私は思わず膝をついてしまう。
気を抜けば思わず泣き出してしまいそうだ。
だが、松田さんは顔を赤くして報告を続ける。
「いつも、二人は一緒にいます」
グハッ!
「きっと、キスとかも」
ガッハッ!
「その先だって」
ブフォッ!
「松田!」
「え、は、はい!」
「お願いもうやめて…」
私のヒットポイントはゼロだった。




